9月6日・夜 (水)曇り キャンプ夜の部です。 キャンプに来たら、やっぱりみんなで花火やって〜、歌うたって〜(笑) そのあと、宮古さんと二人っきりでお話〜なんて、定番ですよね。 せっかくキャンプに来たんだから、素敵な思い出いっぱい作りたいな〜 ・・・・・・って、ん? なによ紅蘭。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 紅蘭:たまき、みんなで怪談やるで。(笑) たまき:え? やだよ。 紅蘭:「やだ」やないがな。 夜・夏・キャンプ。 3拍子揃ったところで、やっぱり怖い話やろ。 たまき:もう秋だよう・・・。 紅蘭:細かいこと気にすんな。 嫌やったらさっさと車で一人で寝るんやな。 たまき:そっちのほうがもっとやだ〜・・・ 紅蘭:それはそうと、白石はんどこに行ったんや。 全員揃わんと怖い話始められないやん。 宮古:車から荷物を出したりしてたみたいだけど。 たまき:もうしばらく戻ってこないでほしいなぁ。 白石:(ガサガサ) ・・・お待たせしました。 ささ、怪談始めましょう。 たまき:あぁ〜〜。 宮古:なにやってたんだよ。 白石:別に。 で、誰からやるの? 紅蘭:シライシ君。お先どうぞ。 白石:あれ?紅蘭さん、メガネはどうしたんですか? 紅蘭:いつ寝るかわからんから、もう外してもうたけど。 白石:・・・・・・魅力半減。 紅蘭:なんやって? ほなウチの魅力は、メガネが50%も締めてるっちゅーんかい! 白石:たとえそうだとしても、いいじゃありませんか。 人を好きになるときって、100%好き好きだと余裕がなくって かえってうまく行かないときがありますが、 50%くらいならお互い大人のお付き合いがしやすいってものですよ。 紅蘭:なにが「お互い」やねん! ・・・もうええから、話し始めて。 白石:はい。 ・・・そう、 あれはまだ、僕が学生の頃でした。 念願の自動車免許を取り、中古ですが、はじめて自分の車を手に入れ、 とにかく暇さえあれば乗り回していました。 誰でも、そういうときってありますよね。 ・・・夏休みに入ったある日、僕は一人で一晩中車を走らせ、 そろそろ夜明けという頃、 気がつけばN県とF県の県境の峠道に差し掛かっていました。 近くに高速道路が通っているためか、その峠道は通う車も無い、 どこか寂し気な道でした。 暗い坂を登り、曲がりくねった道を抜けると、 ゆるやかな右コーナーの先にトンネルがあり、 そのコーナーの外側には、車が何台か止められるくらいの駐車場がありました。 長時間のドライブで少し疲れていたので、僕はその駐車場に車を入れたのです。 東の空を見るとだいぶ明るくなりつつあったので、 僕はこの駐車場で昇ってくる朝日を見ようと思ったのです。 そうやって日の出を待っていたのですが、 東の空が明るくなってから実際に日が昇るまでって、 実は結構時間があるのです。 思いのほか待たされそうだと思った僕は、 なんだかのどが渇いてきたなと思いました。 ふと、 振り返ってトンネルのほうを見ると、あるものが目に入りました。 トンネルの上にある林の中に、小さな建物のようなものがあるのです。 そして、駐車場の脇から伸びる、人が一人通れるくらいの細い道を登れば、 その小屋まで行けそうだったのです。 しかしまだ夜明け前の薄暗さなので、それが本当に建物なのか、 他のものなのか、その時はまだよくわかりませんでした。 でも建物だとすると、こういう景色のいい駐車場から伸びる道があるということは、 休憩所かなにかである可能性が高く、 もしかしたらジュースの自動販売機もあるかもしれません。 のどの渇きを癒したかった僕は、その細い道を一人登って行ったのでした。 トンネルのちょうど真上にさしかかると、その建物のようなものが 良く見えるようになりました。 ・・・それは異様な光景でした。 林の中に建つそれは、まるで大型の動物を入れるオリのようでした。 頑丈な金網が何重にも張り巡らされた大きな囲いだったのです。 その金網は高さが2メートルほどもあり、幾重にも重ねられている上、 つる草がその金網を半分ほど覆っているために、 その隙間から中がうかがえないほどのものでした。 ただ、金網の上に屋根が見えており、 中に小屋のようなものがあるのがわかります。 下から見たときは、屋根を含めた金網全体が小屋であるように見えたのでしょう。 中はどうなっているんだろうと、つる草をかき分け、 なんとかして金網の隙間から覗くと、 薄明かりに照らされて見えたのは、飾り気の無いみすぼらしい小屋でした。 あたりはほのかに、なんともいえない動物じみた匂いがします。 この厳重な囲いで外界から遮断されている小屋は、一体何なんだろう。 そして、中には人がいるのだろうか。 いるとすれば、その人は、なぜかくも厳重な金網に囲われているんでしょう。 ふと僕は、話に聞いたことのある”座敷牢”というものを連想しました。 僕がその謎に思いをはせていると、 小屋の反対側で、とつぜんガサガサと物音がします。 それが金網の中なのか外なのか、今いる場所からはわかりません。 その物音が、この囲われた小屋の謎をとく鍵になると思った僕は、 勇気を振り絞り、金網伝いに、音のした金網の裏側に回ろうとしました。 するとその時、昇ってきた朝日の明かりで、 つる草だらけの金網に掛っていた、汚い板が目についたのです。 その板には割としっかりした字で、こう書かれていました。 「危険。このへん、朝夕、熊が出ます」(笑) ああ、囲いの中に危険な何かがいるんじゃなくて、 外に熊がいるから厳重に小屋を囲ってあるんだ、 ・・・・・・と気がついた僕は、次の瞬間、先ほどの物音を思い出し、 来た道を大急ぎで引き返して車に乗ってその場を離れたのでした。 僕の話はこれでお終いです。 たまき:おお〜〜。(ぱちぱち) 紅蘭:途中から、なんかオチがあるとは思ってたけど。 たまき:それってホントにあったことなの? 白石:ホントですよ。 そういう小屋があって、そういう注意書きがあったんです。 それきりそこには行ってないから、その小屋が何の小屋なのか、 結局わからずじまいなんですけどね。 それにあのガサガサいう物音・・・・・・ 紅蘭:かなり危なかったんちゃう? 白石:・・・あれは、霊のしわざかもしれない。 紅蘭:ちゃうやろ!(ビシ) 白石:あんっ。 紅蘭:「あん」とか言うな〜!(ビシビシビシ) 宮古:じゃあ次は、たまちゃんか紅蘭。 俺はその次ね。 紅蘭:ほな、たまきさんどうぞ。 たまき:わたし? ・・・・・・怖い話って、話すのも聞くのも苦手なんだよね〜。 ん〜〜・・・・・・・・・、 そういえば最近怖い体験をしたから、それを話すね。 あれは、私の後輩の弟の子がうちに遊びに来て、 紅蘭と私とその子と3人でかくれんぼをしたときのことです。 「・・・ことです」だって〜。 なんでこういうときって、改まった言葉づかいになっちゃうんだろうね。 白石:些末なことはいいから話に集中し給え。 たまき:・・・は、はい。 ジャンケンの結果紅蘭が鬼になって、私とその子は一緒に隠れることにしたの。 私の部屋の隣にあるウォークインクローゼットの奥に二人で隠れていると、 ふとした拍子に、もたれていた壁がずれて隙間が出来たのね。 壁だと思ってたのは実は引き戸で、 その奥にはいままで知らなかった空間が開けていたの。 そこには地下に通じる階段があって、私とその子と、 二人でその階段を降りて行くと、1枚の鉄製のドアがあり、 それを開けると、そこは何もない地下室でした。 白石:・・・・・・・・・・・・・・・・。 紅蘭:・・・・・・・・・・・・・・・・。 宮古:・・・・・・・・・・・・・・・・。 たまき:・・・・・・・・・これは本当にあった話です。(笑) 宮古:・・・えっ?終わり? たまき:うん。真っ暗で怖かったんだよ〜。 宮古:いや、そうじゃなくて。 たまき:それに、自分の家に知らない部屋があったなんて 怖いと思わない? ・・・怖いでしょ? 白石:場がシラけたところで、次は宮古の番だな。 たまき:白石君ひどい〜。 こうらぁ〜〜ん。 紅蘭:さすがにフォロー不能やけど、ウチが慰めたる。 よしよし。あんときは怖かったんよな。 たまき:うん。 ・・・・・・でも、 あのとき怖かったのって、ほとんど紅蘭のせいじゃなかったっけ。 紅蘭:せやったかなぁ・・・。 宮古:ええと、これは俺の友達の話なんだ。 今はもうそいつとは音信不通で、どこで何をしているのか、 全然わからないんだけど。 あいつもまた白石と同じように、大学に入って車の免許を取り、 車を買って毎晩乗り回してた。・・・赤のロードスターだったかな。 白石:・・・・・・・・・・ああ、あいつね。 宮古:自分じゃいっぱしの気になって、よく女連れて走りに行ったりしていたらしい。 その晩も、奴は彼女を助手席に乗せてある峠に走りに行っていた。 俺も行ったことのある所だから知っているんだけど、 そこは、緩いコーナーの合間に急にタイトなコーナーがあらわれる、 油断できない、とっても走りにくい道なんだ。 その当時、地元の走り屋があまりに事故を起こすんで、地元の要望で 各コーナーのセンターラインにの出っ張りをつけたり、 わざと路面をデコボコにしたりして、 スピードを出して走れないように工事しようっていうことになっていたらしい。 奴が行ったときはその工事が施される直前で、 つまり、事故がもっとも多発している頃だった。 その日は、平日の深夜だからか走り屋の姿も見えず、 奴は自分のペースでコーナーを攻め、 隣にいる彼女をキャアキャアいわせていた。 つづら折りのコーナーをぬけて直線で加速して、 その後に来る急カーブをスムーズにクリアしたときだった。 突然、草むらから若い女が飛び出してきたんだ。 奴は慌てながらもハンドルでかわして、車を路肩に寄せて止めた。 彼女を助手席に残したまま、 飛び出してきたその女の人のところに文句を言いに行くと、 その女の人は倒れて頭から血を流していて、 「たすけて、早く助けて」というばかりだった。 見れば、その女の人が飛び出してきたあたりのガードレールはひしゃげ、 草は折れ曲がり、あたりには割れたガラス片が落ちていた。 奴が「車が下に落ちたのか?」「誰か乗っているのか?」と聞いても、 その女の人はぐったりしたまま「早く助けて」というばかりだったそうだ。 しかたがないので、奴はそのひしゃげたガードレールのところに 歩いて行って下を覗き込むと、 そこは断崖絶壁で、下には真っ暗な闇が広がるばかりでなにも見えなかった。 すると突然、車に残してきた彼女の悲鳴が聞こえた。 振り向くと、さっきまで倒れていたはずの血まみれの女が ものすごい形相で走ってきて、今にも奴を谷底に突き落とそうとしていたんだ。 奴はすんでのところでそれをかわして、一目散に自分の車に逃げ込んだらしい。 エンジンはかかったままだったので、すぐに発進させて、 スピードを上げつつバックミラーを見ると、 その女は、さっきまでいた道路の真ん中に立って、 距離が離れて見えなくなるまで、ずっとこっちを睨んでいたそうだ。 一部始終を助手席で見ていた彼女がいうには、 奴が壊れたガードレールの下を覗き込もうとしたそのとき、 ぐったりしていた女が突然機敏に立ちあがって走って奴に近寄ったので、 思わず悲鳴をあげたんだそうだ。 この話を俺に話したときには、 奴自身「あの女は、幽霊だったのか人間だったのか、結局わかんねぇ」って 冗談めかして言っていたんだ。だけど・・・・・・ あれは、そのことがあってから半月くらいたったときだったかな。 俺と奴が駅のホームで電車を待っているときのことだ。 俺達がいたホームに入って来た電車が、目の前を減速しながら ビューって通り過ぎはじめると 急に奴が顔を真っ青にしてあたりをキョロキョロして、震えだしたんだよ。 「どうしたんだ」ってわけを聞いても、何も答えないんだ。 そのときはもしかしたらふざけているだけかと思って、 それ以上何も聞かなかったんだけど、それから1週間後、 久しぶりに学校に来たあいつは、別人みたいな痩せようだった。 たまりかねて訳を聞くと、俺と一緒に電車を待っていたあの日、 ホームに入ってきて、目の前を通り過ぎる電車の窓に映っている自分のうしろに、 あのときの血まみれの女が立っていたのが見えたって言うんだ。 別に突き飛ばそうとしていたわけではなく、 ただ、口を大きく開けて、目をかっと見開いて、奴のうしろに立っていたらしい。 驚いて振り向いても誰もいない。 もう一度電車の窓を見ても、もうだれも映っていなかったそうだ。 その翌日、一人で同じように電車を待っていると、 うしろには誰もいなかったはずなのに、電車が入ってくる直前、 こんどはいきなり突き飛ばされて線路に落ちそうになったらしい。 それに、一人でいるときには、たまにヒタヒタって足音とか、 突然耳元で「早く助けて」って声が聞こえたりするんだそうだ。 ・・・そのころから奴は、駅のホームはもとより、 階段の上とか、開け放たれた窓とか、 突き落とされそうなところを病的に怖がるようになったんだ。 学校を卒業したきり会ってないけど、あいつ、どうしてるかな・・・。 俺の話は・・・これでお終い。 たまき:・・・うわぁ〜ん、そんなの怖ぁ〜〜い。 紅蘭:はぁぁ〜〜。 こういうの聞くと、いつもなにかが後ろにおるような気がしてきて ちょっと嫌やんなぁ。 たまき:一人のときに鏡を見るのが怖くなったりもするよねぇ。 後ろに誰か立っているのが映っちゃうんじゃないかと思って〜。 ・・・でもその人、大丈夫なのかなぁ。 なんだか心配だなぁ。 宮古:そう?気にすることないんじゃない。 なんたってぜんぶ作り話だし。 たまき:・・・・・・・・・・・・・・・・・・な、 なんだよも〜。 なんだよもーっ!宮古さんのウソツキ〜〜!!(笑) 宮古:なんでウソツキなんだよ。 これはそういう集まりじゃん。 たまき:心配して損した! 宮古:もう心配しなくていいんだから、それでいいじゃん。 白石:次は紅蘭さんですね。 紅蘭:う〜〜ん、アレがええかなぁ。 でも、実際に目にした者でないとわからんやろうしなぁ。 ・・・ジャンポールの恐ろしさは。(笑) 白石:なんですか。もったいぶって。 紅蘭:いや、やっぱりやめとく。 世の中には知らんほうがええこともあるんや。 そうやな〜、中国に伝わる怪異譚なんかええやろ。 ・・・これは中国がいくつかに別れていた頃の話や。 ある時、旅人がある村に立ち寄った。 そこは大河の支流のほとりの小さな村なんやけど、そこでは 山奥の村から届いた珍しい品物がよく売られていたんや。 つまり、川を使って山奥の村と交易してたんやな。 その品揃えは、何か土産になるものはないかと、 みんな街道を外れてわざわざその村に立ち寄るほどなんや。 さて、旅人がその村で珍しい土産を買い、さらに次の村に向かって歩いていると、 道のわきの林の中に老人が倒れて、胸を押さえて苦しがっていたんや。 旅人はとっさに持っていた薬を与え、水を飲ませてやった。 しばらくすると老人の息は穏やかになった。飲ませた薬が効いたんやな。 その老人は、旅人が今通った村に、珍しい品物を売りに行く途中やった。 老人はお礼のしるしに、持っていた中で一番珍しい品物を その親切な旅人にあげることにした。 老人はその品物に「悪さをするんじゃないよ」と言ったあと、 それを旅人に渡したんや。 その品物はちいさな人形やった。 そしてどういう仕組みか、その人形は旅人を見て微笑んだんや。 これは珍しいものを手に入れたと旅人は喜び、 老人に礼を言いそこから立ち去った。 しばらく歩いていると、老人から貰った人形はいきなり喋り出したんや。 「あにさん、この道をむこうから歩いている人がそこで転ぶから、 介抱してあげたらその人はお礼に食べ物をくれるよ」ってな。 旅人はえらい驚いたんやけど、見ているとホンマに向こうからオッサンが来て、 人形がゆうたところで転んで鼻血なんかだしとる。 旅人は、別に人形にいわれたからやないけど、そのオッサンを介抱した。 するとそのオッサンは人形がゆうた通りに、お礼にいくつかの果物をくれたんや。 旅人はその人形が薄気味悪うなって、人形を草むらに投げ捨てると、 一目散に駆け出した。 ずっと走って息が切れたので休んでいると、人形は旅人を追いかけてきて、 「あたしはあにさんに貰われたんだから、あにさんから離れないよ」 て言って、あっというまに旅人の懐にもぐりこんだ。 旅人は逃げるのを諦めて、またしばらく歩いていくと、今度は 「あにさん、この道をむこうから歩いている人は、銭入れを さっきまで休んでいたあの大木のところに忘れてきているよ。 今行けば、銭入れはあにさんのものだよ」と人形が言った。 旅人は人形の言う通りにはせず、向こうから来た人に銭入れのことを教え、 お礼にいくばくかのお金を貰った。 人形はといえば、そんな旅人を見て、最初のときのように微笑むだけやった。 またしばらく歩いて、そろそろ夕暮れ時になると、人形は 「あにさん、この下の川で、もうすぐ子供が溺れるよ。 助けたら、その家で今晩泊めてくれるよ」っていうんや。 旅人が川に降りていくと、友達が溺れたって子供たちが騒いでいたんや。 旅人は、今晩泊めてくれるどうこうなんて関係なく、 川に飛び込んでその子供を助けた。 溺れた子供の親はたいそう感謝して、 人形の言う通りに旅人を家に招待したんや。 ところがその家には年頃の娘がおった。溺れた子供の姉さんやな。 その娘は旅人に一目ぼれして、旅人もまた娘に恋をした。 旅人は一晩だけ泊めてもらうつもりが、何日か長居してしまっていた。 人形は、「あにさん、あの娘はやめたほうがいいよ、 きっとあにさんは不幸せになるよ、あたしと旅を続けなよ」 と言うんやけど、旅人はその声に耳を貸さない。 そのうち、好きな娘のことを悪く言う人形が、旅人にはうるさく思えてきた。 旅人は、ある時人形に「川で舟遊びをしよう」といって誘い、 「あにさんと舟遊びだ〜」と喜ぶ人形を小さな船に乗せて そのまま川に流してもうたんや。 人形の乗った船は、流されてみるみる小さくなっていく。 そしてついには見えんようになった。 それを見送ったあと、 旅人は晴れ晴れとした気持ちで娘に結婚を申し込みにいったんや。 娘はそれを受け、その後ふたりは別に不幸にはならずに、 ず〜っと、幸せに過ごしましたとさ。 ・・・・・・おしまい。 たまき:・・・・・・なんだか怖いよね、 人間て。 そんなことで人形捨てちゃうなんてさぁ。 なんでそんなヒドイことができるんだろう。 白石:かわいそうですよね。 その人形は、きっと旅人のことが好きだったんでしょうね。 宮古:「娘と一緒になると不幸せになる」ってのは、 未来のことが分かる人形の、嫉妬から来る精一杯の嘘だったんだな。 でもそれが裏目に出て・・・。 悲しい話だね。 紅蘭:いや、皆さん・・・? 人形が歩いたり預言したりするんやで? 気味悪うない? なんでみんな、とことん人形視点?(笑) たまき:だって、・・・ねぇ。 白石:一般の人なら気味悪がる話かもしれませんが、 このページに来てくれてる人達なら全員、 ぼくらと同じ感想だと思いますよ。 紅蘭:・・・そうなん? 白石:さってっと、 じゃあまた僕の番ですね。 たまき:えっ? まだやるの? 宮古:おい、そろそろ寝ようぜ〜。 紅蘭:・・・もうこんな時間なんか? アカン。急に眠たなってきたわ。 今日は早起きやったからなぁ。 たまき:寝ようよ〜。 白石:え〜〜、すぐ終わるのにな〜。 宮古:じゃあ、たまちゃんと紅蘭。 このテント狭くて4人は寝れないから、2人は車で寝てくれる? たまき:わかってる。 行こう、紅蘭。 宮古さんも白石君も、また明日ね。 紅蘭:ふぁ〜〜〜〜〜・・・。 ほな、お休みな。 (ドッボーーーーン) 紅蘭:うわっ! ・・・またや。何の音なんやこれ〜。 宮古:さっき言ってた水音ってこれなのか? 魚が跳ねるにしちゃ〜、大きい音だな。 たまき:なんだかわかんない音って気になっちゃうよね。 白石:ああ、知りたいなら教えるけど。 紅蘭:・・・やっぱりなんか知ってるんか。 たまき:白石君、知ってるんだ。 あれ、なんの音なの? 白石:うん。電車の乗り換えのときに、キオスクで地元の新聞を買ったんだ。 それによるとなんでも先週、今いるこの場所の対岸の崖から、 川に身を投げて自殺した男の人がいたんだって。 死体はまだ上がってなくて、警察はいまはもうちょっと下流をさらってるらしいよ。 警官は夜、川に何かが落ちたような正体不明の水音を、 この現場で何度も聞いたんだってさ。 宮古:・・・・・・・・・・・・・・・ここで、自殺者? 紅蘭:・・・・・・・・・・・・・・・この対岸で? たまき:・・・・・・・・・・それ、ホントなの? 白石:やだなぁ、本当だよ〜。 信じられないなら新聞を読んでみるといいよ。 宮古の車の助手席においてあるから。 宮古:そういや、来るとき確かに下流のほうで、 パトカーが川原に何台か止まって何かやってたけど・・・。 白石:自殺者の霊が今もこのあたりをさ迷っているんじゃないかな。 ・・・じゃあ、理由がわかってスッキリしたところで、 二人ともおやすみ〜。 いい夢見れるといいね♪ たまき:み、見れるわけないでしょ〜〜! 紅蘭:いらんこと聞かすな、アホ! 白石:なんだよ、自分達が知りたいって言ったんじゃないか。 それなのにヒドイ・・・。 たまき:もう白石君なんかキライ! んベェ〜〜だ。 宮古さん、バイバイ。 行こう、紅蘭。 紅蘭:おう。 宮古:・・・おやすみ〜。 (バッタン) たまき:またくもー、白石君たらぁ〜〜。 紅蘭:もうさっさと寝よう。 室内灯消すで。 たまき:え〜、ずっとつけとこうよ。 紅蘭:エンジンかけっぱなしならともかく、 そないなことしたら、車のバッテリーが上がってまうやん。 ここから帰れんようになるで。 たまき:あ、そうか。・・・じゃあ仕方ないね。 ・・・紅蘭お休み。 紅蘭:お休み。 (プチッ) たまき:今日はなんだか疲れたねぇ。 紅蘭:朝から晩まで騒いでたからなぁ。 こういう所に来ると、リミッターがはずれるんやろか。 たまき:・・・車ってテントと違って、外が見えるのがヤだね。 こういうときって、見えないほうがかえって怖くないのに。 紅蘭:せやなぁ。 ちょっと窓の外を見たら、見たないもんまで見てしまいそうでなぁ。 あんなハナシ聞いてもうたから、ますますそういう気分に・・・ たまき:あれは聞きたくなかったよう。 死体がまだ見つかってないってのが、なおさら嫌な感じだよね。 紅蘭:ホトケさんには悪いけど、 ウチらが水浴びしてたあたりにおったのかもしれんと思うと不気味で・・・・・・・ たまき:そういえば、変な音したんだよ。 コポコポって。 紅蘭:・・・・・・あれ? なんか変やな・・・・・。 ・・・たまき、室内灯つけるで。 たまき:どうしたの? (プチッ) 紅蘭:もしかしたら・・・・・・。 ・・・これやな、白石はんの言うてた地元の新聞て。 (バサッバサッバサッ・・・・・) (バサッバサッバサッ・・・・・) (バサッバサッバサッ・・・・・) や、やられた・・・・・・、 そんな記事、一個も載ってへんわ。 たまき:それじゃあ白石君の話、 あれウソなの? 紅蘭:嘘っていうか、ネタやってんな。 だいたい死体が上がってないのに、なんで自殺だのここから落ちただの そないな事がわかるねんな。 普通は死体が見つかってからそういう騒ぎになるやろ? たまき:あ、そっかぁ〜。 紅蘭:そういや白石はん、まだ怪談続けたがってたもんなぁ。 これがそのネタかぁ。 あいた〜、まんまとやられたわ。 たまき:くやし〜〜。 ・・・・・・けど、良かったぁ〜。 (コンコン) きゃあっ! ・・・あ、宮古さん。 宮古:今、白石から聞いたんだけど、さっきのあれ作り話だって。 二人とも気にしてるんじゃないかと思って。 紅蘭:ウチらも新聞見て確認できたわ。 白石はんに、「やられた」って伝えといて。 たまき:私、さっき白石君のことキライって言っちゃったけど、 そのこと謝っといて。 宮古:白石は別に気にしてないと思うけど、まあわかった。 あとちょっと悪いんだけど、グローブボックスの中にある懐中電灯くれる? 白石が使うんだって。 たまき:(バコッ) ええと〜、うわっ重たぃ・・・ はい。 宮古:さんきゅ。 じゃあ二人ともおやすみ。 たまき:おやすみ〜。 紅蘭:おやすみ。 紅蘭:ほな、改めて室内灯消すで。 たまき:ちょっと待って。 これなんだろう。 グローブボックスの奥のほうに・・・・・・ 紅蘭:腕時計?・・・にしてはデカイか。 たまき:うわ、ダイコンだ。 紅蘭:ダイコン?・・・って、ゼネプロの? って、ちゃうやろビシ。(一人ボケ突っ込み) たまき:ダイコンてのは、ダイブコンピュータ。 ダイビングのときのデータを記録しておけたり、 潜水中に浮上時間なんかを教えてくれるかしこい奴。 このタイプ、すっごい高いんだよ。 ナイトロックス完全対応型でねぇ・・・・・・ へぇ〜、宮古さんこれ持ってたんだ。 紅蘭:ええの?かってにいじって。 たまき:使い方知ってるから平気だよ。 宮古さんって、どんな潜り方するのかな。 ちょっと見ちゃお。 (ピ、ピ、ピ、ピ・・・) おお〜、一気に30メートルも潜っちゃうんだ。 深いところが好きなのかぁ。 私、ついていけるかなぁ。 紅蘭:たまき〜。 はよう室内灯消さんと。 たまき:ごめん。今しまう。 (バコン) 消していいよ。 紅蘭:(プチッ) おやすみ。 たまき:うん。おやすみなさい。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 いや〜、今日はいろいろあって疲れちゃいましたけど、とっても楽しい一日でした。 「ドポーン」の正体も幽霊じゃないとわかってひと安心です。 ・・・・・・あれ? じゃあ、あの音って一体なんの音なんだろ。 なんとなく気になりながらも、すでにウトウトだった私は そのまま寝ちゃうのでした。 ともかく、おやすみなさい。 キャンプはまだまだまだ続きます。(笑) また明日! |