12月29日(土)
今日はニュージーランドからの出張から帰ってきた宮古さんと、
超ひさしぶりのデートでした。2〜3ヶ月ぶり?
とっても楽しみにしていたのです。
でも・・・

たまき:ただいま〜。
 紅蘭:おかえり。
    遅かったなぁ。
    どうやった?久しぶりの宮古はんとのデート。

しょんぼりたまき

たまき:え?
    うん。まあまあ。
    あ、途中でレンタルビデオ屋さんに寄って、
    頼まれてたビデオ借りてきたから。
    はい。
 紅蘭:ホンマ?「攻殻機動隊SAC」借りれたん?
    おきになぁ。ウチこれ見たかったんやわぁ。    
たまき:買い物もしてきたから、これから夕飯作るね。
    
 紅蘭:・・・・・な、なあ、ちょっとたまき?
    どないしたん?
    宮古はんとデート、してきたんやろ?
    楽しなかったんか?
    それとも、なんかあったん?
たまき:いや、な、なんでもないよ。
    ・・・どうして?
 紅蘭:だってあんた、な〜んか上の空やし。
    デートの後やのに元気ないし、どっかおかしいし・・・・
    あんたの借りてきたビデオのタイトル、見てみぃ。
たまき:「ビデオレッスンあなたも踊れるパラパラ」(笑)
     ・・・あれれっ?
 紅蘭:どこを間違うたら攻殻SACがこれになんねんな。
    なあ〜、なんかあったんやろ?
    ウチに言うてみ。
たまき:・・・う〜ん。
    そういえば紅蘭も、自分の生まれた国を離れて、
    外国で生活しているってことになるんだよねぇ。
 紅蘭:そうやけど、なにをいまさら?
たまき:向こうからこっちに来るときってどうだった?
    友達とか、・・・彼氏とかとお別れするとき。
    なにか言われなかった?
 紅蘭:あぁぁ〜〜〜んと、
    「すごいなあ」とか「がんばってこい」とか「ちょくちょく帰ってこいよ」とか
    友達や、お姉ちゃんたちはそんな感じやったなぁ。
    彼氏はいてへんかったから、そっちはわかれへんわ。あはは。
    ・・・えっ、ちゅうことはなんや?
    宮古はん、またどこかに行くん?
たまき:・・・えっ?
    なんでわかったの?
 紅蘭:そうなんか?
    いや、ニュージーランドから帰ってきた宮古はんとのデートに行って、
    帰ってきて元気なくて、ほんでその質問やろ。
    そらわかるって。
    そうか、また出張か。
    今度は長いん?
たまき:それが・・・・




〜その日のお昼〜
駅前にて宮古さんと待ち合わせ。
年末の駅前は通る人も足早に過ぎ去っていきます。


駅前で待ち合わせ

たまき:宮古さん、クリスマスには間に合うように帰ってきて欲しかったよなぁ。
    紅蘭たちと一緒だったから別に寂しくはなかったけど・・・・
    久しぶりのデート、待ち遠しいよ。
    ああ、もう、宮古さん早くこないかなぁ。

歌披露場で〜ス

バイト:いまからカラオケ、いっかがですか〜!
    カラオケルーム歌披露場で〜す。
    はい、どうぞ〜・・・
    いまからカラオケ、いっかがですか〜!
たまき:・・・寒いのに、ティッシュ配りのバイトも大変だなぁ。
    それに誰もティッシュ受け取ってくれなくて、ちょっとかわいそう・・・。
バイト:いまからカラオケ、いっかがですか〜?
    はい、どうぞ〜。
たまき:あ、どうも。
バイト:ありがとうございま〜す!
    ご来店お待ちしてま・・・・ゲッ!ゲゲッッ!?
たまき:・・・え?
バイト:なな、なんでもないです。
    今からカラオケいかがですか〜。
たまき:・・・あっ!
    ああ〜!ひさしぶり〜。
    高嶋さん、だよねぇ。
    元気だった?

ヒナ、新たなるバイト

 ヒナ:あちゃ〜〜。見つけられたくない奴に見つかっちゃった〜。
    ・・・うん、ま、ま、ま、まあね。
    あっ、それじゃあ、
    あたしまだバイト中だから。
たまき:そっか。
    がんばってね。
 ヒナ:ゴホン。
    ・・・いまからカラオケ、いっかがですか〜?
    カラオケルーム歌披露場で〜す。
    はい、どうぞ〜。
たまき:・・・・・・・・(ニコニコ)
 ヒナ:いまからカラオケ、いっかがですか〜?
    カラオケルーム歌披露場で〜す。
    はい、どうぞ〜。
たまき:・・・・・・・・(ニコニコ)
 ヒナ:いまからカラオケ、いっかがですか〜?
    カラオケルーム歌披露場で〜す。
    はい、どうぞ〜。
たまき:・・・・・・・・(ニコニコ)
 ヒナ:って、ちょっとあんた!
    こっち見てなに微笑んでんのよっ!
たまき:えっ?
    いや、真面目にがんばってるな〜って思って。
    んでこれは、頑張っている人への応援の笑顔というか、そのニコニコ。
 ヒナ:もー、あっちに行ってよ!
    そうやって見つめられてたら仕事やりにくいじゃん!!
たまき:あっち行けって言われても〜・・・
    私ここで待ち合わせしてるんだもん。
 ヒナ:待ち合わせ?
    まったくなんでこんなところで・・・
    ・・・・・ハッ!!
    まさか、待ち合わせの相手って、
    モト君!?
たまき:そうだよ。
    ん〜、・・・そろそろ来るころ。
 ヒナ:うそっ、ヤバイ〜。
    向こうの担当の子と場所を代わってもらおうかな。
    いや、もうすぐ中番は上がりの時間だから、
    ちょっと早めに切り上げちゃおうかな・・・
    よし!そうしよう!今日はもうバイトおしまい!
たまき:え?なんで?
 ヒナ:こんな格好でいるのを見られたくないからに決まってるじゃない!
たまき:やっぱり、その、・・・恥ずかしいの?
    「なんちゃって女子高生」みたいなの。

年齢詐称女子高生

 ヒナ:恥ずかしいわよ。でもしょうがないでしょ!
    (ヒソヒソ)
あたしまだ高校生だってことにしてこのバイトやってるんだから。
    そうでないと雇ってくれないんだもん。
たまき:あ〜、「年齢詐称」ってやつだ。
 ヒナ:人聞き悪いこといわないでよ。
    サバ読んだのは1歳だけよ。
    この制服だって、ついこのあいだまで着てたもんなんだから。
たまき:へ〜。(じゃあ、私よりひとつ年下なんだ・・・)
    あっ。
 ヒナ:・・・なによ、まだ文句あるの?
たまき:そうじゃなくて、
    宮古さん来たよ。
 ヒナ:えっ!?
    どこ?

電車で来た宮古

 宮古:よお、たまちゃん。
    先に来てたのか。
 ヒナ:うわぁっ!
    車じゃないの?何で駅から来るの?
 宮古:あれ、・・・・・・ヒナか?
    お前、なんて格好してるんだよ。
 ヒナ:しまったぁ、見られちゃった〜。
    こ、これはね〜モト君・・・、
    バイトのために仕方なく〜・・・
 宮古:コギャルの格好をか?
    なんだよそのバイトって。
    まさかお前、いかがわしいバイトやってるんじゃ・・・
 ヒナ:バッ、バカ!サイテー!
    なにヤラシー想像してんのよ!
    このティッシュの絵を見てよ。
    ほら、カラオケ屋だよ。

シザースやん

 宮古:なんだ・・・、あービックリした。
 ヒナ:あ〜あ。
    あたしって信用ないんだなぁ・・・。
 宮古:高校生でもないのにそんな格好して街中に立ってりゃあ、
    怪しまれるのもしょうがないだろ。
たまき:あれ?
    そういえば高嶋さんて、ニコさんのところで働いているんじゃなかったの?
    何でバイトしてるの?
 ヒナ:今はあたし学校に戻ったから、
    時間がなくてあそこじゃ働けないんだ。
    たまに手伝いにはいっているけど。
 宮古:でもお前、別にバイトなんかしなくても
    食べていけるくらいの金は相続したんじゃないのか?
 ヒナ:そりゃあ今日明日には困らないけど、
    でも今後のことを考えるとやっぱりそうでもないよ。
    家の維持費もかかるし、今あるお金はできるだけ取っておこうと思ってね。
 宮古:山に埋まっているっていう金塊は?
    あれ掘り出せばえらい金になるって聞いたような。
 ヒナ:ああ、あの話?
    掘り出すったって、どうやってよ。
    スコップ持っていってちょっと掘れば出てくるってわけじゃないんだから。
    業者を雇って、土木機械を山の中まで運んで、
    何日もかけて地面を掘ってもらうのにいくらかかると思ってるの?
    それでその金塊が出てくればいいけど、
    そうまでして何も出て来なかったら?
    丸損じゃん!
 宮古:でもTPCが調査して、ちゃんと埋まっているってわかってるんだろ。
 ヒナ:・・・うん。
    だから多分埋まっているんだろうけどさぁ、
    でも、いざ自分のお金をたくさん使ってそれを掘ってもらうとなると、
    やっぱり「もしかして何も埋まってなかったら?」とか思うじゃん!
    あたしは怖くて手を出せないよ・・・
 宮古:それもそうか・・・。 
 ヒナ:そんなわけで、この寒いなかカラオケ屋の
    ティッシュ配りのバイトをやっているってわけよ。
    しかも、こ〜んなはずかしー格好でさ。
たまき:え〜、その格好ってかわいいと思うけど〜。
 ヒナ:だから何よっ!
    あ、時間だ。
    やれやれ、バイトしゅーりょー。
    んじゃ、あたしは帰るから。
 宮古:もう行くのか?

なんだか素直に別れるヒナ

 ヒナ:うん。
    2人ともこれからデートなんでしょ?
    おじゃましちゃ悪いしね。
    バイバ〜イ。
 宮古:ああ、ヒナ!
 ヒナ:なに?
 宮古:ええと・・・・・その・・・なんだ、
 ヒナ:・・・・もお、なによぉ?
    言いかけてやめないでよ。

(ボボン・・・ガロガロガロガロガロ)

 漆木:いたいた!
    ヒナ〜、お〜い。
    もうバイト終る時間でしょ? 
 ヒナ:あっ、キャー!うるる〜ん!
    グッタイミ〜ン!
    今終わったところだよ。

SHELBY GT-500KRのうるるん

 漆木:これからどこか遊びに行こうよ。
 ヒナ:わざわざ誘いに来てくれたの?
    うそうれしー!
    行く行く!
たまき:あの人って・・・・、あの廃墟で先に戦ってた人だよね?
 宮古:漆木さん、だっけ。
 ヒナ:そうだよ。あのときの人。
    本当の名前は黒崎さんていうの。
 宮古:じゃあ、漆木ってのは偽名?
 ヒナ:うん。
    女装するときのね。
たまき:
 宮古:
えっ!?女装?
 ヒナ:そういえば2人には言ってなかったけど
    あの人、男の人だから。
たまき:
 宮古:
オトコ!?
 ヒナ:そんでねぇ、
    ・・・ヘヘヘ〜、
    実はあたしとうるるんね、
    今、つきあってるんだ〜。
たまき:
 宮古:
つ、つきあってる〜?

のろけるヒナ

 ヒナ:彼、女装趣味なところがちょ〜っとばかり変わってるけど、
    そこを除けばかっこいーし優しいし強いし、
    超男前なんだよね〜、えへへ〜、なんちゃって〜。
    それじゃあ、あたしは行くからそういうことで。
    おたがいに楽しい時をすごしまショー
    あ、そういえばモト君、さっき何か言いかけてたよねぇ。
 宮古:ああいや、なんつーか、
    ・・・・・・ヒナ、これからも元気でな。
 ヒナ:なにそれ。
    まるでしばらく会えないみたいじゃん。
    
 宮古:そうだな。悪い悪い。
    じゃあな。
 ヒナ:うん、じゃあね。
    うるる〜ん!おまたへ〜!
 漆木:よ〜し。
    どこか行きたいところある?
 ヒナ:えーとねぇ・・・・

 (ボボン・・・ガロガロガロロロロロロロロ・・・)

たまき:・・・私たちも行こうか。
 宮古:そうだな。
たまき:変わったカップルでビックリしたけど、
    なんだか幸せそうだったね〜。

徒歩の二人

 宮古:うん。
たまき:そういえば宮古さん、電車で来たよね。
    車は?
 宮古:車は無いんだ。
    歩いてきた。
たまき:そうなの?
    珍しいこともあるもんだね。
    まあ私は歩いたり走ったりは好きだし、別にかまわないけど。
 宮古:それじゃあちょっと歩こうか。
たまき:うん!
    あっちのほうに、お散歩にいい場所があるんだよ。

幕張の公園です

たまき:ねえ、ニュージーランドはどうだった?
    面白かった?
 宮古:あんまりあちこち行けなかったから奥のほうはわからないけど、
    海沿いの平地はだだっ広い草原に道がまっすぐ伸びてて、なんか北海道みたいだったなぁ。
    きれいなところだったよ。
たまき:ふう〜ん、いいなぁ。
    野生のペンギンは?

歩く二人(なんか今回無駄に画像作りすぎたかも・・・)

 宮古:ああ、あれなぁ。
    思った以上に観光地化されてて、ちょっとガッカリだった。
    あれはキガシラペンギンだったかな。
    ツアーを組んだ観光客が、塹壕みたいな通路を通って、
    ペンギンの営巣地のすぐ近くまでいけちゃうんだ。
    野生っていうから、まったく人の手の入らないところで生活しているペンギンを
    見られるんだと思ってたのに・・・
    ・・・まあでも仕方ないだろうな。
    そういう形ででも保護していかないと、連中はいずれ滅んでしまうわけなんだし。
    かえって参考になったし。
    それに、さすがにそういう環境にある水族館はレベルが高かったよ。
    怪我をしたペンギンを治療して野性に返すなんて、
    日本の水族館じゃあ絶対にありえない仕事だもんな。
    ・・・すごかった。大変だったけど本当に勉強になったよ。
たまき:よかったねぇ。
    こっちでのお仕事に役立つといいね。

座りましょう

 宮古:ん、ああ。
    それなんだけど・・・・
    あ、ちょっと座ろうか。
たまき:うん。
 宮古:・・・・・・・・・・・
たまき:「それなんだけど」、なあに?
 宮古:・・・・・・・・・・・ええ〜と。
たまき:どうしたの〜、宮古さん。
    言いにくいことなの?
 宮古:ああ、いや・・・
    ちょっと待ってて。
    俺、ジュース買ってくるから。
たまき:ジュース?
    いいよう。
    それよりも・・・・・
    ・・・って、行っちゃった。

行っちゃった。

たまき:宮古さん、なにそわそわしてるんだろう・・・・
    せっかくの久しぶりのデートだってのにさぁ。
    ・・・久しぶりすぎて照れてるのかしら。




 宮古:おまたせ。
たまき:遅いよぉ。
    遠くまで行ったの?
    ・・・あ、いいにおい。
 宮古:そこで石焼きイモ売ってたから買って来た。
    たまちゃん好きだろ?
たまき:すき〜。
    あったかいココアと並んで、
    寒いときに簡単に幸せになれるアイテムだよね〜。
 宮古:そう思って、缶入りホットココアも買ってきたんだ。
たまき:うそー!
    こいつはダブルで幸せだー!
    ありがとぉ〜。いただきま〜す。
    (はぐはぐ)
    ぅあちちちいぃ!
    はふぅっ、はふぅっ、はふぅっ、はふぅぅっっ!
 宮古:おい、大丈夫か?
たまき:は〜〜〜〜〜〜。
    あはは、焼きイモって表面はそうでもなくても中は熱々だっての、
    わかっているのについかぶりついちゃうんだよね〜。
    あー熱かった〜。
    宮古さんは食べないの?
 宮古:ああ。
    それより、そのままでいいからちょっと話を聞いてくれないかな。
たまき:うん、なあに?
 宮古:・・・・・・またニュージーランドに行く。
たまき:ふ〜〜ん。
    ・・・・・・・・・
    ・・・・・・・・・ええっ!?
    帰ってきたばっかりなのに、また行くの?
    今度は何週間?
 宮古:・・・2年か、3年。
たまき:・・・・・・・うそっ。

長いお別れ

 宮古:しばらくの間向こうに行って、
    日本にいてもわからない、いろんなことを勉強してくる。
たまき:そ、そんなに長い間お別れなの?
    なんで?
    先回だって予定を延長して2ヶ月も勉強してきたんだから、
    もう充分でしょ?
    私、やだよぅ・・・・・
    宮古さんがあっちに行っている間、毎日毎日、
    どんなに寂しい思いで宮古さんが帰ってくるのを待っていたと思ってんのよう!
    それなのに、今度は2〜3年?
    なんで〜?
 宮古:・・・やっぱり、そう言われるよなぁ。
たまき:ねえ、
    それもう決まっちゃったことなの?
    宮古さん。そのお話、断れないの?
 宮古:まあ、断れるよ。
たまき:えっ?
 宮古:断れる。
たまき:・・・なんだぁ〜。
    もー、それ早く言ってよ〜。
    じゃあ、そんな話は断っちゃおうよ。
 宮古:いや、断らない。
    これは、今回の研修じゃ足りないから、もうしばらく勉強しに行かせてくれって、
    俺から進んで言い出したことなんだよ。
    うまいこと話が上まで通って、また行けることが決まった。
    だから、行くのをやめたりはしない。

そんなの困るよう

たまき:・・・なんで!?
    そんなのないよ!
    宮古さんは好きなことをやりに
    ニュージーランドに行くんだからいいだろうけど、
    わたしはどうなるの!?
    なんで私と一緒にいられるほうを選んでくれないの?
    なんでそっちを選ぶのよう!
 宮古:たまちゃん・・・・・ちょっと・・・・
たまき:・・・んもう、これいらない!
    こんな話をする前に焼きイモやココアなんか買ってきてさ、
    食べ物で私をごまかす気だったんでしょ!
 宮古:まさか。
    ちょっと落ち着いてくれよ。
    ・・・さっきココアやらを買いに行ったのは、
    この話をたまちゃんにする前に、もう一度1人になって考えたかったからなんだ。
    ココアを買う時間だけじゃ決心がつかなくて、
    ・・・もっと先まで行って焼きイモまで買ってきた。
    誤魔化そうなんて思ってないし、
    俺だって、たまちゃんと離ればなれになるのは嫌だよ。
    そんなの当たり前だろ?
たまき:・・・・・・・・・・・・・それなのに、
    良く、考えても、
    やっぱり私とはなれて・・・行っちゃう方を選んだの?
    わかんないよ。宮古さんの言ってること。
 宮古:俺が現場で学ぶことができる、今が最後のチャンスなんだ。
    行けるのは、市営水族園が閉まって県立水族館ができあがる前の、
    今だけなんだ。
    今このチャンスを逃してしまえば、県立水族館での仕事に追われて、
    もう外国で長期間勉強するなんてことはできないだろう。
    あそこには、水族館で働いているだけでは知ることができない、
    学ぶべきいろいろなことがたくさんある。
    どうしても行きたいんだよ。
たまき:・・・・・・・・・・・・・
 宮古:ん。
    なあ、たまちゃん。
    水族館にしても動物園にしてもペンギンを飼っているところって
    どこも、奥に岩山があって、手前にプールがあって、
    アクリルガラス越しにペンギンの泳ぐ姿が見れたりするってパターンだろ。
    どこも一緒だ。
    ひどいところでは、南極に住んでいる種類のペンギンでもないのに、
    なぜか白く塗って氷山を模したところで飼育してたりする。
    俺、ああいうの変えたいんだ。
    岩があって海があって草木が生えていて、っていう
    ペンギンが暮らしている自然のままのフィールドを
    新しい水族館にきちんと再現して、そこで飼育する。
    お客さんはペンギンからは見えない通路を通ってそのフィールドに入り、
    どういうところで餌をとって、食べて、寝て、繁殖して、
    っていうような、ペンギンの自然な姿を見ることができるんだ。
    いいだろ、これ?
    つまり、ニュージーランドで見た野生のペンギンの見学ツアーを参考にして、
    水族館でもできるようにしたいってわけなんだけどさ。
    そのためにはもっともっと、野生のペンギンの生活を知る必要がある。
    知り尽くす必要があるんだ。
    もしかしたら2〜3年じゃ足りないかもしれないけど、
    できるだけ早く吸収して、これを新しい水族館に作りたいんだ。
    だから・・・・

語られてしまった

たまき:・・・・・宮古さんが行きたい理由も行くわけも、
    なんとなくだけど、わかったよ。
    もう全然迷ってないんだね。
    行くって決めちゃってるんでしょ?
 宮古:ああ。
    実はもう車も処分しちまった。
    今日歩いてきたのはそういうわけなんだ。
たまき:・・・ずるいよ。
    自分ばっかり考えて考えて、自分だけ心の準備をしておいてさぁ、
    それを突然私にぶつけてくるんだもん。
    私は・・・急にそんなこと言われたって、どうしたらいいか・・・・
 宮古:ごめん。でも・・・・・
たまき:ぐすっ・・・ぐすっ・・・
 宮古:・・・あ。
たまき:私、今日の久しぶりのデートのこと、本当に楽しみにしてきたんだよ?
    どこに行こうかなとか、なにをしようかなとか、なにを話そうかなとか、
    それを考えるだけで胸がギューッとなるくらい楽しみにしてたのに・・・
    それなのに、またニュージーランドに行くなんて、(グスッ)
    ずっと会えないなんて・・・・
 宮古:ああ、ごめん。
    すまなかった。
    自分のことでいっぱいいっぱいで、
    たまちゃんの気持ちまで気が回らなくて・・・
    俺が悪かったよ。    
たまき:宮古さん、行っちゃヤダ!
    行かないで。
    私と一緒にいようよぉ。(グスッ、グスッ)
 宮古:それは・・・・できないよ。
    俺だってたまちゃんと一緒にいたい。
    でも、それでも今行かなかったら一生後悔する。そんな気がするんだ。
    だから、・・・ごめん。
    何でも言うこと聞くから、俺を許して。
たまき:・・・なんでも?
 宮古:ああ。
    だから、お願いだから泣かないで。

このままずっと・・・

たまき:・・・・・・・・・・・じゃあ、
    それじゃあね、
    もうすこし、このままで・・・・・
 宮古:・・・ああ。





回想おしまい

たまき:・・・というわけなの。
 紅蘭:なるほどなぁ。
    宮古はんも思い切ったことするんやねえ。
    外国でペンギンの勉強か。
    ウチにはようわからんけど、あの人にとっては大事なことなんやろうな。
たまき:ねえ紅蘭。
    どうしたらいいんだろう、私。
 紅蘭:そういうことは自分で考えなあかん。
たまき:考えたけどぉー!
    頭がごっちゃになってさ、どうしたらいいんだか、
    何がなんだかわからなくなっちゃうんだよう。
 紅蘭:・・・まあパターンとしては、
    宮古はんに泣きついてでも行くのをやめてもらうか、
    宮古はんを気持ちよく送り出すかの、2通りしかないやろ?
たまき:うん。
 紅蘭:で、あんたは気持ちよく送り出したいんか?    
たまき:いや。
    宮古さんとお別れするの、いや。
 紅蘭:ほな残るのは、
    泣きついてでもニュージーランドに行くのをやめさせるってことやな。
    それで宮古はんが行くのをやめたら・・・・・・、
    あんたはええかも知れんけど、
    宮古はんはそのことをずっと後悔するかもな。
たまき:・・・・・・それもイヤだよ。
 紅蘭:両方とも嫌やったらあかんやん。(笑)
    どないもこないもならへんで。
たまき:だからどうしたらいいか、わかんないんじゃない。
 紅蘭:・・・気持ちはわかるけどな。
    なあ、たまき。
    いつも良いほうと悪いほう、どちらかから選べるとは限らんで。
    ときには悪いほうのAとBから、
    いくらかマシなほうを選ばなならんときもあるんや。
    世の中、ある程度あきらめな仕方のないこともあるもんやで。
たまき:だって、どっちも選べないよう。
    それに、わたしが泣きついたって、
    彼、ニュージーランドに行くのをやめないと思う・・・
    それでも彼、行っちゃう気がする。
    だって、ペンギンのことを話すときの彼って、
    とっても楽しそうで、充実しているみたいで、
    ああ、この人本当にペンギンの仕事が好きなんだな〜って思うもん。
 紅蘭:う〜〜ん。
    それなら、やっぱりあんた次第やで。
    宮古はんの気持ちを汲んでニュージーランドに行かせてあげるか、
    あんたの気持ちを優先して、宮古はんが行くのをやめさせるか。
    ・・・・・・ああ、
    考えてみたら選択肢はもうひとつあるんやなぁ。
    ”あんたも一緒にニュージーランドに行く”っていうのが。
    そうすれば宮古はんは好きな仕事がやれるし、
    たまきは宮古はんと一緒にいられるやん。
たまき:それは真っ先に考えたよ。
    でもそのためには・・・学校やめなきゃならないし、行くお金もないし、
    わたし英語しゃべれないし、やっぱ親の許しもいるし、それに・・・
    向こうで彼と一緒に暮らすとなるとさぁ、
    ま、また、それは別に、気持ちの整理がちょっと・・・・
 紅蘭:も〜、中途半端なこといいなや。
たまき:それに宮古さんも、「ついて来い」って言ってくれなかった。
    彼から言ってくれれば私の気持ちも決まるかもしれない、けどね・・・・・・
    それに紅蘭だって困るでしょ?
    私がいなくなったらここを一人で借りれないわけだし、
    お引っ越ししないといけないじゃない。

このままでいれたらいいのにね

 紅蘭:ウチのことはええがな。
    今はあんたの話をしてんねんから。
たまき:だって紅蘭さぁ・・・・・・・
 紅蘭:アホ!
    住むとこなんてなんとでもなるっちゅうねん!
たまき:・・・私ね、紅蘭。
    宮古さんとお別れするのも嫌だけどね、
    紅蘭やほかのみんなとお別れするのも嫌。
    ・・・嫌だよう。
 紅蘭:おおきにな。
    正直な話、ウチもあんたと一緒にいたいわ。
    でもな・・・。
たまき:はあ〜〜。
    どうしたらいいんだろう、本当に。
 紅蘭:まだ決めるまでに時間はあんねやろ?
    結論を急がんとゆ〜っくり考えて、
    あとあと悔いのない選択をしたほうがええで。
たまき:・・・宮古さんを行かせてあげたい、けど、行って欲しくない。
    一緒に行きたいけど・・・気持ちが決まらない。
    でもね、結局私がどうするか、もう自分でなんとなくわかってるの。
 紅蘭:・・・・・・・・・・・・
たまき:「ニュージーランドに行く」って彼の気持ちが決まっているなら、
    私はその応援をしてあげるしかないかなって。
    ね。
    私には彼をとめることはできないもん。
    それでもし、彼が「一緒に行こう」っていってくれたら、
    ・・・私も覚悟を決められるかも。
 紅蘭:たまき・・・

 電話:ジリリリリリリリリン・・・
    ジリリリリリリリリン・・・
 紅蘭:ああ、ウチが出るわ。
    (カチャ)
    はいもしもし、李と寺月です。
    ああ、宮古はん!?
たまき:・・・!?
 紅蘭:たまきにやろ?
    うん。
    いてるよ。
    ・・・ちょっと待って。
    はい、たまき。

気になるなぁ

たまき:・・・も、もしもし?
 宮古:たまちゃん。
    さっきは急な話をしてごめん。
    俺、あの後もう一度考えたんだ。
    これからどうするのが一番いいかって。
たまき:うん。
 宮古:・・・俺は、ニュージーランドに行きたいけど、
    でも、たまちゃん。
    君とも一緒にいたい。
    これが考えた末の結論だ。
たまき:宮古さん・・・・
    私も、
    私もそうなんだよ。
 宮古:だから、たまちゃん。
    ニュージーランドへ・・・・・その・・・
    つまり・・・・・・・・・・俺・・・・・・
たまき:・・・・ん?
    どうしたいの?
    宮古さん、ちゃんと言って!
 宮古:わ、わかった。
たまき:うん。

 宮古:俺、ニュージーランドへ行くの、やめるわ。



たまき:・・・・・・は?(笑)
 宮古:ニュージーランドへは行かない。
    この話をしたとき、まさか泣かれるとは思わなかったんだ。
    「がんばってきてね」とか言われるといいな〜とか思ってて。
    もちろん今でもニュージーランドに行って勉強してきたい気持ちに
    変わりはないけど、でも、たまちゃんにつらい思いをさせてまで、
    俺のワガママを通していいのかって思ってさ。
    だから俺・・・・・
    ・・・あの、もしもし?
    たまちゃん聞いてる?
たまき:ちょ・・・・・ちょっと宮古さん!!
    
私、宮古さんのこと見そこなったよ!
    それでいいの!?ほんとうにそれで!?
    向こうでペンギンのこと勉強してきたいんでしょ?
    最初で最後のチャンスなんでしょ?
    行かなきゃず〜っと後悔するんじゃないの?
 宮古:そうかもしれない。
    でも・・・
たまき:じゃあ、やめちゃ駄目だよ!
    そんなの宮古さんらしくない!!
    夢があるならがんばってきてよ!!
    私のことはいいから!
 宮古:・・・た、たまちゃん。
    じゃあ、行ってもいいのか?
    ニュージーランドへ。
たまき:わたし、応援してるから。
    いい?
    途中でやめちゃ駄目だよ!
 宮古:・・・ありがとう、たまちゃん。
    ありがとう。
    たまちゃんがそう言ってくれるなら、俺がんばるよ。
    きっとやりとげて帰ってくるから。
    今までにないペンギンの飼育法を創り上げて見せるよ。
たまき:うん!そうでなくちゃ。
    わたし、そういう宮古さんのことがダイスキだよ。
 宮古:わがまま聞いてくれてありがとう。
    俺も愛してるよ。
    ・・・・・・よし!
    じゃあまた忙しくなるな。
    たまちゃん、また電話するよ。
たまき:えっ?
    うん、じゃあね。
 宮古:おやすみ。
    (カチャ、ツー、ツー、ツー・・・)
たまき:・・・・・・・・・・・・・・
    (カチャ)


たまき:・・・はぁ〜〜。
 紅蘭:たまき〜、「がんばってきて」ってよう言うたなぁ。
    宮古はん喜んでたやろ。     
    ウチ、偉いと思うで。
たまき:言っちゃったー・・・・・
 紅蘭:・・・・・・へ?
たまき:だって宮古さん、
    ニュージーランドに行くのやめる、とか言い出すんだもん。
    ・・・宮古さんがそんなこと言い出すなんて、
    離ればなれになるよりも、もっと嫌だったの。
    そんな宮古さんはキライだもん。
    だからほとんどイキオイで、「そんなの駄目」って
    ・・・言っちゃった。(笑)
    宮古さんが行かないならわたしは嬉しいはずだったのに、
    それでよかったのに・・・
 紅蘭:い、勢いで?
たまき:ああ〜〜ん!
    今までどおりに一緒にいられるところだったのにぃ〜〜!
    言っちゃったよぉ〜!
    しかも宮古さんたら、「がんばって」って言われたとたんに元気になってるしー!
    もー、宮古さんのペンギンばかー!
    きっともう、ペンギンのことで頭がいっぱいで、私のこと忘れてるよ〜!
 紅蘭:・・・けっこう天然な人かもしれんな。
    まあでも、応援するって言うたんやったら、
    たまきも気持ちを切り替えて、ちゃんと応援してやらんとな。
たまき:わかってるよぉ〜。
    ふぇ〜〜ん。
 紅蘭:まいったなぁ。
    ほな、気分転換にこの「パラパラ」のビデオ、見る?
たまき:いらなーい!

   
 



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