12月25日

リコ:注文したものはだいたいそろった?
ニコ:ビールとお肉はきたろも、中華スープがまだらよ。
リコ:ん〜、まあいいや。
   それじゃあ乾杯といきますか。
ヒナ:は〜い。
リコ:あ、そのまえにちょっと一言。
   去年はあたし一人で仕事してたからこういうことしなかったけど、
   今年はお姉ちゃんがきてくれて、ヒナちゃんも増えて、
   そのうえ業績もアップして、非常に良い一年でした。
   今日はイズモザキ便利店の忘年会兼クリスマスパーティーということで、
   今年一年のみんなの努力をねぎらう意味もこめて、
   ジャンジャン焼肉を食べていただきたいと思います。
   では、皆さん今年はお疲れ様でした〜〜♪
   かんぱ〜〜〜〜い!
ニコ:かんぱ〜〜い!
ヒナ:かんぱ〜〜い♪

焼肉屋さん

リコ:タレは甘口と辛口、どっちがいい?
ヒナ:あたしは甘口で。
ニコ:オレも〜。
   あ、この肉もう焼けてるねっか。
   (ひょい)
リコ:ちょっとお姉ちゃん、それあたしのだよ!!
ニコ:いいねっかね。
   肉はまだいっぱいあるんだスケ。
リコ:せっかく育てたのにぃ〜。
   これは取らないでよ。(じゅ〜〜)
ヒナ:ここの焼肉、おいしいですね。
リコ:でしょ〜。
   こっちに越してきたときに焼肉屋をいろいろ渡り歩いて
   おいしい焼き肉探したんだけど、ここが一番。
   味も値段もね。
ヒナ:最近は焼肉ブームですけど、その前から?
リコ:そうだよ。
   あっ、お姉ちゃんそれあたしの〜!
ニコ:リコちゃん焼きすぎ。
   焼肉はちょっと焼いて食べるのが1番おいしぃが〜よ。
リコ:だからって何でお姉ちゃんが食べるのよ!
   あたしは生っぽいのは苦手なの。
ヒナ:片面10秒間くらい焼いて食べるのがいいらしいですね。 
   焼けば焼くほど肉の旨みが肉汁と一緒に出ちゃうんですって。  
リコ:片面10秒?
   それってまだ生じゃん。
ヒナ:そんなことないですって。
   やわらかくておいしいですよ。
ニコ:そうらよ。
   リコちゃん、好き嫌いはよくないがぁよ。
リコ:これは好みの問題だよ。
   ってゆーか、お姉ちゃんが自分で焼いたのだけ食べてればいいの。
   あたしの肉とるな!
ニコ:も〜、わがままな妹らなぁ。
ヒナ:すいませ〜ん、中ナマおかわり。
リコ:・・・もう飲んじゃったの?
ヒナ:ビール好きなんですよう。
   ここ、凍らせたジョッキにビールついできてくれるんですね。
   冷えまくっててめちゃウマ〜。
リコ:酒豪だったんだ。
   ちょっと意外。
ニコ:ヒナちゃん、今日は酒池肉林だねぇ。
リコ:お姉ちゃん、それ違う・・・・・

テレビ

テレビ:(ジャカジャン)
    また警察官の不祥事です。
    ・・・県警の巡査部長が昨夜ガードレールおよび駐車車両に接触事故を起こし、
    駆けつけた警官に器物破損と飲酒運転の現行犯で逮捕されました。
    この巡査はこの夜、同僚との忘年会で・・・
 ニコ:まぁた警察官の不祥事ろぅ。
    最近の警察は情けないねぇ。
 ヒナ:そうですよねえ。
    まあみんながみんな、そうだって言うわけじゃないけど。
 ニコ:お酒を飲んだら車に乗らない。
    これ基本ろぅ!
 ヒナ:そうです!
    すいません、ビールおかわり〜!
 リコ:ん〜〜、別に警察官ばかりがだらしなくなったわけじゃないと思うけろ?
 ヒナ:ほかにもいます?
    ん〜、政治家とか、学校の先生?
 リコ:つーかさぁ、例えばよ?
    同じ歳の子供をランダムに1万人集めたとしようよ。
    この子達に国語のテストをさせるとするじゃん。
    すると平均点のあたりの子が一番多くて、両端の0点と100点が少ない、
    グラフにすると平均点と頂点とした富士山みたいな形ができると思うのよ。
    わかる?
 ヒナ:言っていることはわかりますけど・・・
 リコ:この子達にたて笛のテストをさせるとするじゃん。
    やっぱり同じような点数のグラフができるでしょ?
    ね。
    んで、この1万人からにランダムに500人選んで、
    この500人にまた同じように国語のテストをやらせる。
    グラフの形はどうなる?
 ヒナ:ん〜?
    同じような山の形になるんじゃない・・・です?
    適当に選ぶんですから。
 リコ:そうだよね。
    じゃあ今の500人は戻して、
    今度は1万人の中から国語のテストの点が良かった500人を選ぶ。
    その500人にさらにまた国語のテストをさせる。
    グラフの形はさっきと同じか?
 ヒナ:国語が得意な子ばかりなら、高い点数を取る子が多いわけだから、
    グラフの形は変わりますよね。
    高得点に集中すると思うけど。
 リコ:うん。
    じゃあ、その国語組500人にもたて笛のテストをやらせる。
    どうなるかな?
 ニコ:ね〜。
    テストばっかで、なんだか可愛そうらよぅ。
 リコ:例えばの話だって。
 ヒナ:国語が得意でも、たて笛がそうとは限らないから、
    やっぱり最初と同じような山の形になるんじゃないですか?
 リコ:そう。
    全体からある一定のパラメータで選ばれた集団は、
    そのパラメータに関しては全体より突出しているけど、
    ほかのパラメータでは全体のそれと大差ないんだ。
 ヒナ:そうなりますかね。
 リコ:そうなりますって。
 ニコ:なーは、何が言いたいが?
 リコ:警察官にしても先生にしても、自分がなりたいと思った連中から、
    試験を経て選ばれてくるわけじゃない。だから、試験のパラメータは高いよ。
    しかし、倫理観は選ばれるパラメータに必ずしも含まれているわけじゃないじゃない。
    志願して試験に受かれば、飲酒運転するやつらだって、
    警官なり先生になれるんだよ。
 ニコ:らったら、試験のやり方がマズいっていうこと?
 リコ:さっき言ったでしょ、
    全体からある一定のパラメータで選ばれた集団は、
    選んだ基準のパラメータに関しては全体より突出しているけど、
    ほかのパラメータでは全体のそれと大差ないんだって。
    警官や先生の倫理観は、あたし達とたいして変わんないんだよ。
    だから、警官や先生の倫理観が欠けてきてるってことは、とりもなおさず、
    あたし達を含む社会全体の倫理観が欠けてきてるってことになるんだ。
 ヒナ:・・・なるほど。
 リコ:なにも飲酒運転をするのは警官ばかりじゃないよ。
    このへん飲み屋街だってのに、なぜにあんなに路上駐車が多い?
    警官や先生が違反するとニュースになるから目立つだけ。
    それ見て笑うのは、鏡に映った自分を笑うのと同じってことさね。
    みんなもっとちゃんとしないといかん!
    携帯電話の普及以来、ここんところ、みんなおかしいぞ!
 ヒナ:ニコさん。
    ・・・リコさんて酔うとああなんですか?
 ニコ:昔はもうちょっとかわいいことを言ってたろものぅ。
    飼育係を何でみんな真面目にやらないの〜とか、
    カッちゃん、南ちゃん残してなぜ死んじゃったの〜とか、
 ヒナ:え?・・・子供のときからお酒を?
 ニコ:そうらなくって、普段からそういう子だったが。
 リコ:ちょっと聞いてる!?
    さいきんさぁ、歩きタバコするやつがやけに増えたと思わない!?
    あれあっぶないじゃない。何でわかんないかなぁ。
 ヒナ:そ、そうですよねぇ。

テレビ:・・・・というわけなんですね。
    では、今回の横領事件を読み解く4つのキ〜ワ〜ド〜!
    (ジャジャン)
    第1のキーワード、メモ!
    まず、横領したお金をどうごまかすか、
    事細かに記したメモが見つかってます。
 ヒナ:え?何?
    今テレビでなにやってるの?
 ニコ:ヒナちゃん、どうしたが。
    テレビ?
 ヒナ:(ぅげ。テレビでパパのことやってる!?
     結局言いそびれて、まだ二人とも知らないんだよね。
     ・・・どうしよう。
     実は、これ私の父ですって言おうかな。
     それとも、まだ黙っておいたほうがいいかな。
     ん〜〜、
     ・・・・・・やっぱやめとこう。)
テレビ:さらに第2のキーワード、
    (ジャジャン)
    園長という立場!
    そのメモに書かれた予算の移動や操作は、
    園長の了解なしにはできない、という事が分かってます。

ヤバいテレビ

 ニコ:ああ〜、あれらね。
    自分が園長をやってた水族館から、お金を横領したのって。
    世の中には真面目そうな顔して悪いことする奴が多いねぇ。
    ・・・ねえ。
 ヒナ:え?・・・いやでも、
    まだこの人が犯人だって決まったわけじゃないですし。
    だいたい何のために横領したのか、まだわかってないんでしょう。
    借金もないし、生活にも困ってなかったって。
    (それはあたしは一番良く知ってるもん)
 ニコ:でもあれだけ証拠があれば、もう決まったようなもんだねっかね。
    ヒナちゃんと同じ苗字だからって、かばう事ないテ。
テレビ:そして先月、新事実が発覚しました。
    第3のキーワード!
    (ジャジャン)
    水中銃による密漁!
    高嶋元園長がダイビング中の事故で亡くなったのは周知の事実でしたが、
    このときの遺体引き揚げに協力した方からの情報によりますと、
    高嶋氏は水中銃を持っていたということなんですね。
    ここでちょっと説明しましょう。
    日本では、水中銃を使った漁をするには特別の許可が要るんです。
    漁業調整規制法というのがあって、許可を得た漁師さんだけが、
    水中銃を使った漁をしてもいいことになってるんですが、
    この元園長はそういった許可を持ってませんでした!
    つまり「密漁」という立派な犯罪行為だったということです。
    この海域で漁業権を持っている漁師さんは、大変怒っているそうですね。
    この違法行為、横領事件と直接関係はありませんが、
    高嶋氏はこういったモラルの欠如した人だったというのがわかります。
 ニコ:ほら、こんなことする人なんだテ。
    人は見かけによらないんだスケ。

 ヒナ:・・・・・・・・・・・・・・・・。
テレビ:そして、ハイこれが今回のスクープ。
    第4のキーワード!
    (ジャジャジャン)
    原野商法詐欺!
    いままで元園長が、一体何の為に水族館の予算を横領したのかが不明でしたが、
    その用途がついに判明しました。
    高嶋氏は3年前に原野商法という詐欺に引っ掛かっていたようなんです。
    3年前といえば、高嶋氏が横領を始めた次期とぴったり一致します。
    でですね、原野商法。
    これは道も通じていないし、温泉などの地下資源も無い、
    全く利用価値の無い山林を、さも価値が有るように説明して
    他人に売るという不動産詐欺です。
    ・・・大抵の場合、今後整備されて価値が急激に上がるなどと騙して、
    今のうちに買うと後で値上がりするので得だ、と客に思い込ませ、
    その土地の本来の価格よりも高く売りつけるんですね。
 ニコ:あ〜あ〜。
    欲をかいて騙されたんだろっかね。
    うまい話には気ぃ付けないとねぇ。
 ヒナ:(さ・・・山林て、まさかあの山?
     あの山って、騙されて買ったものだったの?
     そんな・・・・・・)
 リコ:どうした、ヒナちゃん。
    ビール飲みすぎじゃないの?
    顔色悪いよ。
テレビ:原野商法という詐欺は、
    ”代金を払ったのに商品が届かない”というような詐欺と違って、
    売るほうも買うほうも、お互い納得した代金で、実際に土地の売買がなされる為に、
    詐欺として立証するのが難しいこともあるそうです。
    つまり訴えても無駄ということもあるわけですね。
    そういう理由か、それとも園長という立場上、騙されたのを不名誉と思ったのか、
    この件で高嶋氏から警察への被害届は出されていません。
    ですが、3年前に別の人物から原野商法詐欺の被害届が出されていて、
    その人も持っている山林が高嶋氏の持っていた山のすぐ側なんです。
    そしてこの人物が土地を買った不動産屋と、高嶋氏が土地を買った不動産屋が同じで
    売買も同時期に行われていることから、高嶋氏もまた、
    この詐欺に騙されて土地を買った一人であるという結論に達したわけです。

 ニコ:なるほどね〜〜。
    真面目な人らったみたいだけど、お金に困るとやっぱり悪い事してしまうもんなんらね。
    かわいそうらけど、ま、自分が悪いことされたからって、
    人にもやっていいってことにはなんないもんね。
 リコ:ヒナちゃん・・・。
 ヒナ:あ、あの、やぱちょっと飲みすぎたみたいです。
    ちょっと夜風にあたってきます。
 リコ:うん。


そう、いままでは横領したお金の使い道がわかっていなかった。
大きな借金もなかったし、高価な買い物もしていなかった。
女性関係もなんどか調べられたけど、結局何も出なかった。
だれかに強請られていたっていう形跡もなかった。
取ったという状況証拠がそろっていても、取るだけの動機がなかったし、
取ったはずのお金もどこにもなかったの。

ひとりごと

水中銃の件が世間に公表されていらい、水族園でパパのことを擁護しようとする人は
もう自分だけになったってモト君が言ってた。
そのモト君も、あたしも、今までパパのことを信じられた一番大きな理由が、
「取ったはずのお金がどこにもないのはおかしい」ってことだった。
でも今日、それがわかっちゃった。
あの山のせいだったんだね。
パパはお人よしだったから、騙されちゃったのかな。


リコ:ヒナちゃん、大丈夫?
ヒナ:うわあっ!
   ・・・ああん、リコさんかぁ。

繁華街

リコ:心配になって見にきたよ。
   忘年会はそろそろお開きにしようか。
   マスターがあったかいお茶を入れてくれてるから、それ飲んでから・・・
ヒナ:リコさん!
リコ:はい?
ヒナ:まだ予算ある?
リコ:・・・ある、けど。
ヒナ:こうなったらとことん飲みます!
   飲ませてください!
リコ:でも・・・・・・
ヒナ:へへへ。
   夜風にあたってたら、また気分良くなってきちゃった。
   お店に戻りましょうよ。
リコ:そうなの?
   なんだよ、心配して損したな。
ヒナ:・・・あ、ごめんなさい。
   そうですよね。
   リコさんあたしのこと気にしてくれたのに・・・・・・
   でももう大丈夫ですから。
リコ:いや、いいって。
   気分よくなったんなら、それに越したことはないよ。
   行こうか。
ヒナ:あの、・・・あのね、リコさん。
リコ:ん?
ヒナ:・・・・・・・・・・・・・やっぱ、
   いいです。
   何でもありません。
リコ:なんすか〜、気になるじゃん。
ヒナ:・・・・・・そのうち、
   そのうち話します。
リコ:ん、・・・まあいいけどね。
   どうやらほんとに気分よくなったみたいだね。
   よし、今日はとことん飲もう。
   なんなら別の店行こうか。
ヒナ:ハシゴですか?
   やった、ハシゴあたし初めて。
リコ:じゃあ残りもん片付けて、あたしがよく行く店連れてってあげるよ。
ヒナ:は〜〜い!

3人で別のお店に行って、飲んで歌って、
・・・そこまでは覚えてるの。
朝起きたら会社で、3人とも着てた服そのままでソファーやら床やらに寝てました。
何にも覚えてません。
リコさんも同じように記憶がなくて、ニコさんがかろうじて覚えてました。
あたしは異様に陽気でリコさんに抱きついたりしてて、
リコさんはずっと演説していたらしいです。

ぜんぜん覚えてません。

 



 
     
 
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