10月20日(日)晴れ 先週から紅蘭が徹夜続きのお仕事をしています。 ほとんど寝ないで、フラフラになりながらやってますけど、 ・・・大丈夫かなぁ。 ちなみに今現在、1時間半の仮眠後、30時間不眠不休で作業中です。 さすがにそろそろダウンすると思います。 たまき:・・・と同時にわたしも学校のことで忙しかったからなぁ。 ひどいありさま。 溜まりに溜まった洗濯物とか食器とか、 この辺で片付けておかないとね。 それにテラスも何とかしないといけないし・・・。 でも、ここまで溜まるとさすがに憂鬱だわ。 ・・・片付けの前に紅蘭の様子でも見に行こう〜っと。(逃避) たまき:紅蘭、入るよ〜。 紅蘭:・・・お〜う。 たまき:うう・・・。 ここもまたひどいことに・・・・ 紅蘭:え?なんや? たまき:なんでもないよ。 お疲れ様。 ちょっとくらい休んだほうがいいんじゃないの? 紅蘭:いや、あとちょっと、 あとちょっとで終わんねん。 せやからこれ片付けたら仮眠とるわ。 というか、「これ終わったら仮眠とってもええで」っていうふうに、 仮眠ちゅうエサを自分の目の前にぶらさげて仕事してんねん。 たまき:ちょっと肩をもんであげるよ。 ずっとキーボード打ってるんでしょう? 紅蘭:あ、おおきに。(もみもみ) ・・・う! あ〜〜〜〜、効くな〜。 たまき:うっわー、お客さんガッチガチですなぁ。(もみもみ) まさかこれほどとは。 紅蘭:う、う、う、う・・・・ あんた・・・マッサージ・・・うまいなぁ。 たまき:中学・高校と、陸上やってたでしょ? 体育会系だと先輩にいろいろやらされるんだよ。 ・・・・・ねぇ紅蘭、 ちょっと、痩せたんじゃない? 紅蘭:そうか〜? まあ、ここのところ無茶な生活してるからなぁ。 たまき:そうだねぇ。 どれどれ。(むにゅ) 紅蘭:・・・たまきさん? そこ肩やなくて、胸なんですけど? たまき:あ〜、やっぱり痩せた分おっぱいも小さくなってるみた〜い。 紅蘭:ウソ、ほんまに? たまき:これって良くない痩せ方だよねぇ。 ねえ、お仕事終わったら何かおいしいものでも食べに行こうよ。 ケーキバイキングとかさぁ。 ホテルなんだけどさ、このあいだ友達にいいところを教えてもらったの。 紅蘭:ホテルでケーキバイキングかぁ。 ええなぁ、それ〜。 たまき:へへへ。 いいでしょ〜? 紅蘭:・・・・・・で、 あんた、いつまで乳もんでるつもり? たまき:いや〜、 プニプニ心地よいもんでついつい・・・・・・。 紅蘭:ドアホ。 たまき:じゃあわたし、これから洗濯したり掃除したりするよ。 だいぶやってなかったからね。 ちょっとうるさくなるよ? 紅蘭:ええよ、別にかまへん。 ヘッドホンつけて音楽聴きながらやるから。 たまき:ん。 じゃあお仕事がんばってネ。 紅蘭:お〜う。 たまき:さて、どこから片付けたものか。 紅蘭のお仕事が終わる前には片付けないとね。 よーし、はりきって・・・・・ チャイム:ピンポロロ〜〜ン たまき:はぁ〜い。 ・・・んもう、誰だよう。 せっかく気合い入りかけてたのに〜。 (とことことこ) たまき:は〜い、どちらさまでしょうか? (ガチャ) えりか:やほーぅ、先輩! 瑠璃果:寺月先輩、あの、あの、 ・・・こんにちは。 たまき:えりかちゃん? ・・・それにえ〜と、瑠璃果ちゃんも。 久しぶりだね。 どうしたの? えりか:今日は二人で遊びにきましたのです。 瑠璃果:すみません、突然おじゃまして、 あの、やっぱりご迷惑では・・・ わたしは止めたんですけど、えりかが強引に、その・・・・ えりか:瑠璃果ちゃん〜、そんな理由つけてるけど、 本当は先輩と顔をあわせるのが嫌だったんじゃないの? 瑠璃果:そ、そんなことないよっ! たまき:・・・? えりか:この子、前に先輩と会ったときに、 何もいわずに駆け出してったことを、 なんだかずっと気にしてるんですよ〜。 瑠璃果:違うよぉ。 そんなんじゃないよ! せっかくのお休みの日にお忙しい先輩のお邪魔をしちゃいけないと思って・・・ それに、恋人のかたとデートのご予定があるかもしれないし。 えりか:あっはっはは。 だいじょぶ、だいじょぶ。 先輩は彼氏さんの休みにあわせて平日にデートしてるから、 日曜日はい〜っつも暇なんだよ。 だから遊びに来てもオッケー! ね〜、先輩!? たまき:「ね〜先輩!?」じゃない! えりか:「ね〜先輩!?」じゃないんですか!? たまき:来るときは電話の一本くらい入れてほしいなあ。 ・・・まあ確かにいつもは暇だけどさ。 それに彼氏はいまニュージーランドに出張中だからデートの予定も無いし・・・。 でも、今日はちょっとね。 ここのところ紅蘭がお仕事でこもってて、 私も最近いろいろ忙しくてさぁ。 学校のことに加えて、食事作ったり、お茶いれたりおやつ作ったり、 あと溜まってるお洗濯やら片付けやらの家事がいろいろ、嫌になるほど・・・・ えりか:プンプン怒こってる! ・・・そうなんですかぁ。 そんな事態とはつゆ知らず、とんだアポなし訪問を。 瑠璃果:ほら、えりかのせいで先輩にしかられちゃったじゃない! もう帰ろう。(ぐいぐい) 先輩、お忙しいところすみませんでした。 えりか:すみませんでした。 先輩、バイバイ。(トボトボ) たまき:☆キュピーーーーン!☆ ・・・・・・・・・・・・あ〜〜〜〜、 待って待って♪ 二人とも、ちょ〜〜〜っと待って! わたしいま天啓を得たよ! えりか:はい? ・・・てんけー? たまき:オホホホホホ・・・ 遠いところをせっかく来てくれたんだから、 良かったら寄っていかない? 私は怒ってなんかいないわよ? さ、さ、可愛い後輩達、二人とも入って。入って。 瑠璃果:せ、せんぱい、 そんなもったいないお言葉を・・・・・(ウルウル) ハイッ! おじゃまさせていただきます! えりか:瑠璃果ちゃん待ってよ〜。 瑠璃果:なによ。 えりか:(ヒソヒソ)・・・なんか様子が変だよ。 先輩、きっと何かたくらんでるよ〜。 瑠璃果:なにいってんの。 後輩思いの先輩の、宇宙より広い心とブラックホールより深い慈愛の気持ちが、 えりかにはわからないの? えりか:そのたとえ、わかりにくいよ〜。 たまき:ホホホ、どうしたの。 二人とも早くいらっしゃい? 瑠璃果:はい、ただいま! えりか、行くよ。 えりか:う、・・・うん。 瑠璃果:ここが・・・、ここが先輩のお住まいなんですね。 えりか:そこが先輩の部屋だよ。 奥に行くとキッチンとお風呂と紅蘭お部屋があるの。 瑠璃果:あそこが先輩のお部屋なんだ・・・・ たまき:それで、ここがキッチンだよ。 瑠璃果:・・・え゛っ? えりか:うわぁ、ゴッチャリ散らかってますね〜。 いつもはきれいなのに。 瑠璃果:ああ、・・・いつもはきれいなんだ。 ビックリした。 たまき:いやあ恥ずかしいな〜。 もう大変なことになっててねぇ。 とても私一人の手におえない状況といいますか・・・。 というわけで〜〜〜、 え〜〜と、(ゴソゴソ) はい。 ふたりともこのエプロンを使ってね。 瑠璃果:・・・・・・・・・・・・は? えりか:ああぁぁぁああぁぁーーー! やっぱり〜〜! そういうことだったですか。 瑠璃果:・・・・・・・・・・・・え? えりか:瑠璃果ちゃん、 先輩は、溜まりまくった家事全般を えりか達に手伝わせようってコンタンなんだよ。 たまき:ビンゴ〜♪ えりか:ビンゴて・・・・・・。 ほら見なよ〜。 やっぱり後輩を利用しようとたくらんでたよ。 瑠璃果:う・・・うん。 たまき:まあまあそう言わずに。 終わったら、私が作ったおいしくて甘ぁ〜いケーキをご馳走するから。 えりか:そ〜んなご褒美でえりか達を釣ろうったって・・・ 瑠璃果:ほんとですか!? せっ!せっ! 先輩が自らにお作りになられたケーキですか? るるるるるるるるるるるるるるる瑠璃果、恐悦至極です! バリバリ家事やります! がんばっちゃいます! えりか:そんなやる気になっちゃってぇ・・・ しょうがないなぁ、 先輩にはいつもお世話になってるし、 えりかもがんばってご奉仕するにゃん。 たまき:やったー! ありがと〜、わが後輩達よ〜。 瑠璃果:これ、フリルがついてて可愛いエプロンですね。 (シュルシュル) こうやってつけるのかな。 たまき:あ、瑠璃果ちゃん、 なんかメイドさんみたい。 えりか:ほんとだ。 瑠璃果:メイドさん? そうですか? たまき:いいなぁ〜、カワイイなぁ〜。 瑠璃果:・・・・可愛いだなんて、 先輩、そんな、 どうしよう・・・・・・・。 えりか:・・・・・・・服のことだよ? 瑠璃果:わっ、 わかってるよ〜。 たまき:じゃあ、えりかちゃんはキッチンをよろしくね♪ えりか:あの食器を洗っておけばいいんですね。 わかりました。 たまき:瑠璃果ちゃんはお洗濯ね。 そんで洗濯が終わったら、シーツ類はテラスに干して。 それ以外の衣類は乾燥機ね。 瑠璃果:ハイ! たまき:よろしく頼むね。 私はここか、そこの紅蘭の部屋にいるから、 わからないことがあったら聞いてね。 瑠璃果:コウラン・・・の部屋? たまき:ああそうか。瑠璃果ちゃんは紅蘭を知らないんだよね。 紅蘭って言うのは私の同居人の名前だよ。 ちょっとオタはいってるけど、しっかり者でいい子だよ。 ・・・そうだ。 君はウチにははじめて来たんだし、 紅蘭を紹介しとこうか。 瑠璃果:・・・いえ、あとでいいです。 その人はお仕事中なんですよね。 お邪魔しちゃ悪いですし。 えりか:瑠璃果ちゃんたら、またひとみしり? 紅蘭は気さくでいい人だよ? 瑠璃果:そんなんじゃないよぉ・・・。 それより先輩。 私が使う洗濯機はどこにあるんでしょうか。 たまき:ああ、こっちだよ。 たまき:あれが洗濯機。 全自動の奴だけど、使い方はわかるかな。 衣類は素材で分けてあるから、瑠璃果ちゃんはそこの簡単なのだけやっつけて。 面倒なのはあとで私がやるから。 瑠璃果:なんでしたらそちらふくめて全部、私が洗濯しますよ? たまき:いいよ〜。 だってほら、ようするにあっちは下着とかだしさ。 さすがにそれは、ちょっとね。 瑠璃果:・・・あ、そ、そうですね。 わかりました。 じゃあ簡単なのだけやっておきます。 たまき:よろしくね。 瑠璃果:お任せください! たまき:・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(もじもじ) 瑠璃果:・・・あ、あとは一人でやっておきますよ? たまき:ん〜〜・・・・あの・・・さ、 この間はごめんね。 瑠璃果:えっ!? たまき:瑠璃果ちゃんのこと・・・忘れちゃっててさ。 瑠璃果:そんな、・・・・全然いいんですよ。 先輩が謝ることないです。 先輩は私だけじゃなくて何人もの後輩の面倒を見ていらっしゃいましたし、 その中で私は全然目立たないほうでしたし、 ・・・先輩とは、結局ほとんどお話したこともなかったですし・・・。 たまき:そうかぁ。 んでもまぁ、またこうやって会えたんだしね、 こんどはもっと親しくなろうね。 瑠璃果:はっ、はいっ! (ガシャーーーン) えりか:アチャーー! イケネーーーッ! たまき:ああっ、うそっ! えりかちゃん、お皿割ったな! じゃあ私行くから。 ちょっと〜、えりかちゃん大丈夫〜〜? (ドタドタドタ・・・・・・・) 瑠璃果:このあいだは何もいわずに帰ってしまって、 先輩に嫌われてたらどうしよう・・・って思ってたけど、 そんなこと無いみたい・・・良かった。 その上・・・ 「こんどはもっと親しくなろうね」だって。 「こんどはもっと親しくなろうね」だって! 瑠璃果:先輩の家に来てよかった・・・ 強引に引っ張ってきてくれて、えりかありがとう! よーし、洗濯するぞーー! ♪ジャブジャブジャブジャブおせんたく〜 まわれ〜、だいかいてんまだん〜 えりか:ガラス片が飛び散って身動き取れませんよう。 たまき:うわっちゃ〜〜、 (チャリチャリ・・・) あ、そこ。 足元、気をつけて。 えりか:はい。 たまき:あ〜あ。 ・・・ここにあった食器、全部割れちゃったねぇ。 えりか:でもこれで、 あれだけあった汚れた食器が一気に片付きましたね。 怪我の功名ってヤツですか。(笑) たまき:・・・・・・な・ん・で・すっ・てェ?(ギロリ) えりか:じょ、冗談ですよ〜。 反省してますよ〜。 たまき:反省してる人は冗談なんか言わないの! えりか:はぁい。 たまき:悪い子にはおやつあげないわよ! えりか:・・・・・・それ、よっちゃん? たまき:だいたい拾い終えたら 残りの小さな破片は掃除機で吸い込んじゃおうか。 えりか:はい。 えりかったら前もって掃除機を持ってきますです。 (とたたたたた) たまき:・・・はぁ。 (チャリ) これ気に入ってたのになぁ。 ま、しょうがないか。 カタチアルモノハ、イツカコワレル・・・。 瑠璃果:あの〜、 大丈夫ですか?先輩。 たまき:え?あ、瑠璃果ちゃん。 うん。 ありがとう、大丈夫だよ。 もうすぐ片付くから。 ・・・で、どうしたの? 瑠璃果:洗濯は終わりました。 それでシーツ類はテラスに干すってことでしたので、 そのテラスの場所を・・・ たまき:そうか。 テラスはねぇ・・・ 紅蘭:たまきぃ〜。 コーヒー持ってきてんか〜? むっちゃ濃いヤツ〜。 もう眠くて、ウチ意識飛びそうや〜! たまき:あいよー! ・・・って、いま手が離せないんだけどな。 瑠璃果ちゃん、シーツを干す前に、 紅蘭にコーヒー作って持っていってあげてくれる。 瑠璃果:・・・私がですか? は、・・・はい。 紅蘭:ギ〜リ〜ギ〜リ〜まで〜ガンばあってェ〜・・・ ギ〜リ〜ギ〜リ〜まで〜ふんばあってェ〜・・・ うう・・・あ、あかん。(クラクラ) 根源的爆睡招来体がきそうや。 瑠璃果:(コンコン・・・カチャ) ・・・失礼します。 紅蘭:♪睡魔の〜睡魔の〜睡魔の連続、 そんなとぉ〜きぃ〜 瑠璃果:紅蘭さん? ・・・ヘッドホンで周りの音が聞こえないのか。 もしもし?(ポンポン) コーヒーこちらにおきますね。 紅蘭:ん?ああ、たまきか。 コーヒーおおきに・・・・・・・・・、 え? ・・・え? ・・・・・・えっ? ・・・・・・・・・・・・誰? 瑠璃果コーヒー、熱いので気をつけてくださいね。 紅蘭:・・・はい。 瑠璃果:他に御用はありませんか? 紅蘭:・・・いえ。 瑠璃果:うわぁ〜〜、なんだかすごいですね。 戦車とか、人形とか。 これみんな紅蘭さんが集めたんですか? 紅蘭:・・・ええ、まあ。 瑠璃果:このキングタイガーなんか、すごい造形ですね〜。 装甲板の感じがなんとも・・・・ ・・・あ、すみません。 お仕事の邪魔しちゃって。 頑張ってくださいね。 紅蘭:ぁあ、どうも。 瑠璃果:それでは失礼します。(ぺコリ) 紅蘭:・・・はい。 (パタン) 紅蘭:いま・・・・・・・・・、 眼鏡っ子の、メイドさんが入ってきて、コーヒーを置いていって、 そしてなにげに戦車に詳しかったような・・・。 ・・・・・あのメイドさん、たまきが雇ったんやろうか。 うちらもそんな身分になったんやなぁ。 ふ〜〜む。 瑠璃果:先輩、紅蘭さんにコーヒーを差し上げてきました。 たまき:ありがとー。 助かったよ。 瑠璃果:ちょっとキンチョーしちゃいました。 紅蘭:って、んなわけあるかああああーーーっ! 瑠璃果:ヒャッ? たまき:わっ、なんだ? 紅蘭:(ダダダダダッ、バタン!) たまきぃ〜〜、もうアカンわ! ウチいま、えらいハッキリしたメイドさんの幻覚を見てもうた・・・ たまき:げんかく? 紅蘭:そう、メガネをしたメイドさんの・・・・ たまき:それって・・・・・・ 瑠璃果:紅蘭さん、 ・・・大丈夫ですか? 紅蘭:あっ! ああ、・・・まだ幻覚が見える〜。 たまき:紅蘭。このメイドさん・・・はねぇ 紅蘭:もうあかん・・・・・ 無い物が見え、聞こえないもんが聞こえる・・・・・・ これが噂に聞く人の脳の拡張機能、「萌え」の最終段階、 「脳内」メイドさん? そうか、ウチもついにその能力を・・・・ ああ、こうなったらもう、眼鏡メイドさん一本で行くしかないねん! メイドオンリーの即売会に本を出さなあかんねん! コスプレイベントではメイドさんコスを求めて 会場中をカメラ持ってうろうろせなあかんねん! ほんでメイドさんサイトを立ち上げて「どうじん」と「イベント」に分けて それらをアップせなアカンねん! そして秋葉のメイドさんカフェ、Mai:lishに毎週通わなあかんねん! 「眼鏡っ娘デー」や「ネコミミデー」とかのイベントデーのときは きっと早朝から並ばなあかんねや〜〜! 店内撮影禁止なんはつらいヨなぁ〜! たまき:・・・あの、なに訳のわかんないこといってるの〜? この子は紅蘭の幻覚じゃないよう。 わたしの後輩の子が遊びにきてるの。 その子がエプロンをつけて、たまたまメイドさんっぽい格好になってるだけ。 よく見れ? 紅蘭:・・・え? メイドさん、・・・幻覚やのうてほんまにいてるの? たまき:いてるいてる。 瑠璃果:あの、私いてます。 紅蘭:・・・・・・よかったー。 ウチもう、どないしようかと思ったわ。 「脳内」系はもうヤバイでなぁ。 あれって一人で楽しそうやけどなぁ。 やっぱなぁ。 たまき:・・・・・・やっぱりさぁ、 ちょっと休んだほうがいいんじゃないの? 紅蘭:そうしたいのんはヤマヤマやけど、 まだちょっと仕事あるし、そうもいかんねや。 (フラフラ) ・・・・・・せや、冷蔵庫の奥にドリンク剤が入ってるんや。 そう、今こそあの「力」を借りるとき〜。 たまき:あの高そうなやつ? (バクン) ええと・・・これ? 「神崎製薬サバイブドリンク」(笑) 紅蘭:そう、それそれ。 (キシュッ) んぐ・・・んぐ・・・んぐ・・・ たまき:・・・・・・・・・・・・。 紅蘭:ップッハー! キタキタキタキタ・・・ぃよっしゃあ!(ジャキィーーーン) もうひとふんばり、やったるでぇー! ほなうち、仕事に戻るさかいなっ。 たまき:・・・・・・なんなんだよその効き方。 紅蘭:あ、そうや、 メイドさん? 瑠璃果:・・・・・・わ、私ですか? 紅蘭:ウチ、李紅蘭や。 「紅蘭」て呼んでな。 あんた名前は? 瑠璃果:悠夜瑠璃果です。 紅蘭:ほな、ルリちゃんな。 さっきはコーヒーおおきにな。 瑠璃果:あっ、・・・はい。 紅蘭:もう一息や、バンガロー! 瑠璃果:・・・・・・・・・・・・ えりか:掃除機お持ちしました〜。 破片を吸い込みましょー! えーと、コンセントー、コンセントー♪ たまき:ここだよ。 瑠璃果:じゃあ私は洗濯物を干しますね。 それでその、さっきも聞こうと思ってたんですが、 テラスの場所って・・・ たまき:ああ、私の部屋を突っ切って窓を開けるとテラスがあるんだ。 そこだよ。 瑠璃果:・・・先輩の部屋を通っていくんですか? たまき:そうだよ。入ってすぐに前を通ったあそこね。 ただ気をつけて欲しいんだけど・・・ 電話:ピロロロロロ・・・ピロロロロロロ・・・ たまき:あ、ごめん。またちょっと待ってて。 はいもしもし、寺月・・・・・・ ああっ!宮古さぁ〜ん♪♪ 今、ニュジーランドなの? ・・・うん。・・・うん。 あ、ちょっと待って。 あのさ、えりかちゃんと瑠璃果ちゃん、 悪いけどすこ〜〜〜し、あっちいっててくれるかな? えりか:・・・あ、はい。 瑠璃果ちゃん、行こう。 瑠璃果:ん?・・・・・ん〜〜。 たまき:ごめんごめん、いま後輩が遊びに来ててさ。 宮古:そうか。にぎやかそうだな。 着いて早々だけど、俺は明日からニュージーランド南端の ペンギンのコロニーに行くことになったから。 それで、5〜6日連絡が取れなくなるんだ。 それ先に言っとこうと思って。 たまき:コロニー? 宮古:ああ、繁殖地のことだよ。 俺、野生のペンギンを見るのは初めてだから、 もう楽しみでしょうがなくて・・・。 たまき:楽しみなのはその上ずった声を聞いただけでわかるよ。 はしゃいじゃってさ。 宮古:んじゃ、そういうことだから。 また来週にでも電話するよ。 たまき:えっ?もう電話切るの? 宮古:だって国際電話だもん。 割引とかよくわかんないからそのままかけてるんだよ。 あ、そうだ。 こっちのオフィスに俺用のパソコンを設置してもらってるから、 なんだったらそこにメール送っといてくれよ。 あとでアドレスを書いたメールをそっちに送っておくから。 たまき:私はもっと声が聞きたいのになぁ。 ・・・でも、しょうがないか。 宮古:たった3日前にお別れしたばかりじゃないか。 そのくらい会わないのは珍しいことじゃなかっただろ。 たまき:・・・そうだね。 まだあれから3日しかたってないのに、変だね。 なんでかなぁ。 ・・・なんかさ、いつもだったらしばらく会えないっていっても、 近くにいるんだから会おうと思えば会えるじゃない。 でもいまは距離が離れてるから、そう思ったって会えないでしょ? だから・・・・・・・・・・・うん。 まだ3日間だけど、なんだか寂しいな。 宮古:そうか。 ・・・だからって帰るわけにもいかないしな。 こっちにはとりあえずあと3週間はいることになるから、 それまで待っててくれよな。 たまき:・・・うん、わたし待ってるから。 ごめんね、ここの所私もちょっと忙しくて疲れてて、余裕なくて・・・。 だめだね。 それじゃあ、メールアドレス送るの忘れないでよ? 宮古:わかった。それじゃあな。 たまき:バイバイ。 (カチャリ) えりか:もういいどすか〜? たまき:こんどの電話は来週かぁ。 来週・・・・長いなぁ。 えりか:せんぱ〜〜い? たまき:・・・あっ、もういいよ。 あれ、瑠璃果ちゃんは? えりか:シーツを干しに洗濯物を取り込みにテラスに行きましたよ。 たまき:うそっ、もう行っちゃったの? それまずいよう! えりか:どうしたんですか? 瑠璃果:(ドキドキ) 来たそうそう先輩のお部屋に入れるなんて、 なんてラッキーなんだろう。 どんなお部屋なのかなぁ。(チャッ) 瑠璃果:キャー、入っちゃった〜〜。 瑠璃果、なんだか感激です!!! ・・・って、あれ? ぬいぐるみ? うわぁ、なんか意外。 先輩の部屋って、きっと機能的で、洗練されて、 オトナっぽい部屋なんだろうなって思ってたのに・・・ でも、シンプルで可愛い部屋だなぁ。 クマのぬいぐるみかぁ。 いいなぁ、あんた達は。 ・・・先輩に愛されてるんだよね。(ぽふぽふ) 瑠璃果:うわ〜、すごいいい眺め〜♪ テラスが海の上に突き出してるんだ。 部屋から海が一望できるんだなぁ。 いいなー、わたしも一人暮らししたらこんなところに住みたいな〜。 ・・・風が気持ちいい。 (バキバキィッ!) うわっ!わっ! きゃーーーーっ! たまき:瑠璃果ちゃ〜ん、いる? 瑠璃果:はっ!・・・は〜〜〜〜いっ! たまき:さっき言おうと思ってたんだけどさぁ、 テラスの手すりには気をつけてね。 この間の台風のときに飛んできた木が当たって弱くなってるんだ。 あんまり体重かけると・・・ あっ! 瑠璃果:すみませ〜〜ん!もう壊しちゃいましたぁ! (メキメキメキメキ・・・) きゃっ? きゃあっっ? たまき:ウキャー!危な〜〜いッ!! たまき:瑠璃果ちゃん!引っ張り上げるから手を伸ばして! 瑠璃果:先輩、それ以上来たら危険です! 私のことはかまわずに・・・・ たまき:バカなこと言わないの! ほら、早く! 瑠璃果:でもいま姿勢を動かしてバランスを崩したら、さらに壊れちゃいそうで・・・・ (ギギギギギ・・・バキッ) あうううう〜〜〜 たまき:だからって、ずっとそのままでいられるわけないでしょ? 大丈夫、落ちる前にわたしが引っ張りあげてあげるから! 瑠璃果:はぃぃ〜、 わかりました・・・・ (がっし) たまき:ほら、大丈夫でしょ? 瑠璃果:はいっ! 先輩の手、あったかいです・・・・ それに、先輩が身を挺してわたしを助けてくださるなんて、 瑠璃果はいま、この上ない幸せに包まれています。 幸せすぎて、まるで空を飛んでいるようです。 たまき:・・・そんなことはいいから。 いま引っ張るからね! (メキメキメキ・・・) ヤバイ・・・! 瑠璃果:せ、先輩!? たまき:大丈夫!だから・・・ 瑠璃果:あの、でも、いま「メキメキ」っていったのはこの手摺じゃなくて、 先輩が掴まっているほうの、そっちの手摺ですが・・・ たまき:・・・・・・え?こっち? (メキメキ・・・バキバキバキィッ!!) キャーーーーッ、ほんとだぁ! たまき:取れたーーー! 瑠璃果:うわっ!うわっ! せ、せんぱーーい! 落ちる〜! たまき:きゃーーーー! 瑠璃果:せんぱぁ〜〜い!(がばっ) たまき:こら〜、しがみついちゃダメェ! このまま海に落ちたら溺れちゃうよぉ〜〜! 瑠璃果:わたし泳げないんです〜〜! たまき:あちゃあ〜〜〜! (ドッパーーーーーン) 瑠璃果:すみません。 先輩まで一緒に引きずり落としちゃって。 たまき:あははは。 いいんだよう。 紅蘭:たいした高さやのうてよかったなあ。 たまき:そうだね。 あのテラス、海面までせいぜい2mくらいしかないから、 考えたらあのまま瑠璃果ちゃんが落ちても、たいしたことなかったんだよね。 紅蘭:それやったら、 むしろ、この子が落ちるのんはほうっておいて、 落ちた後で、浮き輪なりで助けたほうがよかったんちゃう? たまき:そんなのその場で判断できるわけないじゃんよー。 助けなきゃって、わたしは必死だったんだから。 横の手摺まで壊れるとは思わなかったし。 紅蘭:・・・ま、せやね。 後から好きなこというてごめんな。 たまき:大屋さんに言って、早いところあの手摺は直してもらわないとね。 紅蘭:ここんとこ忙しくてほったらかしやったからな。 仕事も終わったし、ウチが後で電話しとくわ。 たまき:それより紅蘭、寝たほうがいいんじゃないの? 紅蘭:ん〜、さっきのドリンクのせいか、全然眠ぅないねん。 なんやもう、この先一生眠らんでもやっていけそうなくらい。 たまき:そのうち反動が来るよ〜? えりか:はい、あったかいお茶ですよ〜。 瑠璃果:ありがと〜。 たまき:さんきゅ。 ああ、このセットは割れずに生き残ってたんだね。 えりか:あれ?瑠璃果ちゃんメガネは? 瑠璃果:海に落ちたときになくしちゃった。 ・・・鼻から海水が入っちゃって、まだ奥のほうがツーンって痛いなぁ。 たまき:わたしもだよ。 でもこれは自然に治るのを待つしかないよね〜。 それにしてもさ、服を着たまま泳いだのは初めてなんだけど、 あんなに泳ぎにくいものとは思わなかったよ。 水の抵抗がすごいし、布が手足にからみつく感じでさ〜。 スカートが絡まってバタ足しても前に進まないし 紅蘭:実際に、それでおぼれてまう人もいるって聞いたなぁ。 瑠璃果:すぐに岸でよかったけど、怖かったです。 わたし、泳げないから・・・ たまき:よほど怖かったんだろうね。 瑠璃果ちゃん、岸につくなり私に抱きついてきて、 「ふぇ〜〜〜ん、せんぱぁ〜い」って泣き出しちゃって・・・ えりか:え〜? 瑠璃果ちゃん、泣いたの? 瑠璃果:せ、先輩ひどいですよ〜。 さっき、それは黙っててくださいねってお願いしたのに・・・。 たまき:あっ、そうだったね。 ごめん。 でもあれ、かわいかったよう。 瑠璃果:(カァ〜・・・) ずるいです。 そんなこと言ってごまかすのって・・・・ たまき:ごまかしてなんかないよ〜。 かわいい、かわいい。(なでなで) 瑠璃果:・・・・・・・・・・・・・・。(ドキドキ) たまき:ささ、ケーキ食べよう。 いま切ってあげるからちょっと待っててね。 紅蘭:ちょっと前に冷蔵庫から出しておいたから、 もう硬くないやろ。 ウチが切り分けたるわ。 えりか:ねえ瑠璃果ちゃ〜ん。先輩と仲良くなれてよかったねえ。 瑠璃果:え? えりか:だって、来たばっかりのときはなんだかかしこまっちゃって、 まるで先輩と一緒にいたくないみたいだったもん。 先輩のこと、怖かったの?この間のこと、怒られると思ってた? 瑠璃果:・・・ち、違うよ。 失礼のないように、嫌われたりしないように、 気をつけてただけなんだけど・・・。 えりか:でも、いまはもうそんな感じしないよ。 仲良しみたいだよ。 瑠璃果:そう? えりか:先輩は、あのとおりほんわかした人だから、 変に距離をとらずに、近くにいって本音でお話したほうがいいよ。 ね。えりかはそうしてるよ? 瑠璃果:えりかは、・・・誰にだってそうじゃない。 えりか:あ〜、そうだねぇ〜。 うふふふふ。 たまき:ん?なに? 二人してないしょ話? えりか:先輩と瑠璃果ちゃん、仲良しになったね〜って。 たまき:あたりまえじゃ〜ん。 いまや瑠璃果ちゃんと私は、生死の境を共にさまよったという 固い絆で結ばれた仲なんだから。 ネ、瑠璃果ちゃん。とっても仲良しだよね〜。 瑠璃果:せんぱい・・・・ はいっ! (ああ!来てよかった!来てよかった〜!!) 紅蘭:それってあれやろ? 吊橋効果ちゅうやつ。 ドキドキを共有した人と親密になるっちゅう・・・ たまき:紅蘭君、君はロマンがないねぇ。 仲良しになったなら、きっかけなんかなんだっていいじゃん。 瑠璃果ちゃん、はい、ケーキどうぞ♪ 瑠璃果:ありがとうございます。 これが先輩自ら作られたケーキ・・・・ 瑠璃果、心して賞味させていただきます。 えりか:る〜りかちゃん。 気楽に、気楽に。 りら〜くすぅ〜。 瑠璃果:だって、だって、先輩の手作りケーキだよ・・・? どうしよう、やっぱり食べるのもったいないよ。 ずっと飾っておいたらダメですか? たまき:いや・・・、 食べてもらわないと困るんだけどなぁ〜〜。 はい、(カチャ) 瑠璃果ちゃん、あ〜〜んして。 瑠璃果:はい? たまき:ほれ、あ〜ん? 紅蘭:・・・あんたなぁ。 えりか:ちょぉっと〜、二人とも仲良すぎだよ〜。 瑠璃果:(ドキドキドキドキドキ)あ・・・ あの・・でも・・・・・(もじもじ) あ・・・あ〜〜〜ん。 (来てよかった、来てよかった、瑠璃果しあわせですーーー!) たまき:はいどうぞ。 瑠璃果:あんむにゅ・・・・ん・・・・ん・・・・ とっ!とってもおいしいです・・・ おいしくて、もう死んじゃいそう・・・です・・・・ たまき:あはは。大げさだなぁ。 でもうれし〜♪ そうやって喜んでくれると、作ったかいがあったって思うよ〜。 瑠璃果:(手作りのケーキを、先輩手ずからに食べさせてもらえるなんて・・・ 瑠璃果はもうこの上ない幸せに包まれて、 もう、天にも昇る気持ちですぅ〜・・・) えりか:ああ〜。 瑠璃果ちゃん、鼻の頭にクリームつけてるよ。 瑠璃果:・・・え? たまき:ホントだ。私がつけちゃったんだ。 いま取ってあげるね。 紅蘭:ほい、ティッシュ。 たまき:そんなのいらないよん。 たまき:ペロっ 瑠璃果:ふにゃっ!? えりか:あぁーーーーっ!? たまき:はい、取れました〜♪ 瑠璃果:あ・あ・あ・あ・あ・・・・・・ たまき:エヘヘ。舐めちゃった。 紅蘭:・・・女同士でイヤラシなぁ〜、もう。 たまき:二人は仲良しなんだからいいんだも〜ん。 紅蘭:ようないわアホ。 見てみぃ。 ルリちゃんかて、あきれてモノも言えんようになって・・・・ ・・・ん?ルリちゃん? 瑠璃果:るりか・・・もう・・・・・・・天に・・・昇る・・・(ガクッ) たまき:・・・る、瑠璃果ちゃん? えりか:なんか白いのが2匹降りてきたよ? 紅蘭:うわああああ!なんやっ!! お迎えがきとる! あっちいけ!シッ!シッ!(笑) たまき:キャー!なんでぇ!? 瑠璃果ちゃん逝っちゃダメーーーー! えりかちゃんも引っ張り戻して! えりか:瑠璃果ちゃん戻ってきて〜! エロイムエッサイム〜!エロイムエッサイム〜! 紅蘭:変な呪文唱えるな〜! 瑠璃果:・・・はっ! たまき:あ、もどってきた。 瑠璃果:いま、とっても綺麗な音楽が聞こえてきて、 どこまでも続くお花畑が目の前にこう、ばーーーっと広がって・・・ 先輩にもお見せしたかったです〜! たまき:・・・いいよぉ。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 紅蘭のお仕事も終わったし、明日からはまた普通の日々に戻ります。 ・・・宮古さんはまだしばらく出張から帰ってこないんだけどね。 今日はえりかちゃんと瑠璃果ちゃんのおかげでにぎやかだったからよかったけど、 明日からまた寂しいなぁ。 それじゃあ、おやすみなさい |