10月8日(木)晴れ

朝起きたら体の調子がいままでと違ってて、前よりも良く動けるようになった感じ。
あと、ちょっとやせたみたい。ふふふ。
不思議なこともあるもんね。

今日はジュディさんが来る日です。
つまり今日でワンパともお別れです。
昨日の晩は、三人一緒にこの部屋で眠りました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

たまき:何時にくるんだろうね、ジュディさん。
 紅蘭:そんなん、うちが知るかいな。
たまき:・・・・・・紅蘭?
 紅蘭:・・・・・・はぁ〜、堪忍な。うち、なんか気ぃ立ってるみたいや。
    情けないけど、ワンパがいなくなる思うと淋しゅうてなぁ。

たまき:ジュディさん、来ないといいのにね。
 紅蘭:あんた何言う・・・・・、せやな。(笑)



 紅蘭:そういや、ワンパはどこやろ?
たまき:さっきキッチンでりんご食べてたけど。
    今思えば、ワンパって赤いものが好きなんだね。

 紅蘭:せやな。こないだうちの赤いチャイナドレスで遊んでたしなぁ。
    まぁ、あれは特殊な素材で出来とるから、何ともなかったけどな。(笑) 

たまき:私ちょっと探してくる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 紅蘭:ワンパおったか?
たまき:いないよう。まさか外に逃げちゃったのかなぁ。
 紅蘭:なぁ、もしかしたら、ジュディはんが来るのに気づいて
    帰りとうない思って、どこか逃げたんちゃうやろか。

ワンパ:WOOOOGRRRRW
 紅蘭:ワンパ、上やな?・・・・・・屋根の上かいな。

 

 紅蘭:ワンパァ〜!そないなとこで何してんねん。
   降りてきぃや!

ワンパ:ワォフー。
たまき:何してんだろ、海のほうを見てるね。
 紅蘭:あほ!探したで。・・・・ん?何の音?
たまき:あれ。ヘリコプターだよ。こっちに来るね。
ワンパ:WOOOOOGRRRROOOW!

 紅蘭:なんや・・・・そういうことかいな。つまらんなぁ。
たまき:何の事?

 紅蘭:ワンパはあそこでずっと待ってたんや。
    ジュディはんが来るのをな。

ワンパ:ウォフゥ。



ジュディ:うちのワンパを助けていただいて本当にありがとうございました。
     あのこれ、わずかですがどうぞお納めください。

 たまき:助けただなんてとんでもないです。それに、こういうのも困ります。
     ワンパがいたこの一週間、とっても楽しかったんです。
     ・・・・・・私たちは、それで十分ですから。
     ね?紅蘭。

 紅蘭 :・・・・・・まあな。

 たまき:ところで、どうしてもお聞かせ願いたいんですが、
     ワンパは何でこんなところに一人でいたんでしょう。
     逃げ出したにしては、ここはジュディさんの家から遠いようですし。


ジュディ:それは・・・・・・。
 たまき:そちらにもいろいろ事情があるでしょうが、
     どうかお願いします。
     それを教えていただくまでは、ワンパはお返しできません。

 紅蘭 :・・・ちょっと、たまき?
 たまき:黙ってて。
 紅蘭 :はいっ。



 たまき:何かの理由でワンパを連れてきて、このあたりで見失ったのなら、
     それなりに探すこともできたはずです。
     でも、そんな形跡はないし。
     見つかってからも、1週間もほったらかしで・・・・。
     ジュディさんはワンパのことをどう思ってるんですか?


ジュディ:この子は逃げたのではありません。
     ・・・・・・祖父に捨てられたんです。
     祖父はワンパを嫌っておりまして。
     うちではいつも狭い檻に入れられております。

 紅蘭 :そんな、ひどいなぁ。
ジュディ:あっ、いえ、ここよりは広いですが。
 紅蘭 :・・・・・・。(ムカッ)
ジュディ:先日、檻の掃除中に祖父が近くを通りまして、そのとき祖父は
     年甲斐もなく赤いジャケットを来ていたんです。
     鍵は開いていましたので、この子は祖父に向かっていきました。

 紅蘭 :それはまた、目に浮かぶようやなぁ。(笑)
ジュディ:ええ。(笑)赤いものにはとても興味を示します。なぜでしょうね。
     ・・・・・・でも、それで祖父はその日のうちに
     この子をどこかに連れて行くよう、秘書に命じてしまいました。




 たまき:じゃあ、いま連れ帰ってもまた捨てられちゃうんじゃあ?
ジュディ:1週間お待たせしたのは、新しい檻を作っていたからなんです。
     厳重で、以前より狭い2重の檻です。

 紅蘭 :そんな、ひどいなぁ。
ジュディ:いえ、それでもここよりは広いです。
 紅蘭 :・・・・・・。(ムキ〜ッ)
ジュディ:そこに入れるという条件で、またこの子を飼ってもいいと
     いう事になりました。こういう事情ですから、
     お話しないほうがいいのではないかと思って。


 たまき:そうだったんですか。
     あの、私、ジュディさんが自分でワンパを捨てて、また恋しくなったから
     連れに来たのかと思ってたんです。だから、その、
     ・・・・・勘違いしてました。ごめんなさい。

 紅蘭 :それやったら、首のとこの札取るやろ。
 たまき:ああ?そうか。私カッコ悪い〜。
ジュディ:あのプレートは普段は毛に隠れてますから、誰も気付かなかったんですね。
      ・・・・・・わたし、そんなわがままに見えます?

 たまき:は?いえ、そういうわけでは・・・あぁあの・・・(ひー)
ジュディ:ふふふ、いいんですよ、たまきさん。ワンパのこと心配してくれたんですね。        ありがとう。
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 紅蘭 :ほなワンパ、お別れやな。
 ワンパ:ワフ?
 たまき:元気でね。もう会えないけど、ワンパのこと忘れないよ。
 ワンパ:・・・・・・。
 紅蘭 :ワン・・・・ふ、ふぇ・・・・。


ジュディ:それではそろそろ行かせていただきます。
     ワンパおいで。

 ワンパ:WORRW
 たまき:きゃあ!
 紅蘭 :うわぁぁ、なんや?



 紅蘭 :あははは。あほ、うちらは一緒に行けんのや!
 たまき:びっくりしたぁ。もう〜ワンパ、放して。
 ワンパ:ワフルルゥ
ジュディ:・・・・・・。

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ワンパは行っちゃいました。
急に家が広くなったみたい。
お別れはいつも淋しいよね。

明日、紅蘭と二人でおっきなぬいぐるみを買いに行くことにしました。
もちろん白くてフワフワのやつ。
かえって、ワンパのこと思い出して淋しくなるかもしれないけど、
そうしないでは、いられない感じ。

はぁ。・・・・・・じゃあ、おやすみなさい。



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 電話:ジリリリン・ジリリリン
たまき:・・・はい、寺月と李ですが。


    ああ、今日はどうも。いえ、まだ起きてました。

    え?・・・今度は何をしたんですか?
    うわ・・・おじいさん、お気の毒に。




    ジュディさん、秘書の方を脅したんですか?
    プレート?ああ、あの札を見落としたことで、ですかぁ。
    そうですね、あれがなければそちらに
    ワンパが帰ってくることもなかったわけですものね。

    



    ・・・・・・「また同じところに」って事は、
    「ここ」ですか?

警報機:ピピピピピピピピピピピピピピピ
 紅蘭:なんや〜、やっぱりあれ不良品かなぁ。
    あ、ごめん、電話中かいな。うち、ちょっと止めてくるわ。


たまき:あ、お願〜い!
    ・・・・・・いえ、いいんです、いいんです。きっと紅蘭も喜びます。
    もう、うちに来たみたいですよ♪

    ・・・・・・お帰り、ワンパ。




   

 

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