9月9日(木)超大型台風 天気予報によると、超大型の台風が私達の住む海岸に近づいてきています。 雨はまだ降ってきていませんが、すでにものすごい風が吹き荒れています。 この季節には付き物の台風ですが、今回のは凄いみたいです。 無事にやり過ごせるといいんですけど・・・。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 たまき:ああ〜。こりゃ、明日はダイビングは無理だなぁ・・・。 紅蘭:あほっ!!当たり前やんか。 台風が来てむっちゃ波が高いのに、 海に遊びになんか行けるわけないやろ? たまき:がっかり〜。 せっかくテルテル坊主吊るしたのに。 紅蘭:なあ。これって、晴れ乞いのおまじない? 妙な民間信仰やね。 たまき:もー、お前が頑張らないから台風が来たんだからね。(つんつん) 紅蘭:そんな布切れに気象をコントロールする力なんか、 あるわけないやん。 たまき:・・・・・・楽しみにしてたのになぁ。 紅蘭:いいかげんにあきらめや。 それより、・・・風、強うなってきたな。 たまき:そーだね。 うわぁ、すっごい大波。 ヤシの木もあんなにバサバサに揺れちゃって。 紅蘭:うち、ベスパのカバーが飛ばんように、ヒモで固定してくるわ。 たまき:そうだね。お願い。 たまき:気象情報はどうなっているのか・・・・・・なっと。(プチ) テレビ:・・・の模様です。中心気圧は962ヘクトパスカル。 瞬間最大風速は40mほどになるでしょう。 ゴッドアイズからの映像です。(ちゃららら〜) たまき:超大型の台風かぁ。 紅蘭:えらい雨降ってきたでぇ。 うちがヒモかけとったら、ドッザァーッってな。 たまき:おつかれ〜。バスタオルはそこだよ。 紅蘭:あ、天気予報やってるやん。 やっぱ、直撃コースなんか? たまき:そうみたい。 紅蘭:この家、大丈夫なんかなぁ。 たまき:大丈夫、・・・でしょ? 紅蘭:そうやったら、ええけどな。 うちの部屋は地面に建ってるけど、たまきの部屋は海の上やんか。 でかい波が来て土台がかっさらわれたら、 部屋ごとみんな海に落ちるんちゃうかなぁって・・・・・・。 たまき:ヤなこと言うな〜! 一年前に越してきた時にも、そんな事を言ってたよね。 でも、あのときも大丈夫だったし、きっと今晩も大丈夫だよ。 紅蘭:なんやったら、うちの部屋で寝るとええわ。 それにしても、そうか。 そう言えば、ここに来て二人で暮らしはじめてから、 もう1年たつんやね〜。 たまき:いろいろあったけど、あっという間だったね。 紅蘭:せやね〜。 越してそうそう、鍋が見つからんでなぁ。 たまき:うん。ケトルでお蕎麦を作ったんだよね。 大晦日もそうやって年越し蕎麦を作ったよね。 紅蘭:せやったな。 元日に来たふうにそのこと聞かせたら、不思議そ〜な顔してたな。 たまき:3人で初詣に行ったんだよね。 私、あの時1000円も払って「今年もいい年でありますように」って、 神様にお願いしたんだよ。 紅蘭:効果あったんか? たまき:今のところ、まだ・・・。 紅蘭:えりかと会ったんも、初詣の時やったな〜。 たまき:そうだったね。 高校を卒業して以来、2年ぶりに会ったんだよ。 久しぶりだったけど、変ってなかったなぁ。 紅蘭:うち、どう対処していいかわからんかったわ。 ・・・いまも、実はちょっと苦手やな。 たまき:ええ?そうなの? えりかちゃん、あんなだけどいい子だよ。 紅蘭:それはわかってるよ。 べつに嫌いとかやないんやけど、 あの子とはどうもリズムが合わんで、会話しにくいねん。 たまき:そうなんだ〜。 紅蘭って気さくだから、そういうのはないんだと思ってた。 紅蘭:真玄はええんやけどな。 趣味も合うし。 たまき:でも真玄君は、もうウルトラマンを卒業したんでしょ? 紅蘭のこと子供っぽ〜いって言ってたよ。 紅蘭:平成ウルトラマンは、大人になって見て もう一度ハマるしくみになってんねん。 真玄もいずれわかるやろ〜。ほっほっほ。 たまき:・・・・・・ふ〜ん。 そういうものかね〜。 紅蘭:ホンマやって。 (ビュゥーーーーーーーッ) (バラバラバラバラバラバラ) たまき:雨、本格的に振ってきたね。 海がひっくり返ったみたい・・・。 紅蘭:どないなってんねやろな。 どこかのチャンネルで気象情報、やってないか? たまき:う〜ん・・・・・・。(ピッピッピ) テレビ:・・・・・・予報をお伝えしました。 「CM」 「(ピコンピコンピコン)なんだおまえかぁ」 「・・・赤。・・・母さんは?」 (父さんは、母さんの買った・・・・ たまき:ああっ、惜しい〜。 他のチャンネル見てみよ・・・・ 紅蘭:待って!・・・・・・このコマーシャルだけ見せて〜。 たまき:・・・・・・? じゃあ、紅蘭が天気予報探してね。 はい、リモコン。 紅蘭:・・・・・・まかしとき。 たまき:この一年、いろんな人と出会ったね。 紅蘭:まあ、最大の出会いはワンパやろうな。 ワンパが来たのって、越してきてしばらくしてからやったっけ? たまき:越して来てすぐ。2週間たってからだよ。 紅蘭:そんなにすぐやったっけ。 ・・・よう覚えてるね。 たまき:「日記」付けてますから。 紅蘭:そやったな〜。 たまき:ワンパが来た時は大騒ぎだったよね。 見た事もない大きな動物がここにいるんだもん。 私、てっきり紅蘭のパジャマ姿だと思ってさ〜。 紅蘭:今やから言うけど、ワンパが家に入って来たのって、 あれ、うちのせいかも。 たまき:・・・・・・なんで? 紅蘭:確かあの前の晩、ベスパの警報機のことでケンカしたやろ? 日付は覚えてへんけど、そういうのは覚えてるわ。 たまき:そうだね。 確かあのときが初めてのケンカだったよ〜。 それで? 紅蘭:ケンカの時、うちは「警報機は壊れてない」って言い張ってたけど、 実はあの晩、あんたに内緒で、うちの部屋にベスパを運び込んで、 機械の再チェックをしてたんよ。 せやからあの晩ワンパは、お気に入りのベスパを探して、 家の中まで入ってきてたんちゃうかな。 たまき:そうか。そうだったんだ〜。 あのときベスパをすぐにキッチンに持ってこれたのも、 もともと紅蘭に部屋にあったからだったんだ。 知らなかったなぁ。 紅蘭:ワンパはいろんなことを運び込んできたよな。 ジュディはんと知り合えたんもワンパのおかげやし。 ほかにもレナはんや、森田捜査官や、菅井捜査官・・・。 たまき:それに、怪盗ペケさんやシスターキルシュとも、 縁が出来たもんね。 っていうか、私はあの2人に誘拐されちゃったんだけど。 紅蘭:それに、るーくはんと出会えたしな。 たまき:そうだね。 ・・・・・・ねえ、るーくさんの話はやめようよ。 紅蘭:はあ。 まだ引きずってるんか? たまき:そうじゃないよ。・・・・・・どっちかって言うと逆かな。 あの人をあんなに好きだったことが、 なんだかとっても昔のことのような気がするんだよ。 あのときは、るーくさんのことを考えるだけで幸せな気分になれたのに、 今じゃあ、そんなこともないし。 紅蘭:まあ、そういうもんやろ。 たまき:・・・でもさ、そうするとあの時、 るーくさんのことを大好きだった気持ちって、なんだったんだろう。 二人でフラれて、あんなに辛い思いをしたのに、 今はもう何とも思わないなんてさ。 それじゃあ、一緒に泣いたクリスマスはなんだったんだろうって。 ・・・・・・そんなことを思うと、本当にるーくさんのことを好きだったのか、 自信がなくなってきちゃってさ。 そんなんで、るーくさんのことを話すのって、紅蘭に悪い気がして。 紅蘭:うちかて、そんなもんやで。 たまきと一緒や。 たまき:・・・そうなの? 紅蘭:楽しかったことも辛かったことも、みんな思い出になっていくんやな。 人は、そうやって生きていくんやねぇ・・・。 たまき:・・・・・・なんだよそれ。 なんか年寄りっぽいよ? 紅蘭:ほっといて。 まあ、身を切られるような思いも、時間がたてば癒されるんやな。 たまき:そうか〜。 でも、そうなるとわかっていれば、あんな辛い思いをしなくてすんだのにね。 紅蘭:それはどうやろうな〜。 たまき:どうやろな〜、じゃないよ。 そうとわかったからには、 わたしはもうフラれてもへっちゃらさ。 紅蘭:ほー。 そら、楽しみやな。 たまき:・・・・・・んもう。 あっ、天気予報だよ。見よう見よう。 紅蘭:つーか、これ台風の特別番組やな。 テレビ:(びゅおおおおおおおおおお)・・・ぃま、私は台風が上陸した・・・ ・・・にいます。ものすっごい雨と風と波です。立ってるのがやっと・・・ きゃ〜〜〜っ(どびゅごおおおおおおおおおお) たまき:うわぁ、大変そう・・・。 紅蘭:これ、すぐそこの港ちゃうか? たまき:・・・・・・そうかも。 今、外はこんなになってるんだ〜。 テレビ:今日は放送の予定を変更して、報道特別番組 「超大型台風日本上陸!!」を放送します。 えー、気象庁およびTPCからの情報によりますと、 この進行速度の速い超大型台風は・・・(ザーーーーー) 紅蘭:・・・あれ?画像が消えてノイズになってもうた。 テレビ、どないしたんやろう。 テレビ:(ザァーーーーーーーーーーーーー) たまき:今日はもう放送終了・・・なわけないよね。 ケーブルテレビ局に何かあったのかな〜。 紅蘭:可能性としては、台風による放送局の崩壊、 または台風に乗じた宇宙人の電波ジャック、 たった今から地上波もデジタル放送に切り替わった、 根元的破滅招来体の降臨、ミノフスキー粒子の散布、 箱船が鳴動してレイバーが暴走し、都心壊滅。 ・・・そんなところかな〜。 たまき:おいおい・・・・。 ケーブルテレビのケーブルが切れちゃったんじゃない? 前あった停電みたいに。 紅蘭:そんな平凡な・・・。 たまき:平凡でいいの。 ・・・・・・でもテレビがこれじゃあ情報が取れないよ。 ネットは?確かあれってテレビと同じケーブルで・・・・・・ 紅蘭:せや。多分あっちも駄目やろうな。 たまき:そだ、非常持ち出し袋にポータブルラジオが入ってたよね。 ん〜、(ゴソゴソ)あったよ。ラジオでも特別番組やってるかな〜。 紅蘭:・・・・・・ごめん。 たまき:なに? あっ、電池が入ってない!! もー、こうら〜〜ん!! 紅蘭:格闘サウンドウルトラマンガイア・スプリームヴァージョン(BANDAI・定価2980円) を鳴らすのに、どーしても単4が2本必要やってん。 たまき:電池抜いたら、あとで買って入れておいてよ〜。・・・まったく〜。 んじゃあ、177で電話の天気予報を聞こうか。 オンフック、と。 電話:(ピポポ・・・トゥルルル、カチャ) ピンポンパンポ〜ン9月10日午後9時現在の気象情報をお知らせします。 現在、超大型台風の上陸に伴い、大雨暴風波浪警報および 海上暴風警報が発令されています。 午後6時から0時までの降水確率は・・・・・・ たまき:なるほどー・・・って、知っていることばかりか。 紅蘭:こんなときに降水確率なんか聞いてもなぁ。 (ビュゴオオオオオオオオオオオオオオオオオ) たまき:すごい事になっているよ。 雨が窓に当たって、外が良く見えない。 紅蘭:ヤシの葉がめくれあがってるな。 こら、海も荒れてるやろ。 (バタン!!ゴォォォォォォォォ・・・・) 紅蘭:なんや? たまき:玄関のほうだよ。 さっき、ちゃんとドアしめた? 紅蘭:閉めたと思うけどなぁ。 鍵ごと壊れてたらイタイな。 ・・・ちょっと見てくるわ。 たまき:うん。 風に飛ばされないでね。 (ビュウウウウウウウウウウウウウ) たまき:自然の力ってすごいなぁ。 これだけの風と雨。ものすごいエネルギーだよね・・・。 ・・・・・・あれ? (ビャゴオオオオオオオオオオオオオオ) (ギギギギ・・・・) たまき:うそ。この家、・・・揺れてる? (ギギギギィ・・・) 紅蘭:玄関のドアノブ、壊れてもうたわ。 風が強うて、ドア閉めるのに一苦労や。 つっかえ棒してきたから、もう大丈夫やと思うけど。 たまき:ねえ、私の部屋、大丈夫かな。 さっき、この家揺れたよ。 (ギ、ギギギィ) あ、また・・・。 紅蘭:ほんまや・・・。 玄関への渡り廊下から海が見えたけど、大荒れやったで。 たまき:そんなぁ。 私、ちょっと見てくる。 (ドッパァアアアアアアアアアアアアアン) たまき:ひゃっ! 紅蘭:エラい波やな。 テラスが船のへさきみたいやん。 (ギゴゴゴ・・・) たまき:・・・さっきより揺れてる。 紅蘭:この窓、雨戸っていうか、シャッターがあるやろ。 あれ、降ろしといたほうがええんとちゃう? 流木とかが飛んできてぶつかったら、窓が割れてまうで。 たまき:そうだね。 シャッター閉めるなら一旦テラスに出ないと・・・。 テラスに出た瞬間に吹き飛ばされないかな。 (ギィ・・・ギグゴゲゲゲ) たまき:なんか、ヤバそうな音になってきたよ・・・? 紅蘭:うちが手ぇをつないどいたるから、早よ行ってシャッター閉め。 たまき:わかった。 よし、行くぞっ!! 紅蘭:おう! (ダッパアァァァァァァァァァァァァァァァァン) たまき:・・・・・・・・・行くぞ? 紅蘭:失速したな。 わかったから、早う。 (ギギ、ゴゴガガガガガァ・・・) たまき:うう・・・開けるよ。 んっ!ドアノブが、お、重いぃ・・・・・・(ガチャ) (ビュオオオオオオオオオオオッ) たまき:うひゃ〜〜〜っ (ドヒュオオオオオオオオオオオッ) 紅蘭:風で部屋の中がえらいことになってるけど、気にせずゴー! たまき:雨と海水で、あっというまにグッショリだよ〜。 まずは左半分。よいしょ、よいしょ、(ガラララララララ・・・バシャン) よし、もう一枚。 紅蘭、手を引っ張って。 (ギギッゴゴゴッ) きゃっ!今、すっごく揺れたぁ! 紅蘭:もう一枚の右側は部屋ん中から降ろすんやろ? たまき:そう。 (ギッギッギッギッゴゴゴゴゴゴ) たまき:うわっ!ヤバイ!ヤバイッ! おうちが壊れちゃうよ! 紅蘭:・・・これはシャッターどころやないな。 たまき!早よう中に入って! この部屋にいたら、一緒に海に落ちるで! (ギギッギギッギギィ) 奥の部屋に行こ! たまき:崩れちゃうなんてやだよ! この部屋には私の大事なものがいっぱいあるのに! 思い出だっていっぱい・・・・・・ (キィ、キギギギキギギギギィ) 紅蘭:そないなこと言うてる場合とちゃうって! たまき:そんなのいや! ヤだー! (ギギギギギギギギギギギギギギギギ) キャーッ!助けてぇ! 紅蘭:あっ、あかん! (ビュウウウウウウウウウウウウウ) (プチッ・・・) たまき:あっ テルテル坊主が・・・・・・。 吊るしておいたテルテル坊主が風にあおられ、 糸が切れて空へ飛んでいきました。 ・・・その瞬間、 たまき:・・・・・・・あ、あれ? 紅蘭:雨、やんだな。・・・・・・風も。 たまき:波は相変わらず大波だけど、家は揺れなくなったよ? いつも通りびくともしない。 ・・・・・・どーゆーこと? 紅蘭:信じがたいことやけど、 これはきっと、あんたに無能呼ばわりされたテル坊が頑張ったんやな。 奇跡が起こったんや。 たまき:そうなのかな・・・・・・。 ひどいこと言ってごめんね、テル坊。 守ってくれて・・・ありがとう。 たまき:ほら、テレビ、ちゃんと映るよ♪ きっとケーブル局のほうでトラブルがあったんだね。 紅蘭:どうやら台風は乗り切ったかな。 たまき:う〜んと、台風情報、台風情報・・・。(ピッピッピッ) テレビ:・・・グニチュード6.5、震源の深さは30kmでした。 各地の震度はテロップの通りです。 なお、海岸部に津波の影響はありません。 このあとは、引き続き台風情報をお届けします。 たまき:・・・は? なに? 紅蘭:・・・・・なんや〜。さっき揺れたんは地震やってんな。 ふーん、このへんは震度3やったんか。 たまき:・・・ほ? 紅蘭:なあ、台風はまだここに居座っているみたいやで。 ああ、風と雨が収まったのって、台風の眼の中にいるからか。 ちゅーことは、台風はまだ半分終わっただけかいな。 たまき:あれ、地震だったの? 紅蘭:風が収まっているうちにシャッター降ろそか。 たまき:波で揺れてたんじゃなくて、地震!? 嵐がやんだのは台風の眼に入ったから!? テル坊の奇跡じゃないの!? 紅蘭:チャンチャン♪やな。 たまき:チャンチャン!? 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 夜のうちに台風は無事に過ぎ去り、今はだいぶ静かになりました。 外では虫が鳴きはじめています。 高い波はそう簡単には収まらないので、 波の砕ける音だけが、まだしばらくは騒がしいでしょう。 風と地震でめちゃくちゃになったお部屋の片づけも終わり、 なんとか、いつもの平和な夜に戻りました。 ここに越してきてもう1年。 長かったような、短かったような1年でした。 いろいろあったけれど、紅蘭の言う通り、いつのまにかいい思い出です。 それじゃあ、 ・・・・・・おやすみなさい。 |