11月7日(日)晴れ きょうは宮古さんから送られてきたチケットで、 えりかちゃんと一緒に市営水族館に行きます。 キサラさんに薦められて来たものの、今日がどんな一日になるのか、 なんだか心配です。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 えりか:えぇ〜。 市営水族館のほうに行くんですか〜? えりかも真玄君と同じ、隣町の水族館のほうに行きたいなぁ〜。 水族館に行くっていうから、てっきり向こうのほうだと・・・。 たまき:私、実はその市営水族館って行ったことがないんだけど、 そんなによくないの? えりか:えりかも小学校の遠足のときに行ったきりですけど、 なんか、たいしたことないところでしたよ。 隣町の水族館に比べると、規模も小さいし〜。 古くてキレイじゃないし。 たまき:そうなんだ〜。 まあ、久しぶりなんだからいいじゃない。 わたしに付き合ってよ。 えりか:まあいいか。先輩と一緒に行くならどこでも。 ところでそのチケット、どうしたんですか? たまき:この水族館に勤めている、知り合いの人から貰ったの。 えりか:ふうう〜〜ん。 先輩って顔が広いんですね。 たまき:えぇ〜? そんなことないよ〜・・・・・・と思ったけど、 (知り合い・・・大富豪の令嬢・TPCの隊員・刑事・怪盗(笑)・・・) ・・・ある意味、顔は広いかも。 えりか:でしょでしょ〜。 たまき:水族館て、入り口をくぐった瞬間のワクワク感がいいよね。 どんなのがいるのかなぁ。 えりか:えりかは、この薄暗いのが怖いです〜。 あっ、水槽だっ! 先輩、フグがいますよ。 わぁ、変な顔〜。 えりか:なにこれ、変なサカナ〜。 うわ〜〜。(^o^)> たまき:これはマツカサウオっていって、目の下に発光器官があるんだよ。 むかしある水族館が停電になったときに、係員さんが偶然に、 光っているのを発見したんだって。 えりか:うわ〜〜。\(^▽^)/ うわぁ〜〜。\(◎▽◎;)/ あっ、あれはなんだっ!!(>▽<)> たまき:・・・それまでは、この魚が光るなんて誰も知らなかったの。 そういうサカナなんだよ。 あれ? えりかちゃん? ・・・どこに行っちゃったの? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 たまき:私、置いてきぼり? えりかちゃん・・・・・・、 隣町のほうがいいなんて言って、 真玄君よりもはしゃいでるじゃない・・・。 もぉ〜、信じらんない。 たまき:マツカサウオの目の下が光るのは、 発光バクテリアをこの部分に飼っているからなんだよ〜。 ・・・って、誰も聞いてくれないね。 寂しいなぁ。 水族館って、水槽を見ながらみんなで感想を言い合うのが楽しいのにぃ。 宮古:あの、すいません・・・。 たまき:はい? ・・・あっ。 宮古:やっぱりそうだ〜。 本当に来てくれたんだ。 たまき:宮古さん。 ・・・いえ、どういたしまして。 宮古:昨日の電話で、寺月さん今日来るって言ってたから、 もう朝からソワソワしてたんだよ〜。 宮古:一人で来たの? 誰かと一緒? たまき:友達と一緒です。 来てそうそうに、はぐれちゃったんですけど・・・。 宮古:その友達って、・・・やっぱり男の人? たまき:いいえ。女の子ですけど? 宮古:・・・ああ、そう!? そうなんだ。 たまき:・・・? あの〜、チケットありがとうございました。 宮古:ああ、あんなものいくらでもあるから、欲しかったらいつでも言って。 ここは入場者が少なくて儲かっていないから、 従業員の給料の30%は、チケットで支給されるんだよ。 俺らはそれを売って、自分の食費を稼ぐの。 たまき:ええ〜っ!? そうなんですか? ・・・・・・宮古さん、大変なんですね。 宮古:あはは。 ここは仮にも市が経営してるんだから、 いくらなんでも、そんなことあるわけないじゃん。 冗談だよ。 たまき:あ。 ・・・んもぉ〜!心配して損した。 宮古:ごめんね。 まさか信じるとは思わなかった。 でも、寺月さんはいい人だねぇ。 どう?おわびに水族館の裏側を案内するけど。 なかなか興味深いと思うよ。 良かったら。 たまき:裏側・・・ですか? 宮古:そう。スペシャルコース。 ・・・無理強いはしないけど。 たまき:? 宮古:あの・・・、このあいだは勝手なことばかり言って、 申し訳ないことをしたと思ってるよ。 寺月さんがダイバーだって聞いて、嬉しくて舞い上がっちゃってさ。 人の都合も聞かずに一方的にしゃべっちゃって。 ・・・寺月さん、相当困った顔してたのにね。 たまき:いえ、そんなこと・・・(あるけど・・・) もう気にしないで下さい。 宮古:そうかい? 気が楽になったよ。 ところで裏、覗いていく? 興味なかったらそれでもいいし。 たまき:う〜〜ん。 ・・・・じゃあ、行きます。 宮古:うん! じゃあ、そこの通用口から入ろう。 たまき:でも、お仕事は大丈夫なんですか? 宮古:ここはラッコとかイルカとかの海生哺乳類がいないから、 営業中は割と時間があるんだ。 水槽の見回りも兼ねてるし、一緒にいる時間くらいはあるよ。 連中はサカナと違ってとにかく良く食べるからね〜。 一日中餌を作ってないと、給餌が間に合わないんだよ。 朝メシを食べさせたら、すぐに昼メシを作りはじめるんだって。 たまき:・・・そんなに食べるんですか? 宮古:ラッコは体重の20%くらいの量を1日で食べるって。 だから水も汚れるし、その上アワビだのカニだの、 高いものばかり食うから金は掛かるし、大変だってさ。 たまき:そうなんですか〜。 宮古:ここは予備のサカナの水槽。 展示してあるサカナが死んだりしたときに、この水槽から補充するんだ。 なかには展示していない種類のもいるから、 ここの見学はまさにスペシャルコースかもね。 たまき:へぇ、凄い数がいるんですね〜。 知らなかったな。裏にこんなに魚がいたんだ。 ミツキ:宮古さ〜ん!いたいた。 もう、今までどこにいたの? 宮古:おう。どうした? ミツキ:またオオカミウオの水槽のクーラーの調子が安定しなくて。 見ておいてもらえない? 宮古:あれなぁ・・・。 やっぱ専門家に見てもらったほうがいいな。 おれが園長にあとでかけあうよ。 ミツキ:その専門家さん、新しいクーラーを買ったほうが安いって 園長に言ってくれるといいいのにな。 ・・・ところで宮古さん、そのコだれ? 宮古:ああ、お客さん。 うちのペンギンが逃げたときあったろ。 あのときに保護してくれた方なんだ。 たまき:どうも、はじめまして。 ミツキ:・・・・・・・・・朝から姿が見えないと思ったら。 じゃあ、このあいだ偶然向こうの水族館で会ったっていう、 あのコ? 宮古:そうそう♪ ミツキ:ふぅ〜〜〜〜〜〜ん(ジロジロ) たまき:・・・・・・・・・(な、なに?・・・?) ミツキ:その節は、どうも。 どう?あっちの水族館と比べて。 うちの水族館は。 たまき:ええっと・・・その・・・(小さくて古いなんて言えないし〜) 宮古:・・・お客さんにそんな答えにくい質問するなよ。 ミツキ:いいじゃん別に。 私達も含めて、みんな思ってることなんだもん。 宮古さん、向こうの水族館から引き抜きの話が来てるんでしょ。 本当に転職しなくていいの? あたしは、・・・移ったほうがいいと思うけどな。 それが宮古さんのためだよ。 宮古:俺はいいんだよ。ここで。 もう、その話はするな。 早く仕事に戻りなさい。 ミツキ:ホントにいいの?それで。 わたし本気で言ってるんだから! いいのね。 宮古:・・・いいんだってば。 ミツキ:そう。・・・わかった。 仕事に戻ります。 宮古:何なんだよ、もう。 たまき:いまの人って、宮古さんとは・・・? 宮古:「とは」って?・・・あの子は同僚だよ。後輩でね。 たまき:宮古さん、隣町の水族館から誘いが来てるんですか? 宮古:ああ、まあね。 わりといい話だったよ。 たまき:いまの人は移ったほうがいいって言ってましたけど。 宮古:・・・いまの子、来月でここを辞めて、あっちの水族館で働くんだよ。 どうも、俺に一緒に来てほしいらしいんだけど。 たまき:・・・行ってあげないんですか? 宮古:行かないよ。 俺はここが好きだからね。 たまき:・・・・・・・・・・・。 宮古:この水族館に初めて来たのは、俺がまだ小学生の頃だったよ。 あの頃はまだ隣町には水族館なんてなくて、 ここがこの辺で唯一の水族館だったんだ。 水槽の中のサカナがキラキラしてキレイでさ、 感動したっていうのかな。 なんて言ったらいいかわかんないけど、 とにかくここが好きになったんだ。 将来はここで働きたいと思ったよ。 そのあといろいろ勉強して、 ついにその夢がかなったわけだ。 たまき:ステキですね・・・。 宮古:ここに勤めた翌年に、隣町に新しい水族館が出来ちゃったんだけどね。 以来、お客は遠のく。従業員は引き抜かれる。 なんかもー、えらいことになっているわけよ。 実際、ここはまだガラス製の小さな水槽が多いし、設備は古いし、 お給金は安いし、呼び物になるスターもいないし、 とても新しい水族館にかなうモンじゃないんだけどね。 でも、俺に夢をくれたこの水族館から離れたくないんだよ。 ・・・だからね、引き抜きには応じないの。 それに、あのペンギン達を置いてはいけないし。 たまき:・・・そうなんですか。 宮古:どうもイカンね・・・・ こんなことを寺月さんに聞かせてもな。 愚痴っぽく聞こえてたら、ごめん。 たまき:そんなこと、ないですよ。 なんだかちょっと意外かな。 宮古さんて、もっと・・・・・・、 宮古:・・・もっと、なに? たまき:いいえっ、何でもないです!! 今、すっごく失礼なことを言うところだったかも・・・。 宮古:まあ、・・・どうやら見直してもらえたみたいだし、 それはそれで良かった。 さてお次の見学場所は、と。 ・・・時間は大丈夫? たしか、友達と来ているって言っていたような。 たまき:そうだ、えりかちゃん・・・。 どうしようかな。 宮古:下に降りようか。 また今度来てくれたら、そのときにでも案内するし。 たまき:すみません。 宮古:通路に面したドアを開けるときは、 開いたドアがお客さんにぶつからないように、 注意しないといけないんだ。 (キィ) あれ、お客さん全然いないや。(汗) えりか:うわぁっ先輩!探しましたよ〜。 たまき:・・・えりかちゃん、ごめんね。 えりか:ん? (ヒソヒソ)・・・あのおじさん、誰ですか? たまき:こら、おじさんなんて失礼でしょ。 宮古:・・・・・・オジ・・・。(いまので聞こえた) たまき:この人は宮古さんって言って、きょうのチケットをくれた人なの。 宮古:ハ、ハジメマシテ、宮古です。 えりか:・・・・・・ドーも。 たまき:えりかちゃんたら失礼なこと言っちゃって〜。 宮古さん、怒らないで下さいね。 この子、まだ高校生なんですよ〜。 宮古:えっ女子高生!?(キラーン) えりか:・・・いや〜ん、せんぱ〜い。 この人、女子高生ってキーワードで、眼がキラーンってなったぁ〜! やっぱりおじさんですぅ〜!! たまき:・・・・・・み、宮古さん? 宮古:あ・・・いや・・・・・・。 えりか:・・・・・・・・・・・・・・・。( ̄_ ̄;) たまき:・・・・・・・・・・・・・・・。( ̄_ ̄;) 宮古:じょっ、冗談だってばぁ。 えりか:・・・・・・・・・・・おじさん?( ̄o ̄;) たまき:・・・・・・・・・・・・・・・。( ̄_ ̄;) 宮古:・・・・・・・・・・・・・・・。(汗) えりか:・・・・・・・・・・・・・・・。( ̄_ ̄;) たまき:・・・・・・・・・・・・・・・。( ̄_ ̄;) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 きょうは楽しい一日でした。 キサラさんの言う通りだったかな。 宮古さんの思わぬ一面が見られました。 昨日まではちょっと怖かったけど、もうそんなことはありません。 宮古さんとは、たぶん良いお友達になれると思います。 それでは、おやすみなさい。 |