5月5日(水)晴れ 今日でゴールデンウイークもおわりです。 紅蘭は、空港の混雑を避けるために、3日から10日までのお休みを取って、 実家に帰省しています。 そんなわけで、まだしばらくは一人暮らしです。 初めてなんですよね、一人暮らしって。・・・実は。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 たまき:ん〜、眠い。 春眠暁を覚えず、諸所に低調を利く?・・・だっけ? 昔の人はうまいことを言うもんだよね〜。 ホント、なんだか体がダルイよ。 がんばれ交感神経〜。 ・・・などと、ここ10日で独り言がやたらと多くなっている私です。 朝起きて、「おはよう」や「おやすみ」を言う相手がいないことに気付いたときや、 紅蘭の為に何か作っておく必要もなく、自分のごはんだけ作って一人で食べてるとき、 それに、面白いことを思い付いても聞いてもらう相手もいないとき、 ふと寂しいような、物足りないような、そんな気分になります。 すぐに一人の生活に慣れるかと思ったんですが、なかなかそうはいかないようです。 朝食の後片付けもあっという間に終わってしまい、静まりかえった家の中で、 特にすることがなくなった私は、洗ったばかりのコップに水を入れて、 その中に手洗い用の石鹸を削って溶かし込み、ストローを持って、 パジャマ姿のままテラスに出ました。 ・・・・・・シャボン玉を吹くのです♪ 今日も良い天気。 穏やかな風が北から吹いてきて、私の髪の毛と、近くに生えているヤシの葉を 揺らしていきます。 もう少し気温が高くなると、近くの海水浴場に人が集まって来るから、 この辺もちょっとはにぎやかになるんでしょうけど、 いまはまだサーファー達が来るだけですから、静かなものです。 たまき:シャボン玉なんて久しぶりだなぁ。(ちょぽちょぽ) ・・・って言うか、子供のとき以来かな。 (ふーっ) ああ、まだ液が薄いみたい・・・。底に沈んでる石鹸を溶かそう。(ちょぽちょぽ) それにしても、いくら暇だからって、なにやってんだか。 (ふー――――っ) あっ、できたできた♪ たまき:・・・うわぁ、キレイ。 薄い膜の上を虹色の光りが彩り、その瞬間瞬間に違った模様を見せてくれます。 シャボン玉は壊れることなく、風に乗ってふわふわとどこまでも漂って行きました。 思えば、こんな開けたところでシャボン玉を吹いたことはなかったなぁ。 たまき:(ふー――――っ) ( ⌒3⌒)==o o○ ○ o ○ o ○ (ふー――――っ)( ⌒3⌒)== o○ ○ o ○ o (ふー――――っ) ( ⌒3⌒)== ○ ○ o o oo ○ (ふー――――っ)( ⌒3⌒)==o○ o ○ oo○ ○ ○ (ふー――――っ) ( ⌒3⌒)== o o○ ○ o ○ o ○ 太陽の光が一個一個のシャボン玉に反射して、キラキラ輝きながら南の空を飾ります。 何度かするうちに吹くコツが分かってきて、 ひと吹きでたくさんのシャボン玉を出せるようになってきました。 だんだん遠ざかっていくシャボン玉たちに、「ふーーーっ」っと小粒な後続を補充します。 水中から、水面に向かって昇っていく気泡を見ているみたい。 そう言えば、もうすぐウェットスーツで潜れる時期なんだなぁ。 たまき:うふふ♪ 子供っぽいけど、楽し。 こんな事しているところを紅蘭に見られたら、 「うちのことを子供っぽい言うくせに、たまきかて同じやないか〜。」 って文句言われそうだね。 (ふー――――っ)( ⌒3⌒)==ooooo○ ○ oo○ ○ ヒミツでちゅ〜。ヒミチュ〜♪ えりか:ああ〜、シャボン玉だぁ〜。 たまき:ひょっ!? えりか:せんぱぁ〜い、おっはようございま〜す!! たまき:あっ、ああっ!?・・・え、え、えりかちゃん、いらっしゃい。 どうしたの? えりか:紅蘭がいないから寂しいんじゃないかと思って、遊びに来たんですよお。 あと、こないだお借りしたCDも持ってきましたし。 たまき:へえ、ありがとう。 でも、寂しくなんかないよん。 えりか:・・・それにしても、先輩ったらそんな格好でテラスに出て〜。 御近所から丸見えですぞ〜。 たまき:いいじゃん、御近所って言ったって、この辺に家なんかないんだしさ。 えりか:でも、その分見通しがいいから、 遠くからでも先輩のパジャマ姿が見放題です〜。 たまき:それは、まあそうだけど、そんな人いないってば。 ・・・まあ上がんなよ。今、玄関の鍵、開けるから。 えりか:は〜い。 えりか:このあいだは大変でしたね。 たまき:このあいだ? えりか:怪盗Xですよ〜。大騒ぎで。 たまき:ああ、うん。そうか、あれから、もうひと月くらいたつんだね。 まあ、・・・あれは終わったことだから。 今日はテラスがキモチイイから、こっちにテーブル出そうね。 えりか:そうですね。ゴトゴト行きましょう。 ・・・よいしょ。 あ、このイス軽いですね。 たまき:籐製の椅子だからね。 そのへんに置いといて。いまティーセットを持ってくるから。 たまき:それ、新しく見つけたお茶なの。どうぞ。 えりか:先輩、先輩! たまき:え、なあに? えりか:先輩、シャボン玉吹いてたでしょ〜? ふわふわ飛んでくのが見えましたよん。 たまき:・・・えへへ。まあ、私だってそんなこともするのさ。 えりか:オトナな先輩が、あんなコドモな事をやって遊んでるなんて、 なかなか意外なところを見てしまったような気がしますね。 たまき:私が大人?・・・そんなことないと思うけどなぁ。 ほら、クマとかネコとかハネジローのヌイグルミだってあるし、 このパジャマだって、このとおりクマクマしてるし。 えりか:ん〜、えりかの言う「オトナ」って、そういうのとは関係ないんですよね・・・。 うまく言えないけど、オチツキ加減とか、マジメさ加減とか、 ・・・クールさ加減とか。 たまき:そんなことないって〜。 私が大人っぽいなんて思っているのは、やっぱり、えりかちゃんの買い被りだよ。 私はそうは思わないし、友達からもそんなこと言われた事ないしね、 ・・・寂しい事に。 えりか:ん〜、そうかなぁ。 ・・・変だなぁ。 たまき:変だね。 なんでだろ。 私、えりかちゃんの前でだけ先輩らしく振る舞ってた覚えもないし。 どっちかと言うと、・・・ほとんど同級生みたいにして遊んでたもんね。 えりか:そうですね。 先輩って、まえからあんまり先輩っぽくなくて。運動部系なのに。 たまき:私、ああいうノリって、しょうに合わない方だから・・・。 えりか:先輩が3年のときのクリスマスの前に、 他校の子達とえりか達で一緒にカラオケ行ったこと、あったじゃないですか。 あのとき、 「寺月って子、マジえりかの先輩なの?全然らしくねえじゃん。・・・・・・ダブリ?」 って男の子に聞かれましたからね。 たまき:うそ!?あの時そんなことあったの? ・・・そっかー。 えりか:うまくゴマカしておきましたから。 たまき:ちゃんと「違う」って言ってよ。(笑) えりか:でも、そういうフレンドリーな先輩と一緒に遊んでいながら、 えりかは、いっつも「先輩って大人っぽいなぁ」って思ってたんです。 一緒に騒いでいても、やっぱり言う事ややる事が違うし、面倒見てくれるし。 お姉さんだなぁ、って思ってました。 たまき:そんなものかね。 でもまあ、「お姉さん」っていうのは実感があるかも。 実を言うと、えりかちゃんのことを妹みたいだって思ってたし。 えりか:そうなんですか? たまき:そうだよ〜。 私は一人っ子だから、ホントの妹ってどんな感じかわかんないんだけど、 ・・・妹がいたら、きっとこんな感じかなって思ってたよ。 えりか:そうなのか〜。・・・でへへ。 たまき:なに照れてんだよ〜!もぉ〜。 えりか:だって、・・・グフフゥ〜。 たまき:なに?その笑い声。 そう言えば、えりかちゃんには、弟がいたよね。 真玄(マクロ)君だっけ。 えりか:はい。今、小学2年生です。もう可愛くって、えりか溺愛です〜。 たまき:そっか、前に会ったときはまだ「ねんちょうさん」だったね。 えりか:超男前に育ってますよう〜。将来はきっと、幾人ものオンナを泣かせるのでせう。 ・・・でも、それまでは、マクロ君はえりかのモノです。(笑) あっ、そうだ〜。 えりかもシャボン玉やりたいです〜。 たまき:えっ? 液の入ったコップなら、そこにあるけど。 えりか:ん?ああ、この白っぽいのですか? これって、石鹸を溶かしたやつです? たまき:・・・うん。 えりか:ドムムムムゥ。(ニヤリ) たまき:な、なによう。それ笑い声? えりか:「物知りえりか」が先輩にイイこと教えてさしあげます。 シャボン玉には石鹸よりも台所用洗剤の方が良くて、 洗剤の中でも、普通のより濃縮タイプの方が良いんですよう。 たまき:へえ、そうなん? でも洗剤には「シャボン玉遊びにはお使いにならないでください」って。 えりか:飲まなければ大丈夫ですよ〜。 お洗濯用合成のりを混ぜるとさらに良いんです。 キラメクそなた誕生でおじゃるよ。 たまき:ああ、うち合成のりは使わないんだ。 でも、洗剤の方はあるから、それで作ろう。 えりか:水と洗剤の配合比も、えりかにお任せあ〜れ〜。 たまき:・・・それにしても、えりかちゃん詳しいね。 もしかして、世間で流行ってるとか? えりか:そうじゃないです。 去年の夏休みに、うちのマクロ君が「シャボン玉の研究」ってのをやりまして えりかがそれを手伝ったんで、なんとなく覚えてたんですよ。 (ちょぽちょぽ)・・・っと、はい完成。 この粘り具合でおじゃるよ。 シャボーンカッター! (ふぅ〜〜〜〜〜)( >3<)== ooo o○ ○ o ○o○ たまき:あ、えりかちゃん上手〜。 えりか:お手伝いで、さんざん試し吹きしましたから。(ちょぽちょぽ) ぶえっ、ぺぺぺぺっ うええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ〜、にっぎゃぁぁい(×△×;) 口一杯に広がる、洗剤フレーバー。・・・ぺぺぺっ。 たまき:そのうちやるんじゃないかとは思っていたけど、大丈夫? 飲んじゃったなら、うがいして、たくさん水を飲んだ方が・・・。 えりか:ベロに少し付いただけです。 うう〜、しまったぁ。やんごとなき苦さでおじゃるよ〜。 ストローをくわえると、ついつい吸い込んじゃって。 たまき:液につけるときは、ストローは口から放さなきゃ。 わたしにもやらせて。 (ふー――――っ)( ⌒3⌒)==ooo○ ○ o ○o○ oo○○ oo○ さっきの液よりも、簡単にいっぱい出るね。 えりか:・・・このお盆、濡らしちゃっていいですか? たまき:え?・・・構わないけど。 えりか:じゃあ、お盆にシャボン液を注ぎーの、 えりかのネックレスを広げて浸しーの(しゃびしゃび) ・・・クララ白書は、しーの。 たまき:はい? えりか:いえ、なんでもないです。(しゃびしゃび) このネックレスで、特大のシャボン玉を作りますよう〜。 せーのー、ディヤッ!(・・・ぶわわぁ〜〜〜ん) たまき:おお〜、すごーい。 おっきいねぇ〜♪ えりか:うまくすれば、あの中に、更に小さなシャボン玉を入れられますよ。 ここは風があるから難しいですけど。 たまき:いいじゃん。このまま飛ばしとこう。 割れちゃったら、なんだか可哀相だし。 えりか:・・・かわいそう? たまき:ああ、そっか。 なんでも擬人化しちゃう癖があるね、私って。 でも、シャボン玉が消えたときって、寂しくない? えりか:ちょっとわかりますよ、先輩。そうかー。 あの子、・・・あのまま永遠に消えないといいですねぇ。 たまき:それはそれで、怖い気がするけど・・・。(笑) 私はストローでやるよ。 (ふー――――っ)( ⌒3⌒)==o o○ooo○ oo o ○ ooo ○○ んー、カワイイ、カワイイ。 ねえ、えりかちゃん。大きなのもいいけど、こっちの方がキレイだし、楽しくない? えりか:せーのー、デュワッ(・・・ぼよよぉ〜〜〜ん) そうですか?えりかとしては、超弩級シャボン玉の方が楽しいですけど〜。 ちなみに奴の名前は「コンスコンちゃん」にします。 たっしゃでなー! ・・・・・・あっ、消えたっ。(笑) じゃあ、次は「マクベちゃん」 ・・・・・・ああっ!?そっこー消えた。(笑) たまき:確かに楽しそう。 まあ、人それぞれだね。 (ふー――っ)( ⌒3⌒)==oo○ oo o ○ ○○ ・・・・・・ん?なあに? えりか:いやぁ〜・・・、 同じシャボン玉でも、えりかと先輩だと楽しみ方に違いがあるっていうか、 先輩がやってるの姿は、やっぱりどこか大人っぽいです。 具体的には、息を吹き込むときの顔がイロッポイですよ。 たまき:や、やだな、そう? えりか:そうですよぅ。ヒゲゲゲッ(笑) たまき:・・・なんか、わかった。 えりか:ふぇ? たまき:えりかちゃんて、私の事を「大人っぽい」ってメガネで見てるから、 私がなにをやっても、それを見て「大人っぽい」って解釈しちゃうんだよ〜。 きっとそう! たとえば、私が何にも考えずにボケーっと空を眺めているのを見ても、 えりかちゃんは、「先輩は何か重要な事を考えているんだ」と思ったりするの。 えりか:・・・そうかなぁ。 たまき:そうだよ。 今だってハタから見れば、2人とも同じ、シャボン玉遊びしているコドモだよ〜。 私とえりかちゃんは、たいして変らないと思うな。 えりか:・・・それでも、 先輩はやっぱり先輩だから、えりかのお姉さんのほうがいいなぁ。 先輩ってセンスいいから、CD借りればいいアーティストばっかりで、 えりかもすぐにハマっちゃうし。 お勧めのビデオなんかも、えりかに合ってて極楽だし。 ダイビングの趣味だって、カッコイイし。 ・・・先輩は同じじゃないですよ、えりかとは。 たまき:(もしかして、なんかの目標にされてるのかな・・・。) ・・・わかった、わかった。 あとで一緒に、えりかちゃんが持ってきたあのCD、聴こう。 同じ曲が好きだといいね。 えりか:同じですよ、きっと。 たまき:そろそろ中に入ろうか。 えりか:はいっ。 じゃあ、最後にもう一回。(しゃびしゃび) 「イセリナちゃん」ゴー!(笑) ああっ、いきなり失敗・・・。 電話:(ピロロロロロ、ピロロロロロロ) たまき:あ、電話だ。ちょっとごめんね。 (ピロロロ・・・)はい、寺月と李です。 レナ:もしもし、たまきちゃん? これからそっちに行ってもいいかな。あと10分で着く所にいるんだけど。 たまき:ええと〜、今お客さんが来てるんですけど。 何かあったんですか? レナ:・・・こんなこと聞くのは失礼かもしれないけど、そのお客さん、 間違いなく本物のお知り合いの方? 様子がおかしいってことは、ない? たまき:・・・高校の頃の後輩で、昔の話しをしたりしましたから間違いないですけど、 あの、だって・・・どういうことですか? レナ:まだ報道されてないんだけど、・・・拘置所から怪盗Xがいなくなったらしいの。 たまき:ええっ!? レナ:・・・いつのまにか姿を消したみたい。 まだ拘置所内に隠れている可能性もあるけど、 警察は、脱走した可能性が高いとして、各所に検問を設置して対処するようだよ。 たまき:・・・・・・。 レナ:たまきちゃん? たまき:は、はい。・・・わかりました。 でも、怪盗Xはもう、うちには来ないですよ・・・ね。 レナ:警察はそう見て、逃走に使われそうな経路を押さえるようだけど、 わたしは、怪盗Xはまたそこに来るかもしれないと思うの。 だから、もしもの時に私が何か出来るんじゃないかと思って。 とにかく何があるかわからないから、 悪いんだけど、そのお客さんには帰ってもらって欲しいんだけど。 たまき:わかりました。そうします。 じゃあ、お待ちしてますから。 レナ:取り越し苦労だといいんだけどね。 じゃ、あとで。 たまき:はい。 (・・・ピ)・・・はぁ〜。 えりか:どうしたんです、先輩。 顔色悪いですよ。 たまき:ん〜、ちょっとね。 ・・・申し訳ないんだけど、えりかちゃん、今日はもう帰ってくれる? えりか:ええ〜? たまき:ごめんね。この埋め合わせは必ずするから。 えりか:埋め合わせだなんて、そんな。 先輩が帰って欲しいって言うなら、えりかは気持ちよく帰ります〜。 たまき:ごめん。 えりか:は〜い。じゃあ先輩、また今度。 たまき:うん。 と言うわけで、もうすぐレナさんが到着します。 えりかちゃんには悪い事をしちゃったかなぁ。 でもこんな場合だから、しょうがないですよね。 それにしても、あの怪盗Xが脱走するだなんて・・・。 テレビをつけたら、ちょうどニュース速報で「怪盗X脱獄」と言うテロップが流れました。 なんだか怖いです。 こんなときに紅蘭がいてくれたらいいのに。 ・・・早くレナさん来ないかな。 チャイム:(ピンポーン) たまき:あっ♪レナさんが来たみたい。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 怪盗Xが脱走した言うニュースを向こうで聞いて、 急遽予定を繰り上げてうちが実家から帰ってきたとき、 すでに、この家には誰も居てませんでした。 寒いくらいに静かな家の中。 ここまで書かれたたまきの日記が、ぽつんとベッドの上に置きっぱなしになってて・・・。 一体、たまきに何があったんやろか。 5月8日 李紅蘭 |