4月15日(木)曇り
怪盗X事件からもう1週間。早いですね。
今日はレナさんがわざわざうちまで来てくれて、
あの事件のことをいろいろ聞けました。

ところで、9日の日記の最後のトコ
「それでは引き続き、解決編をお楽しみください。
 ・・・寺月たまきでした。」って、
古畑任三郎のマネだったんですけど・・・、わかりました?(笑)

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 レナ:お待たせしちゃったね。
たまき:事件についてあんまりにも何もわからないから、終わった実感がないんです。
    早く教えてくださいよう。

 紅蘭:そもそも、「事件」になっていたのかすら分からんわ・・・。
    何も盗られてへんしなぁ。

 レナ:はい、それではご報告します!
 紅蘭:
たまき:
(ぱちぱちぱちぱち)




 レナ:はい、御静粛に〜。
    怪盗X・・・面倒だからXにするね。
    Xが、与田さんのお屋敷とこの家に2通、予告状を出したのは覚えているよね。
    結局、与田さんの方がオトリで、紅蘭のコレクションが本当の狙いだったみたい。

 紅蘭:一体何が狙いやったん?
    盗れそうなもんなら、なんでも良かったんちゃうか?

 レナ:・・・2人には言いにくいんだけどね、
    実はまだそのへんのことは、わかっていならしいの。
    警察は、ここでの犯行よりも、前に犯した犯罪の立件に力を入れているのよ。

 紅蘭:な、なんでやねん。
 レナ:さっき紅蘭が言った通り、何も盗られていないでしょう。
    Xは、ここでは住居不法侵入をやっただけなの。
    今現在の抑留の理由も、「不法侵入の現行犯逮捕」という形なのよ。
    だから、以前に犯した罪、巨額の美術品の窃盗という線で起訴しないと、
    あいつはすぐに出てきちゃうの。

たまき:なるほどねぇ。

 紅蘭:まあ捕まってしまえば、「何を盗るつもりだったか」なんて、
    森田はん達、警察にとってはどうでもいいことやしな。
    ・・・うちかて、それ知ったところで、どうするわけでもないんやけど。

たまき:それはそうだけど、なんかつまんないね。
    やっぱり気になるしなぁ。


 レナ:もしかしたら、本当になんでもよかったのかも。
    いつも予告が曖昧なのは、そのためじゃないかな。
    要するにXは愉快犯なのよ。盗む事自体も目的なの。
    予告状なんて出すのも、騒がれて楽しいからなのね。

 紅蘭:う〜ん、なんか、納得いかんなぁ。
 レナ:もっとも、報道管制なんてされて、彼女は騒がれ足りなかったようだけど。
    これは私の考えだけど、与田家に予告状を送った理由の一つは、
    あの家を巻き込んで、確実に報道管制を解いてしまおうとしたんじゃないかなぁ。




 レナ:・・・与田家を巻き込む作戦は効果があったんじゃないかなぁ。
    警察と与田家では責任がどうのと、あのあともゴタゴタしていたらしいよ。
    別に何も盗られてないのにね。

 紅蘭:ジュディはんの家って、ただの金持ちとちゃうんか?
 レナ:森田捜査官に聞いたら、
    「この国の根っこの部分に繋がる、そういうポジションの家系」だってさ。
    TPCの設立に絡んでいたり、私達が使う飛行機や車両を開発したり、
    色々やっているとも聞いたよ。

たまき:・・・へえぇ。知らなかったね。
 紅蘭:せやなぁ。

 レナ:さてと。
    いまのところXの自供に付いては、警察から正式な発表がないの。
    これからお話するのは、森田捜査官が私に聞かせてくれたことと、
    私達TPCが独自に調べた、この事件の背景とその手口よ。

    今回のことで物事をややこしくしていたのは、警察による厳重な報道管制と、
    警察が我々TPCに対して、かなりの秘密主義を取っていたことなの。
    アメリカなんかではさまざまな司法機関が、
    それぞれの管轄内で捜査をするけれど、
    日本ではほとんどの場合、警察だけでしょ。
    そこに新進の巨大組織、世界平和連合が入り込んできたわけ。
    急に現れた同業者をライバル視して、組織的に自閉症になったのね。
    そして、Xの情報を警察の外に出さないように取り決めをした結果、
    警察内部での情報のやり取りにも不具合が出て、その隙をXに衝かれたの。

    警察は、もうひとつの予告状の先が与田邸だと言う事を、
    TPCにもマスコミにも隠すことにしていたの。
    そのため緊急時以外には、お互いに連絡を取り合わないことにしていたから、
    2つの現場それぞれに、誰がいて誰がいないかが掴めなくなってたのね。

    ・・・あの予告の日。
    菅井捜査官はもともとA班と一緒に行動する予定だったらしいの。
    警察も、何だかんだ言って与田邸が本命だと思っていたみたい。
    そして本物の菅井捜査官がA班とともに与田邸に行ったのを知ったXは、
    菅井捜査官に変装して「予定を変えた」と言って、B班とここに来たの。
    ・・・2ヵ所同時にいたのは、私じゃなくて菅井捜査官だったのよ。



    さて、予告時間の30分程前、菅井捜査官に変装したXは、
    「TPCのレナが与田邸に、A班とともにいると連絡があった」
    と森田捜査官に偽情報を流して、私を拘束させたの。
    そして同時に、物陰で警備していた機動隊に帰還命令を出した。
    これで、あなたたちの近くにいる邪魔な私の行動を封じるのと同時に、
    あとで私にすり替わり、犯行後に逃走するための準備ができたのよ。

たまき:すると、最初からレナさんに化けなかったのは、
    菅井さんの立場を利用して、そういう下準備をするためだったんですね。

 レナ:そうね。
    一方、XはA班に、「菅井捜査官はこちらにもいる」と言う情報を自ら流して、
    A班が本物の菅井捜査官を拘束するように仕組んだの。

    予告時間の15分前、与田邸は停電になり、現場が大混乱して、
    AB班の間で連絡が盛んになったけど、既に、2つの現場で辻褄が合っているし、
    本物の菅井捜査官から連絡が入る心配もないから、
    すりかわりが発覚する恐れは、なくなっていたのよ。

    ・・・そう言えば、些細なことかもしれないけど、停電の原因はまだ不明なの。
    どこにも、時限装置らしいものは見つからなかったのよ。
    もしかしたら、Xの仕業ではなく、偶然何かの事故があったのかもね。
    まあ、Xが自供すれば、自ずと解ける謎ではあるんだけど。

    奴は、私とバスルームに入り、手錠を外して私を身体検査したあと、
    もう一度手錠をかけて、わたしに猿轡をかませたの。
    ついに怪盗Xは、正体を現したわけよ。
    ・・・そのあと、携帯でどこかに電話していたなぁ。
    内容は良く聞こえなかったけど、今から思えば、
    A班が受けた「天国の涙は戴いた」という電話がそれだったのね。

    そしてXは、今度はあなたたちに最も近づくために、この私に変装したの。
    このあとのことは、2人の方が詳しいよね。

    


 紅蘭:なるほどなぁ、まあ、うまいこと立ち回ったわけやなぁ。
たまき:でも、そんな事ができるのも「あの能力」があるからだよ。
 紅蘭:今の話に出てこんかったけど、・・・なあ、レナはん。
    うちらは確かに見たんや。
    あいつの顔がグニャグニャ変化するのを。

 レナ:森田捜査官は、逮捕してから今まで、そんな現象は起こっていないって。 
 紅蘭:あいつは自分で思ったように、自分の顔を変化させられるんや。
    そうでなかったら、菅井はんになったり、レナはんになったり、
    そんな事できる訳ないやん。
    ・・・うちらが見たときは、気絶してコントロール出来なくなってたんやろな。

たまき:紅蘭の言う通りです。怪盗Xの顔が変るのをわたしも見ました。
    あれは変装なんかじゃないんです。
    レナさんも、あのとき言っていたじゃないですか。
    「ただの変装で、そんなことが可能でしょうか。」って。

 レナ:それはそうだけど、顔が変化するなんて、そんな、
    ・・・その方が不可能でしょう。


 紅蘭:今思えば、偽レナは声も本物とそっくりやった。
    うちらは、ただ信じて欲しいからこんな事言うてるんとちゃうんや。
    顔も声も自由自在のやつが、そうとは知らない警察に捕まっているんやで。
    ・・・・・・脱走するのなんか、簡単とちゃうか?

 レナ:それは、・・・そうだけど。
 紅蘭:信じてくれたら嬉しいんやけど、それが無理ならせめて、
    奴の警備を厳重にして欲しいって、森田はんに伝えてんか。

 レナ:それはわかった。
    でも、わたしから強くは言えないよ。悪くすると、
    TPCが権限を越えて、この事件に関わろうとしていると取られかねないからね。

 紅蘭:うん、もう〜。面倒やなぁ。
 レナ:わたしもそう思うよ。
    とにかくわかった。森田捜査官には伝えておくよ。

たまき:お願いします。(ペコリ)


 紅蘭:レナはん、気ぃ悪くせんかったかなぁ。
    立場が面倒なんは、わかってるつもりなんやけど。

たまき:どうだろうね。
 紅蘭:・・・・・・なあ、たまき。
    あの時、ホンマに顔が変ったんやろか。

たまき:なに言ってんだよ。変ったじゃない。
    ・・・・・・2人で見たじゃない。

 紅蘭:うち、なんか自信なくなってきたわ。
    あの場所は薄暗かったし、
    そないなこと、あるわけないよなぁ、やっぱし。

たまき:紅蘭・・・。

 電話 :(ピロロロロ、ピロロロロ)
 たまき:・・・なんとなく、電話取るの嫌だね。
  紅蘭:ああ、なんかな。
     ・・・うちが出るわ。

     (ピロロロロ、カチャリ)
     はい。李と寺月です。
ジュディ:あの、お久しぶりです。与田ジュディです。



 紅蘭 :ジュ、ジュディはん?ホンマお久しぶりですなぁ。
 たまき:ジュディさんからなの?

ジュディ:たまきさんも、そこにいるのね。
     そちらはどう?・・・お変わりないかしら。

 紅蘭 :ええ、まあ。あの事件も解決しましたしな。
     怪盗Xのことはジュディはんも知ってはるやろ?
     たまきが捕まえたんですわ。

ジュディ:そうだったの。・・・たまきさんが。
 紅蘭 :お互い、なんも盗られんと良かったですな。
ジュディ:そうね、・・・よかったわね。
     ・・・突然お電話してごめんなさい。たまきさんにもよろしく。
     それじゃあ。

 紅蘭 :え?あ、はい。・・・ほな。
    (・・・カチャリ)

たまき:ジュディさん、何だって?
 紅蘭:いやな、それが・・・。
    ようわからん。

たまき:なんだよ。ちゃんと話聞いてたの?
 紅蘭:聞いてたけど、ようわからんねん。
    きっと、うちらのこと心配して電話くれたんやろ。

たまき:そうか。
 紅蘭:・・・ジュディはん、なんや元気なかったなぁ。

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わからないことが残りつつも、怪盗Xは捕まって、全ては日常に戻ります。
・・・でも、なんだかわたしは、この事件はまだ終わっていないような気がするんです。

気のせいですね。・・・疲れているのかも。
うん。
じゃあ、おやすみなさい。




   
 



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