12月16日(木)晴れ 今日はダイナソーバレーというところに、 宮古さんに誘われて一緒に行きました。 ここは恐竜の化石がよく見つかる日本でも珍しい地域で、 専門の研究所もいくつかあります。 宮古さんのお友達がその内の一つに勤めていて、 私達にとても珍しいものを見せてくれるそうなのです。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 宮古:ああ、ここだよ。 白石の勤めている研究所兼、博物館。 たまき:白石さんって、どういう知り合いなの? 宮古:高校の時の同級生でさ、昔よく一緒に遊んだよ。 2人で海に行ったり山に行ったり。 と言っても、海では磯の生物を採取したり、 山では崖を調べて化石がないか探したり、 部活もしないでさ。 ちょっと普通と違う高校生活を送ってたな。 たまき:宮古さんって、そんなだったんだ。 体つきがいいから 何かスポーツでもやっていたのかと思ってたけど。 宮古:昔はひょろひょろっとした体格だったんだよ。 体が鍛えられたのは、卒業してからかな。 たまき:わぁ、すごい・・・・・・。 宮古:いつ見ても見事な化石だなぁ。 手前はマイアサウラ。 子育て恐竜だよね。 奥はT−REXだ。 たまき:てぃーれっくす?ミュージシャンの? 宮古:ティラノサウルスのことだよ。 ジュラシックパーク見た? たまき:あ〜、あれ。 大きいね〜。 それにあの出刃包丁みたいな牙・・・。 本当にあんなのがいたら怖いな〜。 宮古:本当にいたんだってば。 たまき:・・・あ、そうか。 宮古:3メートルくらいのワニでも相当の威圧感があるんだから、 生きてるT−REXが実際に目の前にいたらもう、腰抜けるだろうね。 たまき:そうだね。骨で良かった。 ・・・それにしても、誰もいないね。 宮古:今日はここ休館日、休みの日だからね。 門のところに書いてあったじゃん。 たまき:本当に、勝手に乗り越えて入ってきて良かったの? あとで怒られたらやだなぁ。 宮古:勝手じゃないよ。白石からちゃんと許可貰ってんだから。 ダイジョブ、ダイジョブ。 それより奥に行こう。 もっと化石があるんだ。 たまき:男の人って、あういう恐竜とか、好きだよね。 宮古:まあね。 こんな生き物が大昔に、この地球で生きていたかと思うと、 なんかワクワクするっていうか・・・太古に思いをはせる・・・・・・ あ、・・・・・やっぱりつまんなかった? 女友達に話したら、「あんなトコに女の子を連れて行くなバカ」 って言われたよ。 あいつの言う通りだったかな。 たまき:そんなことないよ。 ただ、宮古さんの楽しそうなのを見ていると、 私の楽しみ方とは違うなって思って。 宮古:こういうの見ているとさ、 むかし白石と山を駆け回ったときのことを思い出しちゃうんだよ。 懐かしいなって・・・・・・お? たまき:・・・・・・どうしたの? 宮古:今、なんか足元が揺れたような。 地震かな。 たまき:今はもう・・・揺れてないよね。 私は気が付かなかったな。 宮古:じゃあ、俺の気のせいかも。 ここがメインの展示室。 いろいろあるだろ。 これメガロサウルスの頭だって。 お?あれは新しい展示物かな。 たまき:あ、すっごいリアル。 骨だけじゃなくて 皮膚まで復元してあるんだ〜。 宮古:きっと展示用のロボット恐竜だよ。 ほら、手が動いてる。 子供の頃、恐竜博とかいうイベントによくあったなぁ。 いつも決まって、T−REXとトリケラトプスの対決が再現されるんだ。 ・・・あのロボットはあとでゆっくり見よう。 このカモノハシ竜ってさぁ、クチバシがカモみたいだよね。 奥歯が密生してて、これで草をかみつぶすんだ。 恐竜って、つくづく今いる動物とは異質だよなぁ。 たまき:(つんつん) 宮古:ん? なに?なんか面白いものでもあった? たまき:あのロボット恐竜、 さっきよりもこっちに近づいてないかな。 宮古:そんなバカな・・・・・・ おお、姿勢を低くして、今にも飛び掛かってきそうな・・・・・・ 恐竜:ゲルルルルルルルゥ 宮古:・・・・・・と、飛び掛かってくる・・・のか? たまき:まさかとは思うけど、 あれ、生きてる? 宮古:しかもあれ、肉食恐竜みたいな・・・ たまきさん。 たまき:はい。 宮古:今来た道を戻ろうか。 全力で。 たまき:・・・そうね。 恐竜:グゥフッ!(ドスッドスッドスッ) たまき:わぁっ!来たぁ〜〜!! 宮古:逃げろ〜〜! たまき:宮古さん、早く!! 宮古:(走るの速え〜〜) 俺のことはいいから、先に逃げろ! たまき:そんなこと、できるわけないでしょっ! あっ、こっちこっち!この部屋! 宮古:よしっ! 恐竜:ゲフッ、ゲフッ(ドスッドスッドスッ) たまき:早く、早く〜! 追いつかれる〜! 宮古:うわぁあ〜〜〜〜〜っ! ッセーフ! たまき:えいっ!(バタンッ) 恐竜:ガロロロロゥ(ドッスン) 宮古:・・・た、・・・助かったぁ 恐竜:ガウォォォオオオッ(ドッスン) たまき:宮古さん、このドア壊れそうだよ〜。 宮古:その机でドアをふさごう。 たまきさんは危ないから、ドアから離れて。 たまき:・・・う、うん。 宮古:よっ(ギギギギ、ゴトン)これでしばらくはもつだろ。 恐竜:グルルルルゥゥ(ガリガリ) たまき:いったいなんなの、あれ。 宮古:どう見ても恐竜だけど、なんで生きた恐竜がこんなところに・・・。 恐竜:グルルルルルルゥ・・・・ (ズシン・・・ズシン・・・) 宮古:・・・静かになった。 行っちまったのかな。 内線:プルルルル、プルルルル、プルルルル・・・・・・ たまき:電話が鳴ってる。 どうしよう。 宮古:電話・・・いや内線か。 俺が出よう。 (カチッ)はい、もしもし。 白石:宮古、僕だ。 宮古:その声は白石か!? おまえ、どこに居るんだ! おい、外のあれはなんだ! これはいったい何事だ! たまき:・・・私にも聞かせて。 白石:僕は今、警備室に隠れているんだ。 ここから各部屋の監視カメラの映像を見ることができる。 その部屋にもカメラあるだろう? 宮古:あ?(キョロキョロ)・・・ああ、ある。 おれたちが見えてるのか。 白石:見えるよ。 そこの廊下の様子もわかる。 奴はまだドアのすぐ外にいるから、 間違ってもドアを開けるなよ。 ・・・・・・あの恐竜は先日、氷漬けのままバレーで発掘されたものだ。 バレーにある氷穴から、たまに生物の標本が見つかることはあるんだが、 あれほど完全なものはいままでなかった。 しかも解凍したら、信じられないことに蘇生したんだよ。 我々はついに生きている恐竜を手に入れたんだ。 あれの価値は計り知れない。 今日は、世間に公表する前に、あれを君に見せるつもりだったんだけど、 朝来てみたら檻が破壊されていて、奴は館内を自由に歩き回っていたんだ。 僕は慌ててこの警備室に逃げ込んだのさ。 宮古:警察に電話は?助けは求めたのか? 白石:何度もしたよ。でも・・・ 宮古:でも、なんだよ。 白石:・・・・・・信じてくれなかった。 実際に目にしなきゃ、氷漬けの恐竜が生き返って襲われてます、 なんて言ったって誰も信じないよ。 宮古:そらそうだろうけどさ、 警察が頼りにならないんじゃあ、どうするよ。 捕まえる方法とかないのか? 麻酔銃とか。 白石:そんなモノないよ。ここは化石の研究所だよ。 宮古。下手なことは考えずに今は、 恐竜が諦めてどこかに行くのを待つしかないよ。 僕がカメラで監視して、そこからいなくなったら教えるから。 たまき:あの、宮古さん。 ・・・警察はだめでも、TPCは? あそこには超常現象の調査チームのGUTSがありますよ。 GUTSなら来てくれるかも。 宮古:・・・聞こえた? 白石:そうか。確かこのあいだ正式に発足したんだったね。 よしわかった。番号を調べて、僕が連絡しよう。 ・・・・・・ところで、宮古。その子、誰? このあいだ連れてきた子と違う子だよね。 今日はてっきりあの子とくるんだと思ってたぞ。 ・・・・・・おいおい、もう別れたのか? たまき:(・・・・・・え?) 宮古:い、いいから早く通報しろよ。 白石:わかった。じゃあこの内線は一旦切る。(ブッ) 宮古:やれやれ。 氷漬けの恐竜が生き返るなんてこと、あるんだなぁ。 生きている恐竜を見たいとは思っていたけど、 襲われるとなると話しは別か。 さて、これからどうする。 恐竜:グゥアフッ(ガリガリ) たまき:あのドアがいつまでもつか・・・ 恐竜:グルルルル・・・・ (カチャリ) たまき:宮古さん・・・? 宮古:ドアノブを回してる・・・・・・ 嘘だろ? たまき:ドアを開けられちゃうよ。 宮古:もう一個、机を寄せよう。 (ギギギギ、ゴトン) たまきさん。 たまき:なあに? 宮古:あいつが入ってきたら、俺が何とか食い止めるから、 隙を見て外に逃げるんだ。 たまき:食い止めるって・・・・・・ 宮古さん、ダメだよそんなの。 宮古:ダメじゃないの。 それしかないだろ。 たまき:ダメったらダメ! ほら、・・・・・・あの机の下に二人で隠れよう。 あいつが入ってきて部屋の奥まで行ったら その隙にドアから逃げればいいよ。 あの恐竜はしっぽが長いから、 ここで方向転換するのには時間がかかると思うよ。 宮古:・・・・・・よし、・・・わかった。 最初はそのプランで行こう。 でも、この机じゃあ二人一緒には無理か。 別々に隠れよう。 たまき:うん。 宮古:狭いなぁ。 恐竜:グオオォォォッ(ギギギギ) たまき:ドア、ちょっと隙間があいた。 宮古:こうして待っているしかないか。 いつでも机の下から出られるようにしておこうな。 たまき:・・・・・あの〜、 白石さんが電話で言ってた、「このあいだ連れてきた子」って、 どうしたんですか? 宮古:え?・・・あれ聞こえてた? こんなときに、なんだよ突然。 たまき:・・・なんとなく。 さっきから、気になって。 宮古:ああ、うん。 別れたよ。いろいろあって。 もう、終わった話だよ。 たまき:ふぅん・・・・・・。 宮古:女の子って、前の彼女のことを必ず気にするよな。 なんでかな。 たまき:・・・どんな人か知りたいからかな。 宮古:知ってどうするの。 たまき:だから、なんとなく・・・。 宮古:俺なんか、女の子の前の彼氏なんかに興味湧かないけどな。 どっちかというと、知りたくもない。 ・・・・・・彼女は君とは全然違うタイプだったよ。 たまき:その人って、ミツキさん? 宮古:・・・・・・はぁ? 違う違う。 あいつじゃないよ。 あれはただの同僚だって言ったじゃないか。 たまき:だって、・・・・・・仲良さそうだったから。 宮古:あいつじゃないよ。 たまき:その人とは、どうして別れたんですか? 宮古:・・・・・・ふられたの。 きっぱりと。 もう何ヶ月前かなぁ。 実は「そんなトコに女の子を連れて行くなバカ」って 言ったっていう女友達ってのが、その子なんだけどさ。 たまき:・・・そうなんだ。 恐竜:グルルルル・・・(ギギゴゴゴゴゴ) 宮古:ドアが開いた。 入って来るぞ。 たまき:はい。 恐竜:(ズシン・・・ズシン・・・) ヴァオォォーッ たまき:(奥に行け、奥に行け〜・・・) 恐竜:グルルルルゥゥゥゥ・・・・・・ (ズシン、ズシン) たまき:(・・・行ったかな?) チラッ たまき:ひゃあっ 恐竜:ブフゥーー (ゴトゴト・・・ギギギギ) たまき:食べられちゃう〜 宮古:(ゴトン) おい恐竜!こっちだ、こっち! たまき:きゃあーーー! 宮古:たまきさん! そいつが俺に構っているあいだに、君は逃げろ。 たまき:宮古さん・・・・・・ 恐竜:ヴァオオオオオオオッ 宮古:・・・ぅ、うう。(ドキドキ) 怖ぇえ〜。 (あの爪、鋭いな。 あの牙、痛そうだな・・・。) 恐竜:ガルルルルル(ズシン、ズシン) 宮古:(・・・だが、 全身のバネを使ってダッシュする四つ足の獣と違って、 二足歩行の恐竜は恐らく瞬発力にかけるはず。 それに、懐が全くの死角だ。 ・・・よし。) 恐竜:グルルルルル・・・(ズシン、ズシン) 宮古:(最初に懐に飛びこみ、その勢いで奴のヒザに蹴りを入れ、 足を破壊してできるだけ移動力を削る。 たぶん奴には躱せないだろう。 そうすれば、そのあと俺がやられても・・・・・・) たまき:宮古さん、やめて! 宮古:・・・たまきさん。俺がこいつに飛び掛かったら、 振り向かずにすぐに逃げるんだ。 大丈夫。俺こう見えても強いんだから。 たまき:・・・・・・・・・・・・・。 恐竜:グアオオーーーーッ(ズンズンズンズン) 宮古:ヤベぇ (・・・あいつは頭を低くしてダッシュするのか。 これじゃあ懐には入れんな・・・・・・) なら、鼻っ柱にパンチだ。 オラァーッ (ドスッ) 恐竜:痛てッ 宮古:まだまだぁー ・・・・・・って、なに? たまき:しゃ・・・・・・しゃべった・・・? 恐竜:いてててて・・・。 まさか本気で掛かってくるとは思わなかったョ 宮古、口から血ぃ出でない? 宮古:おまえ、 もしかして・・・・・・・・・白石? 恐竜:そうだよ。 びっくりさせてごめん。 宮古:その姿、どうした? キグルミじゃねぇだろ? 恐竜:僕ね、DNAを書き換えて恐竜に変身する薬を作ったんだ。 スゴイだろ? でも、ただ見せるのはつまんないから、 こんなおしばい゛を゛う゛った゛の゛さ゛〜〜ぐぐる゛じい゛〜・・・ 宮古、チョークチョ−ク・・・・ 宮古:馬鹿かお前はーっ つまんねえことするんじゃねえよ! 死ぬかと思っただろーが! 恐竜:ゲホゲホ・・・。悪かったよぅ〜〜。 たまき:・・・・・・みやこさぁん 宮古:ああ、たまきさん。 もう大丈夫。 信じらんないだろうけど、この恐竜は俺の友達だったよ。(笑) たまき:(ぎゅぅ) ・・・守ってくれてありがとう 宮古:おっ ・・・・・・なに震えてるんだよ。 もう平気だって。 たまき:だって、 ・・・・・・震え、とまんないんだもん。 宮古:よしよし(なでなで) 恐竜:グッフッフ(ピース) 宮古:バーカ。 ・・・たまきさん、紹介するよ。 こいつ、っていうか、姿は変わり果ててるけど、 この恐竜が俺の親友の白石。 ・・・おまえ、それ元に戻れるんだろうな。 恐竜:もちろん。 たまき:は、はじめまして。 恐竜:どうも、白石です。 思い出に残る出会いだね。 たまき:夢に見そうです・・・。 宮古:この子は寺月たまきさん。 最近よく一緒に遊んでるんだ。 俺の、・・・その〜お友達っつうか〜 たまき:(・・・お友達?) 白石:なに照れてんだよ。 宮古:おわっ、 おい、おまえっ!! たまき:・・・・・・? どうしたの? 白石:あ、時間だ。 人間にもどっちゃった。 たまき:え?もう恐竜じゃないんですか? 一体どんな人・・・・・・ 宮古:おまえ、服着ろ、服! なに素っ裸で突っ立ってんだよ。 わーっ、たまきさん振り向いちゃ駄目〜 白石:あっはっはっは。 じゃあ、服を取ってくるよ。 寺月さん、またあとでね。 おちついて館内を案内するよ。 たまき:・・・・・・宮古さんのお友達って、 変ってる・・・・・・。 宮古:あいつは特別だよ。 でも、冗談きついけど、いいやつなんだ。 たまき:そうなの? 宮古:・・・まあね。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 そのあと、白石さんの案内で館内を見て回りました。 宮古さんと白石さんは本当に仲が良さそう。 ただ会話に、二人にしかわからない冗談が多くて、 わたしはちょっと寂しかったけど。 宮古さん、今日は私のことを命がけで守ってくれようとしました。 そんな事はもうしてもらいたくないけど、 ・・・でも嬉しかったな。 それでは、おやすみなさい。 |