11月6日(土)晴れ
例によって、紅蘭とキサラさんは遅くまで仕事をしていました。
いつものように、2人ともお昼過ぎまで寝ているでしょう。
わたしはといえば退屈なので、道端の草むしりをしていました。
こういうのって最初は面倒だけど、やりはじめるとハマっちゃうんですよね〜。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

たまき:あ、もうこんな時間だ。
    もう2人とも起きたかな。
    (ぶちぶち)
    ・・・ふぅ。この辺にしておこうか。

たまき:皆さん起きました〜?
 紅蘭:おはよう、たまき。
たまき:おはよう紅蘭。
    きさらさんは?
 紅蘭:まだ寝てはるわ。
    きさらはん、起動に時間がかかるタイプやし、
    もう少しせんと起きてきぃへんやろな。
たまき:そっか〜。

のどけき秋の午後

 紅蘭:郵便受け見てきた?
    今日あたり、うち宛てに郵送されてくる書類があんねや。
たまき:郵便物はそこにまとめて置いてあるよ。
    まだチェックしてないけど。
 紅蘭:どれどれ。
    (パラパラ)
    ・・・ダイレクトメールばかりやね。
    もぅ、書類、まだ来ぃひん・・・。
    ・・・これ、たまき宛てやで。
    市営水族館から。
たまき:市営水族館?
    ・・・って、宮古さんのいるところだよね。
    
(ペリペリ)あ。
 紅蘭:なんやった?
たまき:水族館のチケットが2枚。
 紅蘭:それだけ?
たまき:あとお手紙・・・っていうか、メモみたいなのが。
    「良かったら一度遊びに来てください」・・・か。
    
 紅蘭:結局あれから、電話も何もしてへんねやろ?
たまき:・・・うん。
 紅蘭:行きたくないんやったら、「行かない」、
    「会いたくない」って
    はっきり言うたほうがええよ。
    中途半端なままにしておくのはよくないで。
たまき:それはわかっているけどさぁ。
    ・・・でも別に宮古さんのことは嫌いなわけじゃないし。
    水族館にも、行きたくないわけでもないんだけど〜。
    でもねぇ〜。
 紅蘭:イキタクナイワケデモナイって日本語も、なんやな〜。
    はっきりせん表現の得意な言葉やね、この国の言葉は。
たまき:どーしよーかなぁ〜・・・。
    まあ、考えとくよ。
    そうだ。紅蘭、朝ごはん食べる?
    本日の献立は、クラッカー、野菜スープ、ヨーグルト、
    お飲み物はローズヒップティーで〜す。
    スープは今温めるし、
    クラッカーにつけるソースはそこに入ってる。
 紅蘭:うち、はらぺこや。ちょうだい。
たまき:りょうか〜い。
    働いたら、おなかすいちゃった。
    一緒に食べよう。
 紅蘭:そういえば外から来たみたいやったけど、どこかに行ってたん?
たまき:道端の草むしり。
    ほら〜、手が軍手くさいでしょ〜。
 紅蘭:わかったわかった。
    待ってるさかい、早よう手ぇ洗っておいで。
たまき:は〜い。
 紅蘭:このお菓子も食べてええの?
    カール・うす塩味
    うまそうやん。
たまき:朝からカール?・・・食べてもいいけど。    
 紅蘭:ほな、いただきます〜。


きさら:(キィ、パタン)
    
ふぁ〜〜〜〜あ・・・。
    
うぅ〜〜〜〜〜〜〜
    
・・・あ〜、眠い。
 紅蘭:起きてきたみたいやな、きさらはん。
たまき:・・・大丈夫かな。
    歩調が安定してないけど。

きさら:(ガチャ)
    おは・・・ヨォ〜〜。    
    むにゃむにゃ・・・

ねぼすけだいおう

たまき:・・・また寝ちゃった。
    きさらさんて、寝顔も綺麗だね。
 紅蘭:・・・あ、何やニヤけてるで。
きさら:んふふ(ニヤニヤ)
 紅蘭:会話、聞こえてるんとちゃうか?
    きさらはん、こないなところで寝たら邪魔・・・
    やなくて、風邪ひくで。
きさら:・・・・・・ホン・・・ラン?
 紅蘭:なんや。
    やっぱり起きてたんか。
きさら:ああ・・・・・・。
    ・・・・・・ホンラン、たまきちゃん。
    ひさしぶりだなぁ。
たまき:久しぶり?
 紅蘭:寝ボケによる一時的な記憶の混乱やな。
きさら:・・・・・・よぉ、カール。
    きょうはご主人様と一緒じゃないのかぁ?
たまき:・・・お菓子に話しかけてるけど?
 紅蘭:ああ、・・・懐かしいなぁ。
たまき:え?・・・え??
         ・
         ・
         ・    
たまき:キサラさん、目は覚めました?
きさら:うん、なんとか80%ほど。
    コーヒーさんきゅ。
たまき:どういたしまして。
 紅蘭:きさらはん、ホンマに朝に弱いなぁ。
きさら:ぱっと目覚められる人が羨ましいよ。
    あたし、起きてから30分間、なんにも出来ないんだもん。
    毎日30分。つまり1年で180時間も損してるわけよ〜。
たまき:・・・合計するとすごいですね。
きさら:だからきちんと起きてからは、ただ無駄に時間を過ごさないように
    努力しているけどね〜。
 紅蘭:のんびりしてたりせぇへんって事?
きさら:違う違う。
    そういう余裕の時間も大切でしょ。
 紅蘭:そらそうやけど。

紅蘭の部屋模様替え

きさら:突き詰めれば人生に無駄な時間なんて無いのかもしれないけど、
    強いて言えば、一番無駄なのは「ものを選ぶ時間」かな。
    AにしようかBにしようか、ダラダラ迷ってても何にもならないじゃない。
    選べないのは、実はどっちでもいいからとか、商品のデータ不足とか、
    そういうことが原因だったりするでしょ。
    だからそのへんは割り切って、パッ、パッっと選んじゃうの。
たまき:すごいですね・・・。
    私なんて、お店の中を何度も行ったり来たりして、
    結局、両方買っちゃう時もありますよ。
    そうか〜、確かに時間の無駄ですね。
 紅蘭:あれこれ選ぶ時間が楽しいってことも、あるんとちゃう?
きさら:人には薦める気はないよ。
    あたしはさっさと済ませて、できた時間に別のことをやるってだけ。

たまき:そうですね。
    でもいいなぁ。わたしもそうしようかなぁ〜。
 紅蘭:それやったら、あのチケットを使うかどうか、
    さっさと決めたらええやん。
たまき:・・・はっ!?
 紅蘭:どないするん。
    行くの?行かへんのん?
たまき:紅蘭、いじめちゃィヤン。
 紅蘭:ごまかすんやない。
たまき:だってぇ〜・・・。
きさら:なになに?なんの話?

たまき:このあいだ知り合った男性から、チケットが送られてきたんですよ。
    それはその人の勤め先のチケットなんで、
    デートのお誘いというわけではないと思うんですけど〜。
きさら:職場に遊びにこいってこと?
 紅蘭:せやね。    
きさら:ふ〜ん。
    勤めているって言ってたけど、オトナなの?
    いくつくらいの人?
たまき:ん〜・・・?
 紅蘭:26前後ちゃうか?
    そろそろオッサンの域に入りつつある感じやったで。
たまき:そんなだった?
    私、男の人の歳ってよくわかんなくて。
きさら:26でオッサン呼ばわりかぁ。
    若い娘は厳しいねぇ・・・。
    んで、その勤め先って?
    チケットって事は映画館かなにかなの?
たまき:水族館です。
    ここからちょっと行ったところにある。
    前にそこから逃げたペンギンを紅蘭が捕まえて、
    そのとき初めて会ったんです。
きさら:水族館。・・・へぇ。
    チケットっての、見せて。
 紅蘭:ほい。
きさら:2枚くれたんだ。・・・ふぅん
    その人の名前は?
    たまきちゃんは、その人のことをどのくらい知っているの?
たまき:お名前は宮古さんっていうんです。
    下の名前は知りません。
    勤め先はその市営水族館で、ペンギンを飼育しているんだそうです。
きさら:ミヤコって、京都のト?
たまき:いえ、宮古島のミヤコです。
きさら:ふぅ〜ん。

年末が近づくと、こういう話になるのでしょうか・・・

たまき:知っていることって、それくらいか。
    なんか、なんにも知りませんね・・・。
きさら:そんなもんか。
    ところで・・・たまきちゃんは、いま好きな人とかいるの?
    付き合っている人とか。
たまき:いえ、・・・いません。
きさら:ちなみにホンランは?
 紅蘭:そんなん、いてないけど。
きさら:キミタチ、なんだか寒いコンビだなぁ。
 紅蘭:ほっといて。

きさら:ならさ、たまきちゃんはその宮古って人のことをどう思っているの?
たまき:一緒にいて楽しかったんですけど、
    強引なところがちょっと苦手でした。
    でも、別に嫌いなわけでもないんです。
    ・・・一緒にいて楽しかったし。
    ダイビングもやっているらしくて、話も合いそうなんですけど。
きさら:それなら、行ってみるのもいいんじゃないの?
    悩むことないじゃない。
たまき:でも〜・・・。
    年上の男の人の強引さって、怖いっていうか、
    どんどん引っ張りまわされちゃいそうで不安なんですよぅ。
きさら:大丈夫だって。
    心配のしすぎだよ。
たまき:ぅん〜〜。
    それに、チケットくれたからって会いに行ったりしたら、
    変なふうに誤解されるんじゃないかって・・・
きさら:意識しすぎじゃないかな。
    2枚送ってきたのは、誰かと気軽に遊びに来てっていう意味でしょ。
    紅蘭でもいいし、ほかの友達でもいいし。
    誰かを誘って行けば。
たまき:はぁ。
きさら:遊びに行って、その人の仕事ぶりを見てくるの。
    きっとその宮古さって人のことが良くわかると思うよ。
    この人も、自分のことを知って欲しいんじゃないの?
    だから行ってみてさ、
    その上で、その後どうするかを決めればいいと思うけどな。
たまき:宮古さんのお仕事、か。

きさら:ね。行っておいで。
    今度のお休みのときにでもさ。
    楽しいと思うよ。
たまき:どうしようかなぁ・・・

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

市営水族館へは、次の日曜日、つまり明日、
行くことに決まっちゃいました。
えりかちゃんとお買い物の約束があったんですが、
早いほうがいいし、ということで予定を変更して、
2人で水族館にいってきます。
宮古さんにもお電話して、そのことを伝えました。

強引といえば、キサラさんも結構強引ですね・・・。
それとも私が受け身すぎるのかなぁ。

んん〜〜
おやすみなさい。

   
 



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