6月29日(木)曇りのち晴れ

以前私が駅で会った出雲崎ニコさんが占いの店を開きました。
ニコさんから、彼氏とぜひ来て欲しいってうちに電話があり、
面白そうでもあるので、宮古さんと一緒に行くことにしました。
今日はここで待ち合わせ。
もう少しで約束の時間なのですが・・・・・・・。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


たまき:晴れてよかったなぁ。
    ここんところ、雨ばっかりだったもんね。
着メロ:ピ〜ロリロリ〜、ピロロピロ・・・
たまき:あ、宮古さんからだ。(ピッ)
    あいあ〜い、どうしたの?
    遅れる?
 宮古:そのとおり。ごめん。
    いま車に乗るところだから、あと30分くらいかな。
    どこかで時間つぶしててくれる?
たまき:もー、君はしょうがない奴だなぁ〜。
    じゃあ30分後に約束の場所でね。
 宮古:いつもすまないねぇ。
    じゃ。
たまき:まってるよん。

待ち合わせ場所

たまき:あふぅ〜〜。
    30分間どうしようかな。
    そこのお店でピアスでも見てこうかな〜。
着メロ:ピッピピ〜、ピ〜ロ〜リ〜、ピッピピ〜、ピ〜ロ〜リ〜
たまき:あれ?・・・・・・知らない人からだ。
    誰かな。
(ピッ)
    もしもし?
 声 :寺月さんらカ?
たまき:ハイ、そうですけど。
    ・・・・・・「らか」って、ニコさんですか?
 ニコ:繋がった繋がった!
    リコ、通じたろゥ。
たまき:あの〜、
    私、ニコさんに携帯の番号を教えた覚えないんですけど・・・。
 ニコ:オレも聞いた覚えないテ。
たまき:じゃあ、いったいどうやって?
    家の電話番号といい、今度といい。
 ニコ:な〜に、簡単なことろゥ。
    まず目を閉じてな。
たまき:はぁ。
 ニコ:ダイヤルボタンをピポパって適当に押すガ。
    3回くらいで、かけたい相手に繋がるが〜ヨ。
たまき:・・・・・・んな、まさか。
 ニコ:でもちゃんと繋がって、こうやって話してるねっかネ。
たまき:え?じゃあホントに適当に!?
 ニコ:こんがん(こんなの)序の口らヨ。
    インターネットなら検索エンジンいらずの・・・・・・
    
(ん?なにリコ。・・・わかってるって。)
    なー、今日こっちに来るが〜ろゥ?
たまき:ええ。お約束通り。
    ただ、予定より30分ほど遅れそうですなんけど。
 ニコ:どうしたガ?
たまき:彼氏が遅れてくるんです。
    あとで一緒にお伺いしますね。
 ニコ:(彼氏、遅れてるって)
 リコ:(その方が好都合かな)
 ニコ:(・・・そうらネ)
    寺月さん。
    その彼氏はいいスケ、
    とりあえず、あんただけこっちに来なセ。
たまき:え〜、でもぉ・・・・・・
 ニコ:大丈夫らって。
    店のある場所、わかってるがか?
たまき:いえ、電話で聞いた、そこの住所しか・・・・・。
 ニコ:ん〜と、右見てみた。
    ず〜っと先に、黄土色したマンションが見えるろ?
    そこの206号室らスケ。
    わかった?
たまき:わかりました。
 ニコ:じゃあ、待ってるッケ。
たまき:はぁ〜い。(ピッ)
    ふぅ〜ん。あのマンションかぁ。
    ・・・・・・あれ?
    電話で話しているのに、私が右を向くとそのマンションが見えるって、
    なんでわかっちゃうの?
    っていうか、私が今いる場所も知らないはずでしょ?
    ・・・・・・きっとニコさんには、わかっちゃうんだなぁ。
    しょうがない。一人で行くか。
    宮古さんには30分後に電話入れよう。


たまき:206号室・・・・・・イズモザキ便利店
    うせもの、ペット捜索はお任せ!
    本当にここだよ〜。
    あんな案内でちゃんと来れちゃった。
    ・・・はじめてくるところのチャイムを鳴らすのって、
    なんだかキンチョーしちゃうよね。
    
(ピンポ〜〜ン)
 リコ:はぁ〜〜い。(ガチャ)
    あう、寺月さん、いらっしゃいませ。
    どうぞ。
たまき:お邪魔します。
 リコ:スリッパはこれを使って。
たまき:はい
 リコ:そこに座って待ってて。
    お姉ちゃんを呼んでくるから。
    おねえちゃ〜〜ん!
(キィ、・・・バタン)

たまき:占いのお店って聞いてたからどんなかと思ってたけど、
    便利屋さんの事務所か物置みたいだね。
    これってどういうこと?

ここホントに占いの店ですか?

たまき:なんか変だなぁ。
    ・・・・・・一人で来てよかったのかなぁ。
    私一人のほうが好都合、とか電話で聞こえたし。
    宮古さんに電話しておこうかな・・・・・・。
    (コンコン)
    ・・・はい。
 ニコ:お〜〜。
    寺月さん、久しぶりらねっかネ〜。
たまき:どうも。
 ニコ:いまリコがお茶入れてるスケ、
    まあ、ゆっくりしてて。
    ん?
    ・・・・・・どうしたが?
    浮かない顔して。
    なにか気になることでもあるがか?
たまき:気になるっていうか、その〜・・・・・・
 ニコ:そうらねぇ。
    これからタ○ラはどうなるんかねぇ。
    やっぱり、バ○ダイみたいにエグい商売しないと駄目なんだろっか。
たまき:いや、それはそれで気になりますけど、
    そうじゃなくって・・・・・・・
 リコ:お茶入れてきたよ。
    ハイどうぞ。
    お姉ちゃんも、ハイ。
たまき:あ、すいません。
    いただきます。
 ニコ:ここのチョコケーキ、がった美味しいがぁヨ〜。
    食べてみタ。
たまき:そうなんですか。
    どれどれ。
 リコ:寺月さん、あのさ、
    こんな事言うのもなんだけど、
    今の彼氏とは別れたほうがいいよ。
たまき:そうなんで・・・・・・・・・・・
    
ごっ、ごほっ!
    ・・・・・へ?

別れたほうがいい?

 リコ:余計なお世話かもしれないけど、
    それがあなたのためだからさ。
    ああいうのと付き合っているとろくな事にならないよ。
たまき:・・・それ、どーゆー意味ですか?
    宮古さんが、一体なんだっていうんです?

 リコ:まあ、あなたがそういうのも無理ないけど。
    順を追って話すわ。
    前にお姉ちゃんと会ったときに、「見て」もらったでしょう。
    あなたの事やお友達や、彼の事を。
たまき:・・・ええ。
 リコ:お姉ちゃんは、お姉ちゃんが頬に手を当てている人が、誰かを意識すると、
    その意識のリンクをたどって、その誰かが見ているものが見えるの。
    お互いの気持ちが近いほどはっきりとね。
    その人の、そのときの感情も、ぼんやりとわかるらしいわ。
    さっき、待ち合わせ場所からここまでの道のりを、
    電話で道案内したでしょう?
    お姉ちゃんはあなたに電話しながら、あたしの頬に手を当てていたの。
    あたしは寺月さんを意識して、お姉ちゃんはそれをたどって、
    寺月さんが見ているものを見て、指示をしたわけよ。
たまき:確かに、あの指示でちゃんとここに来れましたけど・・・・・・。
    でも・・・・・・

 リコ:ちょっと信じられない?
    あたしはもう、ちっちゃい時からお姉ちゃんと付き合ってて、
    嫌というほどこの能力の確かさを思い知らされているから、
    いまさら疑わないけど。
    でね、本題に戻るけど、前に「見た」とき、
    お姉ちゃんは、あなたの意識を通じて、
    宮古って人の見ている状景を見たの。
    彼はその時、ある作業をしていて、
    それに没頭しているように、
    お姉ちゃんは感じたらしいわ。
たまき:作業?
    宮古さんが何をしているところを見たんですか?
 リコ:あれはヤバイよ。
    多分、ヤクがらみだね。
たまき:・・・ヤク?
 リコ:そう。
たまき:チベットにいる毛の長い牛みたいな・・・?
 リコ:違うって・・・・・・
    屋久島のヤクとも、役者のヤクとも、ヤクルトのヤクとも、
    ヤクトミラージュのヤクとも違う!(笑)
    麻薬・覚醒剤・ドラッグとかのこと。
たまき:麻薬?宮古さんが?
    もー、何を言い出すのかと思えば。
    冗談でしょう?
 リコ:お姉ちゃん、話してやって。
    あのとき、お姉ちゃんは何を見たのか。
 ニコ:・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
 リコ:お姉ちゃん。
 ニコ:・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
 リコ:お姉ちゃん、
    ケーキ食べてないでさ。
 ニコ:・・・・・・んぐんぐ。
    ぷは〜〜。ハイハイ。
    オレが見たのはね、魚の中にクスリを押し込んでいる作業。
    一匹一匹、丁寧に薬を仕込んでいたが〜ヨ。

たまき:・・・・・なぁんだ〜。
    宮古さんは水族館に勤めてるんですよ。
    それって、魚に餌かなにかをあげてたんです。
 ニコ:死んでる魚に?
    クスリを入れるのも、口じゃなくてエラの隙間かららったヨ。
    エラの隙間から指を入れて、おなかのほうにクスリを押し込むガ。
    何匹も何匹も。
 リコ:だから餌なんかじゃないよ。
    ・・・・・・しかしそうか。
    水族館なら魚も大量に手に入るし、
    なにかと都合がいいかも。
    ブローカーから大量に仕入れたクスリを、
    そうやって魚に仕込んで何食わぬ顔で、
    あるルートに流通させる・・・・・。
たまき:ちょっと!
    いいかげんにしてください!
    そんなあやふやな根拠で、宮古さんを犯罪者扱いするなんて。
    そんなの、ひどいじゃないですか。
    今日私達を呼んだのは、それを言うためなんですか?
 リコ:そうだよ。
    知っちゃった以上、ほっとけないとから。
    あなたの彼氏を呼んでハッキリさせようと・・・・・・
たまき:わたし・・・、
    わたし帰ります。
    ケーキ、ご馳走様でした。
    それじゃあ。
 リコ:あんたもわからずやだなぁ。
    じゃあ、お姉ちゃんの見たのは何だって言うんだよ。
    死んでる魚に薬物を隠しているんだよ?
    説明してみなよ。
たまき:それは・・・わかんない。
    でも、宮古さんが麻薬に関わっているなんて思えないもん。
    それに、見た見たっていうけど、
    それって本当に見たわけじゃないんでしょう?
    私、やっぱりそんな能力信じられないし・・・・・・。
 ニコ:寺月さん・・・・・・。
 リコ:あんた、お姉ちゃんの指示でここまで来れたじゃない。
    それでも信じられないの?
    お姉ちゃんの千里眼は、あんたも体験済みでしょ?
たまき:そんなの・・・・・・簡単です。
    わたしが待ち合わせ場所でニコさんと電話をしているとき、
    ニコさんはここじゃなくて、私のすぐ側にいたんです。
    隠れて、私を見ながら電話で道案内をしていた。
    さも超能力で私を案内しているように見せかけるために。
    携帯の番号も、どうやってか、あらかじめ調べておいたんでしょ。
    そのあとニコさんは私のあとからついてきて、、
    私が事務所に通されたあとにここに入ってきて、
    リコさんが呼びにいった後で私の前に現れた。
    まるでずっと前からここに居たように。
    でも本当は、私がここに着いたとき、ニコさんはまだいなかったんです。 
    ・・・そうじゃないんですか?
 リコ:やれやれ。
たまき:何が目的か知りませんけど、
    そうやって私を騙して、いったいなにを・・・
 ニコ:・・・・・・・・・・・・。(⌒ー⌒)にっこり
たまき:なに・・・・・・微笑んでるんですか?
 ニコ:・・・・・・電話。

たまき:え?
 ニコ:電話らヨ。
着メロ:ピ〜ロリロリ〜、ピロロピロ・・・
たまき:(ビクッ)
    ・・・・・・・・・・・・・・うそ。
    
(ごそごそ)
    宮古さんからだ。
(ピッ)
    もしもし?
 宮古:・・・いま、待ち合わせの場所に着いたところ〜。
    遅れてごめんな。
    たまちゃん、どこに居る?
たまき:私はぁ・・・・・・その場所からねぇ、
    ええ〜〜っと、
    
(ふわっ)
    あっ。

センリガン

 ニコ:よく見えるのゥ・・・・・・
    左斜め後ろを向かせてみタ。
たまき:ニコ・・・さん?
 ニコ:(にっこり)
たまき:・・・・・・左・・・斜め後ろ。
    見て。
 宮古:この辺にいるの?左ナナメ後ろ?
    ・・・ああ、見たよ。
    たまちゃん、どこさ?
 ニコ:場所が悪いのゥ。
    パチンコ屋の看板に隠れて、このマンションが見えないスケ、
    1メートル左に動いてもらって。
たまき:宮古さん、
    1メートル左に、動いてみて。
 宮古:・・・なぁ、なんの遊び?これ。
    たまちゃん、どこに居るんだよ。
    遅れたのは謝るからさ、
    あんまりからかわないで・・・・
たまき:いいから。
    おねがい。左に1メートル。
 宮古:・・・・・・はいはい、1メートルね。
    動いたよ。
 ニコ:・・・・・・まだ、動いてない。
たまき:宮古さん、
    本当は、まだ動いてないんじゃない?
 宮古:・・・・・・んもー、それがわかるって事は
    やっぱりそのへんに居るんだろ?
    たのむから出てきてくれよ。
    俺が悪かったって〜。

 ニコ:(ニカ〜ッ)(⌒▽⌒)
たまき:ニコさん、・・・私あの、
    さっき・・・・・・
    ひどいこと・・・・・・
 ニコ:(にこにこ)
たまき:・・・・宮古さん。
    左に1メートル動いたらきっと、・・・じゃなくて必ず、
    パチンコやさんの看板の影から
    ず〜っと先に、黄土色したマンションが見える。
    そこの206号室に私はいるから来て。
    わかった?
 宮古:黄土色?・・・・・左に1メートル動いて、と。
    ああ、あったあった。あそこの206号室?
    でもそこに居るって、じゃあ、いま後ろ向けだの左行けだの・・・・・・
たまき:待ってるね。じゃあ。
    
(ピッ)
    あのあの・・・・・・ニコさん、
    ごめんなさい。
    私さっきひどいこと言っちゃって、
    なんていったらいいか、
    その・・・・・・・・
 ニコ:いいテ。
    ・・・慣れてるスケ。
たまき:・・・・・・・・・ニコさん。
 リコ:わかってくれたみたいね。
    しかしそうなると、
    今の彼氏はやっぱりヤクの売人ってことね。
たまき:それは・・・・・・。
 リコ:まあ、それはその彼がここに来ればわかる。
たまき:やっぱり、ニコさんが宮古さんを「見る」んですか?
 リコ:お姉ちゃんは男を直接「見る」ことはないんだよ。
 ニコ:・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
たまき:男の人だと、ダメなんですか?
 リコ:・・・大人になっていくと、
    人は周囲に合せて自分を作っていくことを覚えるよね。
    まわりとうまくやっていくために、自分でも気がつかないうちに、
    自分の本当の気持ちを押さえ、周りが望む自分を演じてしまうの。
    その方が生きていく上では楽だからね。
    まぁ、本当の気持ちなんていうと、なんだかピュアなものみたいだけど、
    ようするに欲望丸出しの気持ちってことだから。
    そうゆう欲望を、お姉ちゃんは、
    その人の頬に手を当てるだけでわかっちゃうの。
たまき:じゃあこの間、わたしのことを「本当は誰かに甘えたがっている」
    っていったのは、そういう・・・・・・
 リコ:それがあんたの無意識の欲望、
    って事ね。
    でもねぇ、男はさ。
たまき:男は?
 ニコ:・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
たまき:・・・・・・・・・・?
 リコ:まあ、真実にたどりつく道はひとつじゃないから。
たまき:・・・はぁ。


チャイム:(ピンポ〜〜ン)

 リコ:来たな。
    寺月さんとお姉ちゃんは、そこで待ってて。
    
はぁ〜〜い。(パタパタパタ・・・・)
    (ガチャン・・・キィ)
    いらっしゃいませ〜♪
 宮古:あの、すいませんけど、
    ここに寺月っていう子、来てますか?
 リコ:はいはい。宮古さんですよね。
    あなたのこと、お待ちかねですよ。
    ささ、どうぞ。
 宮古:じゃあ、おじゃまし・・・・・
    いっ!
いててててっ!!
    イキナリなにするんだよ!?
    腕折れる!

たまき:宮古さん!?
 ニコ:まあまあ。
    リコちゃんはああいう荒事は得意らスケ大丈夫。
    ちゃんとチカラかげんも心得てるがぁヨ。
たまき:あなたたちって・・・・・・

 リコ:じたばたすると、本当に折るよ。
    おとなしく歩きなさい。
 宮古:わかった。わかったから・・・痛てて。

いやぁ〜ん、なにすんの

 宮古:あっ、たまちゃん!
たまき:宮古さぁん・・・・・・
 ニコ:まあ、座ってて。
 宮古:大丈夫か?
    
なんもされてないか?
たまき:うん。
    おいしいケーキをごちそうになってたよ。
 宮古:あ、・・・そうなん?
    とにかく、無事で良かった。
    おいおい、
    あんたら、一体なんのつもりなんだよ。
 リコ:まずこっちの質問に答えてもらおうかな〜。(ギリギリ)
 宮古:いっ、痛いってば。
    はいはい、もう何でも聞いて。
たまき:・・・真実にたどりつく道はひとつじゃないって、
    ああいうことですか?
 ニコ:そう。拷問とか。

 リコ:単刀直入に聞くけどさ、
    あんた麻薬の売人だろ。
 宮古:な、なんの話?
    
・・・いてててて!
    知らないってぇ!
たまき:ちょっとリコさん。
    私が聞くからそんなことやめてください!
    宮古さん、話すと長くなるけど、
    この人達、宮古さんが死んでいる魚に、クスリっていうか、
    薬物を隠しているところを見たっていうの。
    それって何なの?
    なんでそんな変なことしてたの?
 リコ:魚の腹の中にクスリを仕込んでただろ?
    一匹一匹。
 宮古:・・・・・・ああ、あれか。
    毎日やってるよ。
    一匹一匹、エラの隙間からな。
    手間のかかる作業だよ。
たまき:・・・・・・・・・・・・・・・・・。
 リコ:よしよし。
    んで、それをどうするの?
    どういうルートで流すんだ?
 宮古:地下通路を通って・・・
 リコ:それで?
    駐車場に車が待ってるの?
 宮古:ペンギンのプールの裏に回って、ペンギン達にあたえるんだよ。
 リコ:・・・・・・・・・は?
    麻薬を?
 宮古:あんなぁ〜〜、
    なに勘違いしているか知らないけど、
    あれは麻薬なんかじゃなくて、ビタミン剤やカルシウム剤!
 リコ:・・・なんでぇ?
 宮古:水族館で使われる餌の魚は、寄生虫を殺すために
    必ずいったん冷凍にするんだ。
    生きている魚を餌として与えることは、原則としてない。
    だが鮮度の落ちた魚は栄養に欠けるし、
    それに養殖魚と天然物の違いもある。
    だからそういうクスリを餌に仕込んで、
    必要な栄養を補っているんだよ。
    だいたいいつ見たのか知らないけど、
    麻薬だろうがなんだろうが、むきだしのまま魚の中に入れるわけないだろ?
    ああいうのは、袋とかに入れておくんじゃないのか?

 リコ:・・・・・そのまま入れてた?
    お姉ちゃん。
 ニコ:うん。
    オレ、袋とか、そんガこと言ってないろ?
 リコ:な・・・・・・・・・
    なぁ〜〜んだぁ。
    じゃあ、麻薬なわけないじゃんねぇ。
    ヤダ、 あたしったら早とちりしちゃった。

    イケネーッ!
 宮古:あの〜、さっそくですけど、
    ボクの腕、放してもらえません?
 リコ:あっ、あらあら〜。ごめんねぇ。
    いや、ちょっと痛かったかもしれないけど、
    こうすると腕から肩にかけての筋がのびて、
    コリがほぐれるのよ〜。
    ホレ、なんだか肩が軽くなったでしょ、お客さん。
 宮古:そういえばそんな気も・・・・・・(笑)
    って、
    
アンタなぁ〜〜!
たまき:宮古さん、怒っちゃだめ。
    悪気があってやったわけじゃないんだから。
    誤解だったんだからさ。
    ね?ね?
 宮古:たまちゃんがそう言うなら、
    まあ、しょうがないか。
    二人とも、反省してるんだろうな。
    いくら悪気がないとはいえ・・・
 ニコ:あははははははっ。
 リコ:なっ、なによ、お姉ちゃん。
 ニコ:・・・あ、ごめんね。
    思い出し笑いしちゃった。
    いいから話続けてて。
 宮古:人の話聞けよ!
 ニコ:だって、昨日のドラマが・・・・・・
たまき:ええとね、宮古さん。
    こちらが出雲崎ニコさん。
    こちらがニコさんの妹の、リコさん。
    ニコさんが、あの千里眼の持ち主なの。
 宮古:・・・・・・・ほぉ。

たまき:さっき電話したときには、宮古さんの見ているものが
    ニコさんにも見えていたんだよ。
 宮古:なるほどね。
    だからさっきはあんなふうに右だの左だの、
    そこにいるように指示できたのか。
    千里眼って本当にあるんだ。
    へぇ、すげえな〜。
たまき:あ、もう信じた。(笑)
 リコ:あんたが説明したからだろ。
たまき:・・・・・・そ、そうか。
    
          ・
          ・

誰も悪くないのよ

 宮古:・・・ようするに、たまちゃんを悪い男、つまり俺から守ろうと、
    わざわざ手間をかけてくれたのか。
    ・・・いや、さっきは悪かったね。
    俺やたまちゃんは、礼をいう立場のようだな。
    どうもありがとう。
たまき:そうだね。結果的にはアレだったけど。
    二人ともありがとう。
 リコ:いや、そう素直にこられるとこっちも照れるっていうか・・・・・・
    あたしこそ、手荒なまねしてごめんね。
 ニコ:オレも、今度からもうちょっと気をつけますテ。

たまき:あのさ、せっかくだから宮古さんも、
    ニコさんに「見て」もらったら?
 リコ:だからお姉ちゃんは男は「見ない」んだってば。
たまき:あ、そうか。
 ニコ:・・・」いいわ。見てやるろ。
 リコ:お??
    ・・・お姉ちゃん??
 ニコ:あんたはなかなかいい奴みたいらし、
    もしかしたら、・・・あんたらったら、
    オレも大丈夫かもしんないスケ。

 リコ:(・・・お姉ちゃん、こいつを気に入りかけてる?)
たまき:宮古さん良かったね〜♪
 宮古:じゃあ、おねがいしようかな。

 リコ:お姉ちゃんがあんたの頬を両手で挟むから、
    その間、心を落ち着けて、透明な気持ちで。
 宮古:わかった。

たまき:宮古さんの本当の気持ちってどんなかなぁ。
    私ね、あの人に少年ぽいところを感じるんですよね〜。
 リコ:う〜ん、それはどうかな〜♪

 ニコ:じゃあ、行くろ?
 宮古:はい。
    (ふわっ)

手

 宮古:(うわ〜、柔らかい手・・・・・・)
     (子供みたいだけど、俺と同い年くらいだって言うし・・・)
     (よく見るとけっこう美人だなぁ)

その唇

 宮古:(柔らかそうな唇・・・・・・)
     (ほのかにシャンプーの甘い匂いがする・・・・)

その胸元

宮古:(いかん、透明な気持ちで・・・・・・・・・)
    (透きとおった気持ちで・・・・・・・・・・・・・・・・)

いつまで見てんねん

宮古:(あれ、何で俺こんなとこ見ちゃってんだろう・・・・・・)

 ニコ:やっぱりイヤァ〜〜っ!!
 リコ:お姉ちゃん。
    やっぱりそうだろ?
 ニコ:なんで?
    なんで男ってみんなイヤラシイがぁ?
    すぐ胸とか見るし、エッチなことばっかり考えて〜。
 リコ:いいかげんに諦めなよ。
    そういうもんだって。
たまき:・・・・・・宮古さん、そうなの?
 宮古:あのあの、いや、
    顔を見つめるのもハズカシイし、
    そうやって視線が下に降りていくと、こう、
    吸い寄せられるように胸に・・・・・・なに言ってんだ俺。(笑)
 ニコ:あんたらったら大丈夫かも、って思ったのに!
    なーも、他の男と一緒ろゥ!ヘンタイ!
 宮古:そこまで言う?
 リコ:お姉ちゃん、何人もの男の人のピュアな気持ち(笑)を見て、
    どんどん潔癖になって、男嫌いになってるんだよね。
 宮古:でもそりゃ、しょうがないよ。
    ニコさんみたいな綺麗な人に顔をこう抱えられて、
    じっと見つめられたら、
    多少なりともそういう気にならないほうが、男としては変で・・・・・・
    つーか、ちょっと胸見ただけじゃん。
 ニコ:それがイヤらって言ってるがあテ〜。
 宮古:そんなぁ。
たまき:・・・・・・どうせ私はタヌキ顔さ。
    いいもん。
 宮古:・・・たまちゃんまで何?
たまき:別に。
    綺麗な人に顔を抱えられて良かったね。
 宮古:なに妬いてんだよ。
    いや、たまちゃんだって綺麗だって。
たまき:じゃあ、私といるとき、いつもイヤラシイこと考えてたの?
 宮古:そんなワケないだろ。
    俺はそういう男じゃないよ!?
 リコ:おかしいじゃん。
    綺麗な人にはそういう気になるのが普通なんだろ?
    ねぇ。
たまき:(こくこく)
 宮古:だからそれはそれ、
    これはこれで〜・・・・。
    
ああ〜もう、勘弁してよ。
    
俺こういうの苦手なんだよ〜!
 リコ:あはははは。
    めっしぇ〜♪(面白い〜)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

最近リコさんの「イズモザキ便利店」は、ニコさんの千里眼を使って、
失せもの探しや、迷子のペットの捜索をしているそうです。
ニコさんは占いもするけれど、普段はそっちがメインのお仕事で、
だから部屋の中は占いの店というより、ただの事務所兼倉庫みたいだったのね。
ニコさんのあの能力、羨ましいけど、
でも持っていると大変なことも多いみたい。
人と違うって、孤独なことなのかもしれないなぁ。
・・・なんて思いました。

それじゃあ、おやすみなさい。

   
 



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