12月25日(土)晴れ なんだかワケがわからないまま飛び出してきちゃった私は、 気が付くとクリスマスツリーの前に立っていました。 いままで私が「こうだ」と思ってきた私の周囲の人達の関係は、 どうやら全然違っていたみたいです。 なんだか自分がバカみたいで、とっても悲しくて、寂しかった。 携帯電話が鳴ってる・・・・・・この着信メロディーは紅蘭からの電話。 グループ別選曲で、彼女一人だけに専用のメロディーを設定してあります。 揺らいだ私の周囲の人達の関係の中でも、紅蘭だけは特別。 ・・・・・・私は電話に出ました。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 紅蘭:もしもし、たまき。 大丈夫か? たまき:紅蘭・・・・・・ ああ、ごめんね。 びっくりしたでしょ。 紅蘭:今からきさらはんと代るから、 話を聞いたってんか。 たまき:・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やだ。 紅蘭:きさらはんがあんたに嘘をついてたのは確かやけど、 別に悪気があってのことやないんよ。 宮古はんとあんたに、仲良くなってもらおうと思ったからなんやて。 二人が付き合うてるゆうのは、あんたの誤解らしいわ。 たまき:・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 紅蘭:せやから、話を聞いたって。 それでも納得できんかったら、今日はもうウチと一緒に家に帰ろう。 ・・・去年みたいにな。 たまき:去年みたいに?・・・・・・やめてよもう。 わかった、わかった。 きさらさんと代って。 紅蘭:ほれ、きさらはん。 きさら:ホンラン、サンキュ。 ・・・たまきちゃん? ごめんね、嘘ついてて。 実はあたし、前からミヤ・・・宮古君のことを知ってたの。 最初から順を追って話すから、あたしの話を聞いて。 たまき:・・・・・・はい。 きさら:話せば長いのよ。 覚えてる? 夏に入る前の梅雨の頃。 いい天気の日に二人で灯台跡まで散歩したときのこと。 たまき:・・・・・・梅雨の晴れ間でしたっけ。 きさらさんは大事な用事があるからって早起きしてきて・・・ ふたりで散歩に行ったんですよね。 きさらさん、わたしに相談があるって。 そんなこと今までなかったから、ちょっとビックリしましたけど。 きさら:あの時は、あたしの話しかたが悪くて、 たまきちゃんは、あたしが誰かに告白するもんだと思って、 応援してくれたんだよね。 たまき:そうでしたね。 きさら:宮古君はさ、その時の彼なの。 たまき:・・・・・えっ? 話が、よくわから・・・・・・ きさら:あのとき、たまきちゃんの助言で吹っ切れて、 あたしが振った男が、宮古君。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 たまきちゃん? ・・・・・・・・・もしもし? たまき:あ、ああ・・・・・・ うそ。 きさら:嘘じゃないよ。 春先にやったコンパで宮古君と初めて会ってさ、 夏の前にあたしに告白してきて、あたしはあいつを振った。 以来、あたしたちはさっぱりしたトモダチ関係なんだな。 たまき:・・・・・・私があんなことを言ったせいで、 宮古さんは振られちゃったの? ああ、どうしよう。 きさら:宮古君は、たまきちゃんの助言があったことなんて知らないよ。 あたし、宮古君にも嘘ついてたの。 あたしとたまきちゃんが知り合いだってこと、 宮古君も、今日の今日まで知らなかったの。 たまき:・・・そうなんですか。 わたしも宮古さんも、ふたりとも、 お互いにきさらさんの知り合いだって事を知らなかったんだ。 きさら:あれは秋に入ってからか。 ミヤからバカみたいに浮かれた電話が掛かってきたの。 「運命の出会いだよ〜」ってさ。 なんでも前に会って以来、気になってた子に水族館でばったり会ったって。 しかも友達になれたって。 たまき:・・・水族館で会った子って、わたしのこと? きさら:うん、そう。 でもな、曲がりなりにもあたしに告白してきた男が、別の、 しかも「前から気になってた子」の話するのは、 あたしにとっちゃ面白くなくて、その話題はさっさと切り上げて、 あんまり聞いてやらなかったんだけどね。 だからその子がたまきちゃんだなんて、その時は知らなかったの。 たまきちゃんにチケットが2枚送られてきたところにあたしが居合わせたのは、 11月になってからだったよね。 送り主が市営水族館の宮古って人だって聞いて、内心すごくビックリした。 ちょっと信じられなかったね。 ミヤが言ってた女の子が、たまきちゃんだったなんてね。 たまき:・・・だから、 あの時、宮古って漢字まで聞いたんですね。 「京都のト?」なんて。 あのとき、なんでそんなことまで聞くんだろうって ちょっと思ったんですけど・・・・・・ きさら:そうそう。間違いなくあたしの知ってるミヤだって確認したくて。 すごいじゃない。 偶然にもあたしの知っている二人が、そうと知らずに出会って、 しかも、あたしが思うに、二人はお似合いなの。 あたしは、うまくいけば二人はいいカップルになると思ったのよ。 で、そのあとに思いついた事が、 間違いのもとだったんだけど・・・・・・、 たまきちゃんは、あたしとミヤが友達だってことを知らないし ミヤは、たまきちゃんとあたしが友達だって知らないんだから、 それを活かして、あたしがうまく二人をコントロールすれば、 二人ともすぐに恋人同士になれるって思ったんだな。 たまきちゃんからデートの感想を聞いて、 それをもとにミヤにデートのアドバイスをしたり、 ミヤの話を聞いて、たまきちゃんにアドバイスしたりすれば、 次は相性ピッタリのデートが出来るはずじゃない。 そうすれば、すぐに二人は仲良くなれる。 そのときはそう思った。 たまき:・・・じゃあ、私と宮古さんが今まで付き合えたのは、 きさらさんが・・・うまくコントロールしていたから? きさら:それは・・・どうなんだろうね。 仲良くなるのに多少の役には立ったとは思うけど。 ・・・実際のデートは、そうそうアドバイスどおりに行かなかったしさ。 彼女は海が好きだろうから、海沿いのシーフードレストランなんか いいんじゃないかってミヤに薦めたら、デートのはずが 砂浜ランニング1時間の強化トレーニングになったし、 ツマラナイからやめておけって言ったのに、ミヤは博物館でデートするし。 そのうえ、白石君は恐竜に変身して襲ってきたんだって? まさかそこまでは予想できないもん。(笑) それでやっと悟ったのよ。 コントロールなんて無理な話だったんだよね。 つくづく、あたしが傲慢だったって事を思い知らされたよ。 目的はどうあれ、他人をコントロールしようだなんて 驕った考えだよね。 でも結局、あたしのプロデュース通りにデートが進まなくても、 二人ともどんどん仲良くなっていったんだから、 きっとあたしが何にもしなくても、あんたたちはうまく行ったんだよね。 もともと相性が良かったんだろうなぁ。 余計な事してごめんね。 たまき:・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 きさら:二人はどうやらうまく行っているようだし、 あとはどうやってあたしの事を二人に話そうか、 タイミングを計ってたの。 まさかこんなところで鉢合わせして、二人に迷惑かけるなんてね・・・。 このことであたしのことを嫌いになってもしょうがないけど、 でも、ミヤは本当になにも知らなかったんだから、嫌いにならないで。 ミヤと先週、たまきちゃんへのクリスマスプレゼントを 買いに行ったんだけど、ミヤがデレデレした顔で話すことといったら、 もう、ずーーーーーっとたまきちゃんのことばっかりだったよ。 ミヤは、たまきちゃんのことを・・・・・・ たまき:そんなこと、・・・聞きたくないです きさら:・・・・・・たまきちゃん。 たまき:宮古さんの気持ちは、自分で宮古さんから聞きます。 だから、言わないでください。 きさら:ん。 そうだね。 たまき:あの、じゃあ宮古さんに電話かわってもらえますか? そこにいるんでしょう。 きさら:え?あれ?ミヤ〜? ミヤはどこに行ったんだっけ。 紅蘭:きさらはんがケツひっぱたいて、たまきを探しに行かせたんやろ? きさら:そうだ、・・・・・・忘れてた。 紅蘭:おいおい。 たまき:ええっ?私を探してるんですか? (キョロキョロ) いないですよう。 紅蘭:この電話を切らななあ。 たまきのケータイにかけてもずっと話し中やから、 宮古はん、きっと今ごろ途方に暮れてるで。 たまき:ああ、そっか〜。 じゃあ切るね。 紅蘭:おう。 たまき:あの、きさらさん。 きさら:はいよ。 たまき:・・・わたし別に怒ってませんから。 でも、もう嘘はナシにしてくださいね。 きさら:うん。ごめんね。 たまき:じゃあ。(ピッ) ・・・・・・ふぅ〜。 やっぱり宮古さんの前の彼女はきさらさんだったんだ。 ん?・・・そもそも彼女じゃないのか。 でも、宮古さんの言うとおり、ちゃんと終わった関係だったんだなぁ。 宮古さんは嘘をついていなかったんだ。 (♪ポリーリリリー・ポリロリー) あっ、宮古さんからだ。(ピッ) はい。 宮古:・・・・・・? あっ、つながった!? お〜い、今どこにいるんだよう。 何度かけても話し中でさ〜。 たまき:ごめん。 きさらさんとお話してたの。 宮古:大徳寺とたまきさん、知り合いだったの? あいつそんなこと一言もいわなかったぜ。 たまきさんの名前は、何度も話に出てきたのに。 たまき:きさらさんは、紅蘭の仕事仲間なの。しょっちゅう会ってるよ。 でも、私だって、宮古さんときさらさんが知り合いだったなんて ぜんぜん知らなかったよ。 宮古:なんなんだぁ、それ。 じゃあ大徳寺だけか。 訳がわかってるのは。 たまき:白石さんが言っていた女の人って、きさらさんのことだったんだね。 宮古:ああ。 そうか、大徳寺と話して、そういう事を聞いちゃったんだ。 たまき:それだけじゃないよ。 いろいろ聞いちゃった。 宮古:じゃあ、あんなこともこんなことも? たまき:そうそう。 あんなことも、こんなことも〜。 宮古:ああん、どうしよう〜・・・って、どんなことだよそれ。 たまき:あはは。知らないよ。 でも、・・・真面目な話、きさらさんから聞いたお話があるの。 怒らないで聞いてくれる? 宮古:長い? たまき:たぶん。 わたし要領が悪いから。 宮古:とにかく会おうよ。 今どこ? たまき:よくわかんない。 1階で、・・・エスカレーターの下。 クリスマスツリーがたくさんあるよ。 宮古:・・・・・・ああ、あの辺か。 わかった。 待ってて、すぐ行く。 たまき:うん。 宮古:いたいた、お待たせ。 こんな所にいたんだ。 遠くまで探しに行っちゃったよ。 たまき:心配かけてごめんね。 宮古:いいって。 じゃあ、教えてくれる? なんで大徳寺は、たまきさんを知っているのに知らないフリをしてたのか。 たまき:うん。じゃあまず、 宮古さんがきさらさんに振られたときの話からするね。 宮古:ううっ、 そんなの・・・・・・関係あるの? あんまし思い出したくないなぁ。 たまき:うん。あのね・・・・・・・・・・ ・ ・ ・ 宮古:大徳寺のやつ、二重スパイみたいなマネを・・・。 しかしまあ、どおりでアドバイスが的を得ているわけだ。 相手に直接聞いてくるんだもんな。 たまき:そうだね。 今思えば、あたしにデートの感想をいろいろ聞いてたよ。 困った人だよね。 宮古:ああ。 あいつ、もともと陰謀好きなんだろうな〜。 怖い怖い。 たまき:わたしね、いままでずっと、 きさらさんの言うことって全部正しいって思い込んでたみたい。 なんでかな。・・・すっごく尊敬してたからかな。 大人っぽくて、かっこ良くて、自立してて。 わたしもいつか、ああいうふうに成りたいなって思ってたのね。 でも、今度のことで、なんて言うか、 ああ、きさらさんもあたし達と同じ人間なんだなって思っちゃった。 宮古:大徳寺の神秘のベールがはがれちゃった? たまき:ん〜。・・・・・・そんなかんじ。 宮古:そうやって少しずつ、周りが見えるようになっていくんだろうな。 そしていつか全てを見通したとき、 人は誰も独りぼっちだってことに気が付くんだ。 たまき:・・・・・・・・・・・・・・・・。 宮古:ん?どうした? たまき:いや、・・・ちょっとびっくり。 宮古さんがそんなことを言うなんて・・・・・・。 宮古:・・・失礼な。(笑) まあ、たまきさんも俺のことをまだ良くわかってない証拠だな。 たまき:でも、独りぼっちだなんて、そんなのイヤだな。 本当にそうなの? 宮古:さあね。 それは自分で確めないと。 たまき:・・・そうじゃないほうがいいな。 宮古:うん。 宮古:・・・・・・それにしても、俺が大徳寺に振られたときに たまきさんがそんなアドバイスをしていたとはね。 たまき:あれは、さっきも言ったみたいに、 私が勘違いして、きさらさんが告白するんだと思って、 振られるショックをいくらかでも和らげようと思って〜。 ・・・・・・ごめんね。 わたしがあんなこと言わなかったら、 もしかしたら今年のクリスマスは、宮古さんは 私じゃなくて、きさらさんと過ごしていたかもしれないのに。 きさらさん、私に相談するまでは、 宮古さんと付き合ってみるつもりだったんだって。 宮古:・・・そうか。 それじゃあ今ごろは大徳寺と一緒だったのかも。 たまき:正直に答えて。 ・・・きさらさんのこと、今でも好き? 宮古:ああ。 ・・・・・・いい女だもんな。 たまき:んん・・・・・・・・・・・・・・・・。 宮古:自分が正直に答えろって言ったんじゃないかよ。 そんなこと聞くほうが悪いんだよ。 たまき:だってぇ・・・・・・。 (じゃあ、私のことは好き?って聞かなきゃ・・・) じゃ、じゃあ・・・・・ 宮古:あ、そうだ。 大徳寺に電話して告白しちゃお。 たまき:ええ〜っ!? ちょっと・・・・・・ 宮古:うわぁ〜、緊張するなぁ。 (ピピピピピ・・・、ピッ・トゥルルルル) こういう時って、なんでこんなに口の中がカラカラになるんだろうね。 たまき:宮古さん、・・・本気? 宮古:俺は本気だよ。 ホントのこと言うと、今日はこうしようって決めてたんだ。 たまき:宮古さん・・・。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ど、 どうなってんの〜〜〜〜! |