8月30日 前編2 (カンカンカンカンカンカン) たまき:あ〜、どんどん高いほうにいく〜〜! 瑠璃果ちゃん、戻りなさーい! 瑠璃果:にゃううう〜〜〜〜〜ん・・・・・ (カンカンカンカンカンカン) たまき:ここって一般立ち入り禁止だよねぇ。 どうしよう、見つかったら怒られるかな。 「不法侵入だ!」とかいって・・・・ また警察沙汰にならないといいけどなぁ。 見つからないといいなぁ・・・ もっとも、これくらいのことで そうそうおまわりさんが呼ばれたりはしないと思うけど〜・・・・ 監理官:民間人が二人も入り込んだ? まったく所轄はなにやってんの。 こっちは爆発物捜索で、それどころじゃないってのに。 監理官:・・・いや、そちらに人員を割く必要はないわ。 すでに爆発物の捜索のために、橋中に100名の人員を配置している。 見つけたら報告するように全員に通達を出しておけばいいでしょう。 優先はあくまで爆発物の発見と爆破阻止。 それがそのまぎれこんだ民間人の身の安全にもつながる理屈。 わかるわね? いい、予告時間の14時まで、あと20分しかないんだから。 急いで。 紅蘭:せやからぁ〜、 さっきおたくの番組で催眠術をかけられたウチの友達の様子が 急におかしくなったんやって!・・・そう!その番組! いや、ここにはいてへんよ? 今、レインボーブリッジの遊歩道に入ってって・・・・ ・・・知ってるわ、いま閉鎖中なんやろ? そこに入ってってもうたんよ。 今ごろ警察に捕まってると思うけど・・・ ちょっとおっさん、人の話し聞いてる? ・・・はぁ??あとでかけなおすってどうゆうこっちゃ! もしもしっ!? もしも〜〜しっ!! 紅蘭:なんやこいつ!一方的に電話切りよった! なんちゅう対応や! ビジョン:このように、今現在レインボーブリッジは警察の手によって 首都高、普通道、ゆりかもめ、遊歩道の全てが通行止めになっております。 また、レインボーブリッジの下を通る船舶の航行も全面禁止され・・・・ 紅蘭:イタズラ電話一本でおおごとやなぁ。 現場の警官も大変やし、 橋が封鎖されたことで迷惑かけられてる人がどれだけいるか・・・ ひどいことするよなぁ。 ビジョン:えー、スクープです。 視聴者のかたからの情報にもとづき警察に問い合わせましたところ、 爆破予告があり警察によって現在封鎖中のレインボーブリッジに 一般市民が2人、無断で入り込んだことが判明しました。 警察によると、検問を強引に突破してレインボーブリッジに入り込み、 そのあと行方をくらましてしまったそうです。 この2人はいまだ、封鎖中のレインボーブリッジのどこかにいる可能性が 高いとのことで、警察は現在この2人の行方を捜索中です。 また、今回の爆弾騒ぎとこの2人の関連は不明、とのことです。 紅蘭:それってたまき達のこと・・・・・? ・・・・あーーーっ! あのテレビ局のおっさん、 ウチの苦情をスクープにしてニュースに流しよった! 「視聴者からの情報」やと?いいかげんにせぇよ! たまき:まちなさ〜〜〜〜い、はあっ、はあっ・・・ うう、高い・・・目がまわりそう・・・ この通路、走るとゆれるしぃ。 瑠璃果ちゃん、どこまで行くんだよう。 瑠璃果:にゃん!(すたっ) たまき:あっ、降りた。 ラッキー、そっちは袋のネズミちゃんだよ。 瑠璃果:はあ、はあ、はあ、にゃ? (キョロキョロ) たまき:ふっふっふ。瑠璃果ちゃん、も〜う逃げられないよ。 おとなしく私と一緒に帰ろう。 瑠璃果:にゃあん・・・・ たまき:さあ、いい子だからこっちにおいで。 瑠璃果:にゃうううん・・・(キョロキョロ) たまき:・・・とはいえ、 催眠術にかかった瑠璃果ちゃんを、 ここからどうやってつれて帰ればいいんだろう。 だいぶ登ってきたし、下まで3〜40mくらいかしら・・・ 落っこちたら死んじゃうかなぁ。 瑠璃果:にゃっ!(さささささ) たまき:・・・あれ? 瑠璃果ちゃんどこに行ったの? ここは行き止まりで、もうどこにも行けるはずはないのに・・・・ たまき:うそ!ちょっと! そんなとこ行くか〜〜!?(ガーン!) 瑠璃果:ニャン!ニャン! たまき:うう〜、キビシいっす〜。 追いかけるしかない・・・のね。 たまき:カカトしか!カカトしか乗っからないよう! ちょっとでも前によろけたら・・・、あうう〜〜〜! 監理官:爆発物の捜索範囲を通常は人が入り込めないところまで広げなさい。 それと民間、報道のヘリは500m以上近づけないこと、 水上バスや貨物船など、一般の船舶の航行禁止、以上を徹底して。 いや、これがイタズラの可能性は低いわ。必ず有ると思って。 上からそう言ってきているの。 詳しいことは聞かされていないけど、確信しているようだったわ。 ・・・それと、例の民間人はまだ見つからないの? そう、わかった。 たまき:・・・はひぃ、はひい、 あとちょっと・・・う、う、う、 でももう、だいぶ時間かかっちゃったし、 瑠璃果ちゃんには追いつけないだろうなぁ。 瑠璃果:にゃっ。(ヒョコッ) (たたたたたたた・・・・) たまき:あれ?まだここにいたの? 私を引き離せたはずなのに、何で逃げなかったんだろう・・・ もしかして、追いかけっこかなにかのつもり〜? ・・・とにかく追いかけなくっちゃ。 瑠璃果ちゃん待って〜〜! どこまで行くのよう〜〜〜! F班1:おい、あれなんだ? F班2:機材じゃないな。 F班1:至急報、こちらF班! 不審物発見。不審物発見。 場所はF地区3層目、橋の下側にあるメンテナンス用ゴンドラです。 不審物は直径50センチほどの円形。厚みもありかなり大きいものです。 スイッチが入っているようで、小さなランプが点灯しているのが見えます。 監理官:やはりイタズラではなかったか・・・。 わかった。すぐにそこにEOD(爆発物処理隊)を向かわせる。 どんなセンサーが仕掛けられているかわからないから、 その不審物にはぜったいに近寄ったりしないように。 F班1:了解。 監理官:よし。F班なら2・3人いるわね。 一人は現場に残り、もう一人は上に出てEODの到着を待ち、 現場に案内。 EODは重装備だから、出来るだけ通りやすいルートでね。 F班1:了解しました。 監理官:捜索各班へ。 爆発物はこれだけではない可能性もある。 残り2機のメンテナスゴンドラを特に重点的に捜索すること。 予告時間まであと16分。退避はその8分前に行う。 全員、それまで引き続き不審物の捜索にあたりなさい。 F班3:監理官、応答願います。 監理官:どうした、また不審物が見つかった? F班3:いえ、さきほど報告のあった遊歩道に入り込んだ民間人、 女性2名を発見しました。 監理官:保護したの? F班3:いいえ、まだです。 監理官:じゃあ早くしなさい! 今はそれどころじゃないの。 F班3:しかし・・・・・・とてもじゃないですが保護は無理です。 D地区あたりの南側の側面。いまメンテナンス用ゴンドラのレールの上です。 どうやってこんなところまできたのか・・・ 監理官:メンテナンス用ゴンドラのレールの上? それ、一体どういう意味・・・・ F班3:監理官のいらっしゃる側塔からも見えるはずです。 F地区、主塔側を見てください。 監理官:・・・・・・・・・・・な・・・・・・ F班3:ご覧になりましたか? 監理官:・・・・・なにやってんのよ、こいつら〜!? たまき:瑠璃果ちゃん、待ってぇ〜〜。 はあ、はあ、さっきのでっぱりを進むよりはましだけど、 落ちたら助からないのは変わらないよう・・・ っていうか、さっきよりももっと高くなってるし・・・・ 目がまわりそう。 瑠璃果:にゃうう〜〜ん、にゃうう〜〜んん・・・・ F班3:こら!そこの二人ぃ、そんなところでなにをやっている! 危険だからすぐに引き返しなさーい! たまき:あっ、おまわりさんだ。 どうしよう、やっぱりまた警察沙汰に・・・ 瑠璃果ちゃん、待ちなさい!もう! 瑠璃果:にゃうん!(さささささ・・・) たまき:あっ、こらぁ! F班3:引き返しなさい! こっちに来るなって。 来たら危ないんだ! このすぐ下には・・・・ たまき:よく見れば上の道路中、すごい数のおまわりさんとパトカーだらけ・・・ どうしよう、私たち、ものすごい大事件を起こしちゃってるみたいだよう。 ねぇ瑠璃果ちゃん、もう帰ろうよ。 おまわりさんに怒られるよ? 瑠璃果:にゃうん、にゃうん・・・ ビジョン:こちら晴海埠頭です。 封鎖中のレインボーブリッジのはいりこんだ女性二人をカメラに捕らえました。 え〜、・・・見えますでしょうか。 (ズーム) ビジョン:ご覧ください。2人のいる場所は遊歩道の外の鉄骨の上です。 一歩足を踏みはずせば56m下の海面に叩きつけられる、非常に危険な場所です。 この2人がなぜこんなところにいるのか、またなにをしてるのか、 まったく不明です。 警察は説得を試みているようです。 紅蘭:あれは・・・・たまきぃ!? あんな高いところでなにしてんねや!? まさか瑠璃ちゃんを追いかけて・・・・? ビジョン:え〜、さらにただ今警察より発表がありました。 レインボーブリッジ内に不審物を発見したとのことです。 これよりこの不審物の調査・処理にあたるそうです。 紅蘭:・・・爆破予告はイタズラやなかったんか? たまき・・・。瑠璃ちゃん・・・。 少女:もし?もし?(ぽんぽん) 紅蘭:なんやっ!? ・・・・あ、ごめん、あんたさっきの(自称)姫さんやん。 少女:また会うたの。 のう、あそこの大きな画面に映っているのは、 さきほど口付けを交わしあっていた、そちの友達であろう? あのようなところでなにをしておるのじゃ? 紅蘭:・・・前を行くメガネの子は、いま正気やないねん。 きっと追いかけっこでもしているつもりなんやろう・・・ 少女:ほほう、そうなのか。それであのような高いところに。 まるきり心が猫になってしまったわけじゃのう。 なんともあっぱれな魔法じゃ。 昨夜のビッグサイトとやらの爆発の魔法も見事なものであったが、 この魔法もなかなかのものじゃのう♪ 都会に来てみた甲斐があったというものじゃ。 紅蘭:ちょいまち。 ・・・あれは「魔法」やなくて「催眠術」いうんよ。 純粋に医学的かつ科学的な現象や。 それに昨日の夜のビッグサイトの爆発も、 このレインボーブリッジに爆弾仕掛けたのも、「悪質な犯罪」や。 もっと全然、魔法とちゃう。 少女:・・・そうか、どちらも違うのか。 紅蘭:はぁぁ・・・、ウチの一番の友達があんな危険なところに・・・。 うちがあのとき瑠璃ちゃんを驚かせたばっかりにこんなことになってもうて。 あの二人になにかあったらどないしよう。 ああもう!こんなときウチなにもできひん!! ・・・歯がゆいなぁ。 少女:なにやら、深刻なようじゃのう。 紅蘭:なぁ、もうあっちに行っててくれへん? ウチ、あんたの相手してる精神的余裕、ないねん。 少女:これ、そのようにわらわを邪険にするものではない。 ・・・力になれるかも知れんぞ? 紅蘭:姫さんが? EOD1:こちら爆発物処理班、現着しました。 え〜、初見ですが不審物はやはり爆発物の可能性が高いです。 監理官:そうか。 EOD1:昨晩のビッグサイトのと同規模の爆発の場合だとすると、 まあ、この橋が落ちる、ということはないでしょうが、 上の一般道の路面に穴があくかもしれません。 その上の首都高には影響はないでしょう。 しかし、多分このメンテナンスゴンドラは、 爆発の衝撃で橋からはずれて下に落ちます。 監理官:わかった。手配する。 そちらも慎重にやって。 予告時間の14時までまであと9分。頼んだわよ。 EOD1:了解。 監理官:これからF地区で爆発物の処理を行う。 全員F地区から大至急退避しろ。 爆発した場合、破片が下に落下するので付近の巡視艇は一時退避。 消防庁にも救難艇を退避させるよう通達。 それ以外の地区では引き続き捜索を頼む。 予定ではもう引き上げ時間だが、あと2分間続けてくれ。 その後すみやかに退避すること。以上。 F班1:監理官、F地区です。ここは私ともう1人残ります。 例の民間人がまだ説得に応じず、 細いレールの上をこちらに向かっているんです。 監理官:説得に応じない? なぜそいつらは爆弾のあるほうにむかうんだ? どういうこと?・・・どうもおかしいな。 ・・・・・・・・・よし、 私もそちらに行く。 F班1:はっ。 EOD1:嫌な所に仕掛けてくれたもんだ。ここじゃロボットアームもつかえないな。 この対爆防護服をつけていれば目の前で爆弾が爆発しても助かる見込みはあるが、 爆発でゴンドラが外れて落ちればもう助からんだろうし、 もしそこで助かっても、この防護服は40Kgもある。 溺れて結局死ぬだろうな。 EOD2:・・・そうならないことを祈るだけですね。 いつもどおり液体窒素で冷却して起爆用の電池を止めるのが有効でしょう。 (通常、−10℃以下にして電池を無力化すれば信管が作動せず、爆発しない) EOD1:嫌な場所といえば、ここじゃあ床が網になってて液体窒素が漏れて使えないな。 そこの、床が鉄板のところに発泡スチロールの囲いを作っておいて、 そこまで持っていくか。 EOD2:えっ?いま何も処理しないまま動かすんですか? 危ないですよ! 振動感知式のセンサーで起爆する仕掛けがあったら、 持ち上げたとたんに「ドカン!」・・・ですよ? しばらくのあいだ、上から液体窒素を注いで 冷却してから運んだほうがいいと思いますけど。 EOD1:・・・あのな、橋ってのは車が通ればそれだけでかなり揺れるものなんだよ。 レインボーブリッジのような吊橋なら揺れはなおさらだ。 振動感知式の起爆装置は、ここに仕掛ける爆弾には考えられない。 ついでに言うと騒音もある程度大きいから音響センサーも使えないな。 したがってこれについているのは時限式の起爆装置だけ、と見ていいだろう。 普通に扱っても大丈夫だよ。 爆破予告時間まであと8分しかない。急ごう。 監理官:あの民間人二人はどうだ? F班1:ああ、監理官。 あのとおり、もうすぐそこまで来てしまいました。 そろそろ爆発物の処理も始まるころですし、 早く戻るように行っているんですが、 聞く耳もちませんね。 監理官:巡査、 あの二人は「保護」ではなく「逮捕」することにするわ。 容疑は「公務執行妨害の現行犯」でいいでしょう。 F班1:逮捕、ですか? 監理官:あの二人が我々の警備をかいくぐり、 説得にも応じることなく、 ひたすらに爆弾が仕掛けられたここにむかっているのはなぜ? 偶然だと思う? F班2:・・・あの女の子達が、 この事件と関わりがあると? 監理官:昨晩のビッグサイト爆破から始まったこの事件は、 現段階ではテロの手段が「爆破」とわかってるだけで、 その目的も規模もまだ何もわかっていないの。 犯人像は出来るだけ柔軟に捉えておいたほうがいいわ。 そしてこの状況で不審な行動をとる彼女らは、この事件の立派な重要参考人たりうる。 爆破の犯人ではないにしても、なにかを知っている可能性はあるわ。 F班1:たしかに。 監理官:見たところ武器は持っていないようだけど、 身柄確保のさいは、いちおう用心して。 万が一のときは遠慮する必要ないわよ。 たまき:瑠璃果ちゃん・・・・あとちょっとで手が届く・・・・ あとちょっと・・・ 瑠璃果:にゃあ・・・にゃあ・・・・ たまき:よおし、つっかまえ・・・・ 瑠璃果:ふにゃっ!? ふぎゃあっ! (たたたたたたたた) たまき:うわぁっ!こんなところを走っちゃだめぇ! ちょっと、落ちるってば! 瑠璃果:にゃにゃにゃにゃにゃ〜〜〜〜!! 監理官:は、走ってきた? あんな細いところを!嘘でしょ、ちょっと! F班1:ああっ、あぶない! 落ちる! F班2:足元をよく見て! 気を付けろって!! 瑠璃果:にゃにゃにゃにゃにゃ〜〜〜〜!! 監理官:き、来たわよ! とまりなさい!公務執行妨害で逮捕・・・・ 瑠璃果:うにゃああああっ!(ブゥゥゥゥゥゥン) 監理官:あたしを踏み台にしたぁ〜?(ゴン) F班1:あ痛てぇ!(ガン) F班2:うぐぅ!(ゴン) 瑠璃果:にゃあっ!(ばぁっ・・・・すたっ) (たたたたたたたた・・・) 監理官:・・・・・・・・・・・うう たまき:・・・よいしょっと。 警察の皆さんすみません、大丈夫ですか? あの、すぐに捕まえますから。 いつもはこんなに悪い子じゃないんですけど・・・。 もう、瑠璃果ちゃあ〜〜ん!(たたたたたたたた) 監理官:・・・はっ。 今いったいなにが・・・? F班2:下に逃げられました。 監理官:爆弾のほうにか? まずい、いま爆発物の処理の最中のはず。 追うわよ! F班1/2:はいっ! ■■■ 後日更新予定の「8月30日の日記・後編」に続きます ■■■
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